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玉の輿
1.
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「本日は、ようこそお集まりいただきました。わたくし弁護士の宗像俊三と申します。吉村美里さんの法定代理人をしております。」
「イヤだ、イヤだ。美里とは何があっても別れたくないんだ。」
「いえ、美里さんとの離婚はすでに成立しております。今日は、その後のことでお話に参りました。」
「へ?離婚が成立ってことはなんだよ?」
「元ご主人は、美里様に離婚届を早く提出するようにおっしゃいまして、その日のうちに離婚届が区役所に提出されておりまして、すでにアカの他人となっております。」
「ウソだよ。そんな、アイツは俺にべた惚れしているはずで、あの離婚届はいつもの嫌がらせのつもりで渡しただけなのだ。だから、間違いだ。」
「いえ、美里様は、せいせいしたとおっしゃっておられますから、もうご主人には気が残っていないかと推察されます。」
「本当に、離婚は成立したというのか?そんな……、俺には美里が必要なんだ。なあ、弁護士さんよ。金は払うから、美里に復縁を頼んでくれないか?」
「ちょっとぉ!奥さんが離婚してくれたのなら、私と結婚してよぉ。」
「うるさいっ!お前は黙ってろ。」
「なんなのよぉ、私とのことは遊びだって言うの?ひどいわっ!ひどすぎるっ!私のカラダをさんざん弄んでおきながら。」
「そっちが誘ってきたのではないか!なにが!どこが!清純な女子大生だ!お前、処女じゃなかったじゃないか!」
「美里は、俺と結婚するまで、処女だったんだぞ!」
「げ!気持ち悪いオバサンが……!絶対、結婚してもらうんだからね!」
-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-
島田美里(旧姓吉村美里)と島田洋一は、同い年、幼馴染で家が隣同士だった。親同士はお愛想もあってのことだと思うが、将来は、二人を結婚させようと冗談で言いあっていたぐらい、仲が良く、いつも学校へは手を繋いで行っていたものだった。ただし、高校までは。の話。
大学は、別々の進路を辿り、卒業後に選択した業種は、まったく異なるもので、幼いときの結婚話は、一時、立ち消えになってしまったのだ。
それが動いたのは、25歳のクリスマスイヴでのこと、それぞれの職場でささやかなクリスマスパーティの帰り道、気分が悪くなった洋一が道端で、ゲーゲーやっているところを美里が通りかかり介抱することになってしまう。
家が同じ方向だし、隣同士だから、このまま見捨ててけることもできない。仕方なく経口補水液を呑ませ、背中をさする。
洋一の玄関チャイムを鳴らし、両親に洋一を預け、隣の家へ行きカギを開けて、玄関に美里の荷物を置き、ティファーリーでお湯を沸かす。
その「熱湯を持って、再び先ほど、洋一がげろを履いていた現場に向かい、綺麗に洗い流す。
そして、家に帰り掃除に洗濯に、と大忙しになる。美里の父親は、今年の春から転勤になり、母親はその転勤についていき、美里は目下独り暮らしの真っ最中なのだ。
翌朝、出勤前に洋一の様子を伺いに島田家の玄関チャイムを鳴らし。
「あら、美里ちゃん。昨日はごめんね。洋一のバカと言ったら、まだ寝ているのよ。ちょっと待っててくれる?今、たたき起こしてくるから。」
「あ!大丈夫です。これから出勤なので、帰りにでも、また寄らせていただきます。」
「そう?じゃ、行ってらっしゃい。気をつけてね。」
「はい。行ってきます。」
美里の勤務先は、大学病院で研修医をしている。まだまだ医者としては、ヒヨっ子なのだが、サラリーマン家庭で育った美里は、大学進学の時、優秀だったので、とりあえず医学部を志望することにしたのだ。なぜなら、食いはぐれがないと思ったからで。親も学校の先生も勧めるまま受験したら、受かったので、まぁ、イヤではないけど、確かにやりがいのある仕事だとは、思っている。
「イヤだ、イヤだ。美里とは何があっても別れたくないんだ。」
「いえ、美里さんとの離婚はすでに成立しております。今日は、その後のことでお話に参りました。」
「へ?離婚が成立ってことはなんだよ?」
「元ご主人は、美里様に離婚届を早く提出するようにおっしゃいまして、その日のうちに離婚届が区役所に提出されておりまして、すでにアカの他人となっております。」
「ウソだよ。そんな、アイツは俺にべた惚れしているはずで、あの離婚届はいつもの嫌がらせのつもりで渡しただけなのだ。だから、間違いだ。」
「いえ、美里様は、せいせいしたとおっしゃっておられますから、もうご主人には気が残っていないかと推察されます。」
「本当に、離婚は成立したというのか?そんな……、俺には美里が必要なんだ。なあ、弁護士さんよ。金は払うから、美里に復縁を頼んでくれないか?」
「ちょっとぉ!奥さんが離婚してくれたのなら、私と結婚してよぉ。」
「うるさいっ!お前は黙ってろ。」
「なんなのよぉ、私とのことは遊びだって言うの?ひどいわっ!ひどすぎるっ!私のカラダをさんざん弄んでおきながら。」
「そっちが誘ってきたのではないか!なにが!どこが!清純な女子大生だ!お前、処女じゃなかったじゃないか!」
「美里は、俺と結婚するまで、処女だったんだぞ!」
「げ!気持ち悪いオバサンが……!絶対、結婚してもらうんだからね!」
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島田美里(旧姓吉村美里)と島田洋一は、同い年、幼馴染で家が隣同士だった。親同士はお愛想もあってのことだと思うが、将来は、二人を結婚させようと冗談で言いあっていたぐらい、仲が良く、いつも学校へは手を繋いで行っていたものだった。ただし、高校までは。の話。
大学は、別々の進路を辿り、卒業後に選択した業種は、まったく異なるもので、幼いときの結婚話は、一時、立ち消えになってしまったのだ。
それが動いたのは、25歳のクリスマスイヴでのこと、それぞれの職場でささやかなクリスマスパーティの帰り道、気分が悪くなった洋一が道端で、ゲーゲーやっているところを美里が通りかかり介抱することになってしまう。
家が同じ方向だし、隣同士だから、このまま見捨ててけることもできない。仕方なく経口補水液を呑ませ、背中をさする。
洋一の玄関チャイムを鳴らし、両親に洋一を預け、隣の家へ行きカギを開けて、玄関に美里の荷物を置き、ティファーリーでお湯を沸かす。
その「熱湯を持って、再び先ほど、洋一がげろを履いていた現場に向かい、綺麗に洗い流す。
そして、家に帰り掃除に洗濯に、と大忙しになる。美里の父親は、今年の春から転勤になり、母親はその転勤についていき、美里は目下独り暮らしの真っ最中なのだ。
翌朝、出勤前に洋一の様子を伺いに島田家の玄関チャイムを鳴らし。
「あら、美里ちゃん。昨日はごめんね。洋一のバカと言ったら、まだ寝ているのよ。ちょっと待っててくれる?今、たたき起こしてくるから。」
「あ!大丈夫です。これから出勤なので、帰りにでも、また寄らせていただきます。」
「そう?じゃ、行ってらっしゃい。気をつけてね。」
「はい。行ってきます。」
美里の勤務先は、大学病院で研修医をしている。まだまだ医者としては、ヒヨっ子なのだが、サラリーマン家庭で育った美里は、大学進学の時、優秀だったので、とりあえず医学部を志望することにしたのだ。なぜなら、食いはぐれがないと思ったからで。親も学校の先生も勧めるまま受験したら、受かったので、まぁ、イヤではないけど、確かにやりがいのある仕事だとは、思っている。
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