30 / 35
マザコン
2.
しおりを挟む
社長宅は赤坂にあるタワーマンションの35階、ワンフロア全部が居宅になっていた超豪華版のお部屋に智子は、着くなり絶句してしまう。
間仕切りはあるものの1000平方メートルはあろうかと思う広さに、ただただ度肝を抜かれる。
建設中に4戸分をまとめて購入し、間仕切りはあるものの、その当時、会社の本社をタワマンの中に移すつもりで買ったとか……?
それにしても広すぎる。端から端まで行くのに、何分ぐらいかかるのか?妙な計算を頭の中でしていると、奥様から声をかけられた。
「今日から、智子さんと呼ばせてくださいね。」
「あ、はい。」
「智子さん、ウチの久志ちゃんのことをどう思っている?」
「どうと、言われましても……。」
「智子さん、恋人はいるの?」
「いいえ。いません。」
「そうよね。今日、智子さんに来てもらったのは、久志ちゃんとの結婚を勧めるために来てもらったのよ。」
「へっ!?」
あまりのことで、ビックリして、つい大声を張り上げてしまった。
「昔から、よく言うでしょ?一つ年上の姉さん女房は禁のわらじを履いて探せ。って。社長から聞いたら、智子さんはとても優秀だというから、ぜひ、わが社の後継者を産んでほしいと思って。」
いやいや、仕事と結婚は別物でしょ?
「そうと決まれば、今日から、この部屋に引っ越してらっしゃい。と売っても、今まで使っていたものはすべて捨てて、必要なものはこちらで新しく買い揃えます。とりあえず、洋服ぐらいは持っていらっしゃい。」
「いや、でも、急に……。」
「久志ちゃんは、一日も早い跡取りができるまで智子さんと今夜からヤりまくりなさい。避妊なんて、許しませんからね。そうそう、結婚式は3か月後にさせてもらうわね。うまくいけばその頃には、妊娠がわかっているかもしれないからね。」」
「おい。なんでもお前が一人で決めるな。こういうことは、本人同士の了解と同意が一番大切だ。」
「だって、社長。智子さんはもう28歳なのよ。急がないと29歳中に出産できなくなるわ。マルコーになっちゃうじゃない?」
出た!昭和の死語。〇の中に高というハンコがカルテに押される。いわゆる高齢出産のことで、高齢出産をすると、母体の危険性や、健康な子供を産めないリスクが上がるということを意味している。
団塊の世代が出産ラッシュの頃は、確かに30歳でマルコーだったが、その後医学の進歩により、35歳になり、40歳になり、ついには廃止されてしまったのだ。
智子は歴史的事実として、そのことを知っているだけ。
「すまんな。瀬田さん、こいつが先走ったことを言って、他に好きな人がいるのならいつでも断ってくれてかまわんよ。だが、もし久志とでも結婚してもいいと思うなら、3か月後には結婚式の予定だからそれまでには、言ってくれ。だけど、納得が行かなければ、3か月が半年後になっても、構わないよ。」
「できたら少しお付き合いがしたいです。それでどうしても無理だと思ったときは、お断りさせていただきます。」
「いいだろ。よろしく頼むよ。」
とりあえず、今日から同衾の話は流れ、ホッとしている。
それにしても、さっきから専務は、黙っているだけで、何を考えているのか、何も考えていないのか?さえもわからない。
なんでも母親の言うがままで、自分では何一つ決められないどうしようもないくず男なのかと疑う。
それならば、この話は速攻お断りよね。
週末は、いきなりの結婚話で驚いたけど、次の日の日曜日、専務から何らかのアクションがあるのかと期待していたが、なんにもなし。
そうよね。専務もきっと、お義母さんがあんなことを言ったことに驚いていらっしゃるのだわ。
月曜日どんな顔をして、出社したらいいか困っていたけど、この分なら、何事もなかったかのような顔をして出勤すればいいかもしれない。と少しホっとして、出勤の支度を始める。
間仕切りはあるものの1000平方メートルはあろうかと思う広さに、ただただ度肝を抜かれる。
建設中に4戸分をまとめて購入し、間仕切りはあるものの、その当時、会社の本社をタワマンの中に移すつもりで買ったとか……?
それにしても広すぎる。端から端まで行くのに、何分ぐらいかかるのか?妙な計算を頭の中でしていると、奥様から声をかけられた。
「今日から、智子さんと呼ばせてくださいね。」
「あ、はい。」
「智子さん、ウチの久志ちゃんのことをどう思っている?」
「どうと、言われましても……。」
「智子さん、恋人はいるの?」
「いいえ。いません。」
「そうよね。今日、智子さんに来てもらったのは、久志ちゃんとの結婚を勧めるために来てもらったのよ。」
「へっ!?」
あまりのことで、ビックリして、つい大声を張り上げてしまった。
「昔から、よく言うでしょ?一つ年上の姉さん女房は禁のわらじを履いて探せ。って。社長から聞いたら、智子さんはとても優秀だというから、ぜひ、わが社の後継者を産んでほしいと思って。」
いやいや、仕事と結婚は別物でしょ?
「そうと決まれば、今日から、この部屋に引っ越してらっしゃい。と売っても、今まで使っていたものはすべて捨てて、必要なものはこちらで新しく買い揃えます。とりあえず、洋服ぐらいは持っていらっしゃい。」
「いや、でも、急に……。」
「久志ちゃんは、一日も早い跡取りができるまで智子さんと今夜からヤりまくりなさい。避妊なんて、許しませんからね。そうそう、結婚式は3か月後にさせてもらうわね。うまくいけばその頃には、妊娠がわかっているかもしれないからね。」」
「おい。なんでもお前が一人で決めるな。こういうことは、本人同士の了解と同意が一番大切だ。」
「だって、社長。智子さんはもう28歳なのよ。急がないと29歳中に出産できなくなるわ。マルコーになっちゃうじゃない?」
出た!昭和の死語。〇の中に高というハンコがカルテに押される。いわゆる高齢出産のことで、高齢出産をすると、母体の危険性や、健康な子供を産めないリスクが上がるということを意味している。
団塊の世代が出産ラッシュの頃は、確かに30歳でマルコーだったが、その後医学の進歩により、35歳になり、40歳になり、ついには廃止されてしまったのだ。
智子は歴史的事実として、そのことを知っているだけ。
「すまんな。瀬田さん、こいつが先走ったことを言って、他に好きな人がいるのならいつでも断ってくれてかまわんよ。だが、もし久志とでも結婚してもいいと思うなら、3か月後には結婚式の予定だからそれまでには、言ってくれ。だけど、納得が行かなければ、3か月が半年後になっても、構わないよ。」
「できたら少しお付き合いがしたいです。それでどうしても無理だと思ったときは、お断りさせていただきます。」
「いいだろ。よろしく頼むよ。」
とりあえず、今日から同衾の話は流れ、ホッとしている。
それにしても、さっきから専務は、黙っているだけで、何を考えているのか、何も考えていないのか?さえもわからない。
なんでも母親の言うがままで、自分では何一つ決められないどうしようもないくず男なのかと疑う。
それならば、この話は速攻お断りよね。
週末は、いきなりの結婚話で驚いたけど、次の日の日曜日、専務から何らかのアクションがあるのかと期待していたが、なんにもなし。
そうよね。専務もきっと、お義母さんがあんなことを言ったことに驚いていらっしゃるのだわ。
月曜日どんな顔をして、出社したらいいか困っていたけど、この分なら、何事もなかったかのような顔をして出勤すればいいかもしれない。と少しホっとして、出勤の支度を始める。
0
あなたにおすすめの小説
不機嫌な侯爵様に、その献身は届かない
翠月るるな
恋愛
サルコベリア侯爵夫人は、夫の言動に違和感を覚え始める。
始めは夜会での振る舞いからだった。
それがさらに明らかになっていく。
機嫌が悪ければ、それを周りに隠さず察して動いてもらおうとし、愚痴を言ったら同調してもらおうとするのは、まるで子どものよう。
おまけに自分より格下だと思えば強気に出る。
そんな夫から、とある仕事を押し付けられたところ──?
皇后陛下の御心のままに
アマイ
恋愛
皇后の侍女を勤める貧乏公爵令嬢のエレインは、ある日皇后より密命を受けた。
アルセン・アンドレ公爵を籠絡せよ――と。
幼い頃アルセンの心無い言葉で傷つけられたエレインは、この機会に過去の溜飲を下げられるのではと奮起し彼に近づいたのだが――
背徳の恋のあとで
ひかり芽衣
恋愛
『愛人を作ることは、家族を維持するために必要なことなのかもしれない』
恋愛小説が好きで純愛を夢見ていた男爵家の一人娘アリーナは、いつの間にかそう考えるようになっていた。
自分が子供を産むまでは……
物心ついた時から愛人に現を抜かす父にかわり、父の仕事までこなす母。母のことを尊敬し真っ直ぐに育ったアリーナは、完璧な母にも唯一弱音を吐ける人物がいることを知る。
母の恋に衝撃を受ける中、予期せぬ相手とのアリーナの初恋。
そして、ずっとアリーナのよき相談相手である図書館管理者との距離も次第に近づいていき……
不倫が身近な存在の今、結婚を、夫婦を、子どもの存在を……あなたはどう考えていますか?
※アリーナの幸せを一緒に見届けて下さると嬉しいです。
離れて後悔するのは、あなたの方
翠月るるな
恋愛
順風満帆だったはずの凛子の人生。それがいつしか狂い始める──緩やかに、転がるように。
岡本財閥が経営する会社グループのひとつに、 医療に長けた会社があった。その中の遺伝子調査部門でコウノトリプロジェクトが始まる。
財閥の跡取り息子である岡本省吾は、いち早くそのプロジェクトを利用し、もっとも遺伝的に相性の良いとされた日和凛子を妻とした。
だが、その結婚は彼女にとって良い選択ではなかった。
結婚してから粗雑な扱いを受ける凛子。夫の省吾に見え隠れする女の気配……相手が分かっていながら、我慢する日々。
しかしそれは、一つの計画の為だった。
そう。彼女が残した最後の贈り物(プレゼント)、それを知った省吾の後悔とは──とあるプロジェクトに翻弄された人々のストーリー。
記憶を無くした、悪役令嬢マリーの奇跡の愛
三色団子
恋愛
豪奢な天蓋付きベッドの中だった。薬品の匂いと、微かに薔薇の香りが混ざり合う、慣れない空間。
「……ここは?」
か細く漏れた声は、まるで他人のもののようだった。喉が渇いてたまらない。
顔を上げようとすると、ずきりとした痛みが後頭部を襲い、思わず呻く。その拍子に、自分の指先に視線が落ちた。驚くほどきめ細やかで、手入れの行き届いた指。まるで象牙細工のように完璧だが、酷く見覚えがない。
私は一体、誰なのだろう?
〈完結〉貴方、不倫も一つならまだ見逃しましたが、さすがにこれでは離婚もやむを得ません。
江戸川ばた散歩
恋愛
とある夏の避暑地。ローライン侯爵家の夏屋敷のお茶会に招待された六つの家の夫妻及び令嬢。
ゆったりとした時間が送れると期待していたのだが、登場したこの日の主催者であるローライン夫妻のうち、女学者侯爵夫人と呼ばれているルージュの口からこう切り出される。「離婚を宣言する」と。
驚く夫ティムス。
かくしてお茶会公開裁判の場となるのであった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる