夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い

青の雀

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 ロバートは、さっきまでエレモアがいた地面に跪きながら、嗚咽を漏らしている。

 アンドリューは、ティアラベルローゼが忽然と消えてしまったことが、まだ現実として受け入れられなくて、その場に呆然と立ち尽くしている。
 ユリウスは、幼いながらも、母が突然、消えてしまったことにショックを受けて、大泣きをしている。

 三人の男たちにとって、一生忘れられない傷を残していく。

 真っ先に、立ち直ったロバートは、アンドリューが連れてきた騎士団に向かって、こう叫ぶ。

「俺は。これよりティアラベルローゼ妃殿下と我が妻エレモアの仇を討つべく王都の外れにある『漆黒の風』のアジトに掃討をかけるつもりでいる。賛同する者に助力を頼みたい」

「団長、俺も同行させてください」
「俺も、団長と共に行きます」
「俺も」
「俺も」
「自分も」

 騎士団員全員がロバートに賛同する頃、ようやくアンドリューが正気を取り戻した。

「ロバート!妻を殺した犯人を知っているというのか?それは真のことか?」
「はい。妻エレモアの魂が、そう申しておりました。『自分たちは、貧民街に置き去りにされた日、漆黒の風のアジトの前で嬲り殺しにされた』と」

 アンドリューは、ロバートの言葉にまたショックを受ける。自分は、ティアラベルローゼの言葉を焼きもちからくる言葉だと断じて、ハナから信用していなかったのだ。それどころか、死んで魂だけになっても自分と離婚したいと言うぐらい、ティアラベルローゼから嫌われていたことに、愛されていなかったことにショックを受ける。

 よろよろと数歩、後退り。でも、踏みとどまるようにその場の地面を踏みしめながら、力強く
「これより、ロバートの休暇は取り消し、騎士団の公務として、盗賊『漆黒の風』アジトの掃討を命ずる!十分な働きをした者には、追加で恩賞を与えるものとする!」

「オウ!」

 雄たけびが国境線に響き渡る。

 なんとか騎士団に対し、面目を保ったアンドリュー一行は、1週間かけてきた道のりを3日の速さで駆け抜けることにした。

 相変わらずユリウスは、めそめそしていたが、もうユリウスにかかってばかりにはいられない。

 しかし、急ぎ王都へ舞い戻ったアンドリューには、思わぬ知らせが届いたのであった。

 宰相がアンドリュー不在の間を狙って、クーデターを起こし、すでに前国王夫妻は、幽閉され、処刑される日を待つ身となっていた。

 王都の治安は、完全に宰相に掌握され、アンドリューといえども迂闊には近づけない状態になっていた。

 ただし、リリアーヌをアンドリューの妻として認めるのならば、王城に入城していただきたいという趣旨が届いたのだった。

 アンドリューは、リリアーヌに対しての行動がこんな形で結果を招いてしまうことになろうとは、夢にも思っていなかったことに愕然としている。

 最愛の女性であるティアラベルローゼを悲しませ、怒らせ、永遠に失ってしまうことになるとわかっていたら、決してリリアーヌの甘い罠にはかからなかっただろう。

 王の息子であるという名前だけの王太子と、真に仕事の采配ができる鍛え上げられた男との違いが鮮明になる。

 アンドリューは自分が王太子であるから、浮氣することが当然の権利であると思っていたのだ。今更、後悔しても失ったものの重みが大きすぎて、何もできないでいる。

 アンドリューが呆然としている間、ロバートは部下に命じて、漆黒の風のアジトの情報を探らせてきた。

 エレモアから聞いていた通り、王都の外れにあり、真正面から王都に入るより、裏道を通って警備が手薄になるところを狙って王都に入った方が効率的であるとわかる。

 ロバートは、部下にテキパキと指示を出し、同時にアンドリューの名前を使って、領地に引っ込んでいる国王派の貴族を招集してはどうかと持ち掛ける。

 アンドリューは自分の人望があまりよくないことから、支持してくれる貴族がいないのでは?と心配するが、ロバートは笑顔で「大丈夫」という。

 アンドリューは、ロバートの指示に名前を添えるだけだから、人望があろうとなかろうと関係ない。要するに大義名分として、旗頭の意味合いだけだから。
 
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