離婚から玉の輿婚~クズ男は熨斗を付けて差し上げます

青の雀

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介護

7.

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 美桜は離婚して2年が過ぎたころ、外科病棟に移り、副師長に抜擢されることになった。

 今の恋人は、勤務先病院の院長先生の息子さんで、副院長先生の安村高志先生。それで美桜が外科病棟に移ったことと関係がある。

 高志が美桜といつも一緒にいたいと言い出してのこと、安村先生のご両親とも紹介済みで、両家公認の仲という関係。

 神崎艶子さんが亡くなってからの3302号室は、賃貸に出している。毎月家賃150万円はオイシイ副収入。

 別に働かなくても、一生食べて行くには十分すぎるほどの収入があるが、康夫の弟の義男がここのところ、うるさく付きまとってくる。

 義男の狙いは、言わずもがな美桜の財産。兄弟そろって、美桜の財産やスキルを狙ってくるところは同じクズ兄弟だと言える。

 離婚が決まってからの神崎工業は見る影もないほど衰えている。神崎艶子さんが自社株を売り払ったせいで、株価が下がったことが原因なのだが、だから、そんな神崎工業の次期社長を狙うより、美桜を追い掛け回して、髪結いの亭主になった方が実入りは大きいと判断したようだ。

 おあいにく様、いくら粉をかけてこられても、美桜には、今恋人がいて、幸せなのだ。

 義男のストーカーまがいの行為にうんざりしていた美桜は、ついに3301号室から退去し、リフォームして、賃貸に出すことを決める。

 マンションの中に入ってしまえば、安全なのだが、行き帰りの不安がある。もっとも、タワマンには、離婚してから住んだんだけどね。艶子さんとの出会いやいろいろ思い出があるから、今まで住み続けていたというわけ。

 恋人の高志と相談して、実家に戻ることにしたのだ。

 そしたら今度は、佐々木工場の前で、会待ち伏せされるようになり、ついに警察へ相談することにしたのだ。

 義男の言い分は、佐々木工場は神崎工業の下請け工場だから、美桜がどうしても義男との結婚を承諾しないのなら、今後一切の取引を中止すると言ってきたのだ。

 これには、美桜も困り果て、頑固な父に相談すると、

 「この件は、倒産に任せてくれ。できればしばらくの間、病院の寮にでも入ってくれ。」

 訳が分からず、高志にそのことを言うと、その日から高志とホテル暮らしを始めることになった。

 「また引っ越しをするのは、大変だろ?だから、こうして美桜を俺の側に置いとけば安心できる。」

 高志との久々のセックスは燃えに燃えまくった。

 いわゆる美桜は、セカンドバージンと言ったところで、前夫の康夫とは、新婚旅行の時に抱かれたぐらいで、付き合っているときも清い関係のままだった。

 それが結婚早々、艶子さんのお世話をするため別居生活を強いられたわけで、男性とのセックスなんて、何年ぶりだろうと指を折って勘定できるぐらいご無沙汰になっていたのだ。

 高志も美桜のピュアな反応に目を細め、「これは調教し甲斐がありそうだ。」とほくそえんでいる。

 そして、父が神崎工業との取引をすべて中止してしまった。実は父の工場で作る部品は、国際特許も取得している日本でもその部品と同じものは父のところしか作れないという貴重な工程を経て、出来上がる部品だったらしく、たださえ左前の神崎工業は父から部品を調達できなければ、たちまち倒産の危機に陥ってしまうほどの重要なパーツだったことがわかる。

 それを次男の義男がぶち壊しにしたと知って、長男に続き、次男の義男も勘当し、今後一切、長男も次男も経営に携わることはさせないという年初を持って、取引再開にこぎつけたのである。

 もっとも、あの元姑さんが育てた息子だから、ぼんくらなのは、当たり前というところか。

 そして美桜のカラダもすっかり熟しきった食べごろ状態になり、高志との結婚が決まる。

 あれから毎晩のように、高志に可愛がってもらった成果で、佐々木の両親、それに安村の両親が見ても幸せそのものの二人に今度こその思いも込めて、佐々木の父とバージンロードを歩く。
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