夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い

青の雀

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 ロバートの目論見通り、夜半過ぎには警備が手薄になり、すんなり王都の外れに入れた。アジトを取り囲むように騎士を配置する。

 アジトの中には、数十人から百人前後の人数がいると思われる。厨房の皿の数から推測しただけだけど、百人前後の盗賊に囲まれでもしたら、いかにエレモアでも逃げきれない。ましてティアラベルローゼ妃殿下も一緒となれば、逃げずに戦うこと一択だったのだろう。

 エレモアの無念を思い、気を引き締めてかかる。まずアジトに火を放ち、出てきたところを3人一組でめった刺しにして、始末していくことにした。
 アジトの中に爆薬でも置いてあったのだろうか。時折り、「ドカン」という音が聞こえてくる。

 ものの一時間足らずで、アジトの中は静まり返った。というより、火の勢いが思ったより強く、屋根が燃え墜ちた。

 引き上げる際に、アジトの近くで盛り土を発見した。

 念のため、掘り起こしたら、そこにはエレモアの剣とティアラベルローゼ愛用の短剣が出てきた。
 穴の中には、他に遺体らしきものが埋められていたが、腐敗が進み、一部白骨化していた。

 きっと盗賊の中の誰かが自責の念に駆られ、こっそり墓を作って埋めていてくれたようだった。

 ロバートは形見となってしまった剣を抱き、静かに黙とうをささげる。

 遺体らしきものを土ごと荼毘に付し、その遺灰を生前ティアラベルローゼが慈しんでいたバラ園に秘かに埋葬した。

 その後、宰相が示すとおり、何事もなかったような顔をして、王城に帰還し、リリアーヌとの結婚式の準備に追われる。

 アンドリューは心を殺して、リリアーヌを嫁に迎え、宰相はアンドリューを傀儡として操るつもりでいる。

 機会を見て、反撃に転じるつもりでいるのだ。結婚式には、前国王派の貴族も多数出席が見込まれる。その時が最大のチャンスとばかりに、結婚式の準備に余念がない。

 宰相は、リリアーヌがカラダでアンドリューを繋ぎとめているのを快諾している。リリアーヌは、未来の王妃になる夢を見ていて、幸せの絶頂にいる。

 結婚式と戴冠式は同時に行われる。そのため、前国王は未だに生かされている。

 アンドリューの浮気に端を発した王国存亡の危機に、為す術がない。この機会に乗じて、大国アトランティスも狙っていることを忘れてはならない。

 今にして思えば、ティアラベルローゼの判断は、懸命だったと言えよう。娘ティファニーだけでも、実家のマーシャル国に逃がしたことは、称賛に値する判断だったと言える。

 何も知らないユリウスは、母に捨てられたと騒いでいる。そもそも捨てられるような言動をしたのは、自分自身だということを忘れているのだ。母の愛も、妻の愛も無償ではあるが、無期限ではない。

 自分が先に裏切ったのだから、その対価を支払う必要がある。

 まもなく戴冠式が行われるべく準備が調った。幽閉されていた前国王が、公の席に姿を見せるのは、ほぼ50日ぶりのこと。前国王が引きずり出されたとき、戴冠式前の広場でどよめきが起こった。

 すでにアンドリューの母は処刑されている。父である前国王は、すっかり痩せこけ、白髪の老人になっている。

 この戴冠式が終わると、父も母と同様にして処刑されることが決まっている。

 対面した父は、悔しそうな顔をしてアンドリューを睨みつけている。アンドリューは、父の視線を受け、いたたまれなく目を伏せた。戴冠式に父を出席させたのは、正式な後継者がアンドリューであることを内外に示すための狙いがある。

 戴冠式は無事終わり、次は結婚式へと会場が変わる。
 宰相は、教会に圧力をかけ、リリアーヌを聖女様認定をさせた。

 教会は苦虫をかみつぶしたような顔をして、最後まで抵抗する姿勢を示したが、絶対的な権力者の前では無力に等しい。

 アプリコット国の新たな国王と聖女様の結婚式は華やかなムードに包まれながらも始まろうとしている。

 アプリコット国の国旗の色と同じオレンジ色とグリーンを基調とした配色で彩られた教会内部。

 ヴァージンロードに宰相に腕を取られたリリアーヌがしずしずと進み、アンドリューの眼の前に託される。

 その時、アンドリューは一瞬の躊躇なく、宰相に向かって、帯刀していた剣を振り下ろし、場内は騒然とする。

 悲鳴が上がる中、次の狙いは、新婦のリリアーヌへと変わる。恐怖に青ざめたリリアーヌの顔が歪んだ時、血塗られた結婚式は戦場と化した。

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