2 / 33
2.
しおりを挟む
王太子ジークフリート殿下とその婚約者アリエール・ルクセンブルク公爵令嬢の仲が悪いことは、社交界でも学園でも周知の事実であるにもかかわらず、誰も二人に粉をかけるようなことはしない。
それもそのはずで、アリエールに懸想している男を片っ端からジークフリートが潰して回る。相手が王太子殿下なら勝ち目がないから、皆諦める。
ジークフリートに近寄ってくる女は、ジークフリートがアリエールに見せる以上にけんもほろろの態度で断ってしまう。
ジークフリートは、アリエールには「嫌い。」「お前が憎い。」と言っているが、実は大好きなのだ。小さい頃から習慣として、会うたびに言っていたから、肉体関係を結ぶようになってからでも、その言葉を覆すことができないでいる。
小学生が好きな娘に意地悪をするのと同じレベルなのだ。本人は、悪ふざけのつもりでも、言われた本人はひどく傷ついていることを理解していない。
そもそも肉体関係を結ぶきっかけになったことは、最近、お妃教育に来ているはずのアリエールがぷっつりとジークフリートを訪ねてこなくなったことが原因で、寂しくてたまらない気持ちから起こしてしまったこと。ほんの出来心が肉欲と快楽に溺れてしまった結果に過ぎない。
それに遅かれ早かれ、我が妻になるアリエールを抱いたところで問題にならないだろうという甘えからくるもの。
なんといっても、アリエールは自分にぞっこんだと思い込んでいるから。アリエールもきっと喜んで股を開いていると勝手に思っているのだ。
愛の言葉もなく襲うことは、暴力だという意識はまるでない。自分が気持ち良ければ、相手も気持ちいいと思っている単純身勝手男なのだ。
それはお妃教育で、将来の王妃となる女性は、決して表情を読み取られてはいけません、との教えを忠実に守っていたアリエールだからこそであって、どうしてもアリエールは、ジークフリートに会ってしまうと思わず顔が緩んでしまうことから、会わずに帰るようになったのだ。
それがいきなり羽交い絞めにされ、ドレスの裾から手を入れられ、カラダをまさぐられ泣き叫んでも決して緩められることがない恐怖心は、アリエールの心に深い傷を負わせた。
そのことをなんとも思っていないバカ王子がジークフリートなのだ。それからは、ジークフリートのことを大嫌いになったのだが、婚約解消には至っていない。なぜなら、ジークフリートに襲われたことを家族に秘密にしたから。言えば、きっとお父様のことだから、我が家が取りつぶしになっても、王家を敵に回すことになるだろう。
ジークフリートと婚約するとき曾祖母立会いの下で、誓約魔法が施されている。その内容と解除の魔法を知っているのは、曾祖母亡き後アリエールだけなのだが、アリエールだけを解除してもジークフリートが解除しなければ、誓約魔法は生き続けるという厄介なもの。文字通り死が二人を分かつまで誓約が呪縛として残る。
だからアリエール側から解除するには、命をかけなければ解除できない。同じことがジークフリートにも言えることなのだが、これが全然わかっていないから問題なのだ。
曾祖母がこんな呪縛のような誓約魔法を施したのには訳がある。アリエールの純潔を守るためと、もしものことがあった時、王族の種がばらまかれないようにとの配慮から、ジークフリートは妻になるアリエールとしかできないようになっているのだ。
もし、アリエール以外の女性とコトに及ぼうとすれば、勃たないし、激痛を伴う。そしてもうひとつ大事なことは、相手がアリエールであっても、意に副わない暴力で服従させた場合、今後、アリエール以外の女性と行為をしようとすれば、命を対価とする誓約になっているのだ。
だからアリエール以外の女性を妻とすることは、事実上のジークフリートの死を意味する。この誓約は、当時5歳の子供の婚約だったため、公にはなっていない。国王陛下ご夫妻とルクセンブルク家には、伝えられていること。
曾祖母は、何よりもひ孫が悲しむ様を見たくなかったので、こんな誓約魔法を施したのであろう。
それもそのはずで、アリエールに懸想している男を片っ端からジークフリートが潰して回る。相手が王太子殿下なら勝ち目がないから、皆諦める。
ジークフリートに近寄ってくる女は、ジークフリートがアリエールに見せる以上にけんもほろろの態度で断ってしまう。
ジークフリートは、アリエールには「嫌い。」「お前が憎い。」と言っているが、実は大好きなのだ。小さい頃から習慣として、会うたびに言っていたから、肉体関係を結ぶようになってからでも、その言葉を覆すことができないでいる。
小学生が好きな娘に意地悪をするのと同じレベルなのだ。本人は、悪ふざけのつもりでも、言われた本人はひどく傷ついていることを理解していない。
そもそも肉体関係を結ぶきっかけになったことは、最近、お妃教育に来ているはずのアリエールがぷっつりとジークフリートを訪ねてこなくなったことが原因で、寂しくてたまらない気持ちから起こしてしまったこと。ほんの出来心が肉欲と快楽に溺れてしまった結果に過ぎない。
それに遅かれ早かれ、我が妻になるアリエールを抱いたところで問題にならないだろうという甘えからくるもの。
なんといっても、アリエールは自分にぞっこんだと思い込んでいるから。アリエールもきっと喜んで股を開いていると勝手に思っているのだ。
愛の言葉もなく襲うことは、暴力だという意識はまるでない。自分が気持ち良ければ、相手も気持ちいいと思っている単純身勝手男なのだ。
それはお妃教育で、将来の王妃となる女性は、決して表情を読み取られてはいけません、との教えを忠実に守っていたアリエールだからこそであって、どうしてもアリエールは、ジークフリートに会ってしまうと思わず顔が緩んでしまうことから、会わずに帰るようになったのだ。
それがいきなり羽交い絞めにされ、ドレスの裾から手を入れられ、カラダをまさぐられ泣き叫んでも決して緩められることがない恐怖心は、アリエールの心に深い傷を負わせた。
そのことをなんとも思っていないバカ王子がジークフリートなのだ。それからは、ジークフリートのことを大嫌いになったのだが、婚約解消には至っていない。なぜなら、ジークフリートに襲われたことを家族に秘密にしたから。言えば、きっとお父様のことだから、我が家が取りつぶしになっても、王家を敵に回すことになるだろう。
ジークフリートと婚約するとき曾祖母立会いの下で、誓約魔法が施されている。その内容と解除の魔法を知っているのは、曾祖母亡き後アリエールだけなのだが、アリエールだけを解除してもジークフリートが解除しなければ、誓約魔法は生き続けるという厄介なもの。文字通り死が二人を分かつまで誓約が呪縛として残る。
だからアリエール側から解除するには、命をかけなければ解除できない。同じことがジークフリートにも言えることなのだが、これが全然わかっていないから問題なのだ。
曾祖母がこんな呪縛のような誓約魔法を施したのには訳がある。アリエールの純潔を守るためと、もしものことがあった時、王族の種がばらまかれないようにとの配慮から、ジークフリートは妻になるアリエールとしかできないようになっているのだ。
もし、アリエール以外の女性とコトに及ぼうとすれば、勃たないし、激痛を伴う。そしてもうひとつ大事なことは、相手がアリエールであっても、意に副わない暴力で服従させた場合、今後、アリエール以外の女性と行為をしようとすれば、命を対価とする誓約になっているのだ。
だからアリエール以外の女性を妻とすることは、事実上のジークフリートの死を意味する。この誓約は、当時5歳の子供の婚約だったため、公にはなっていない。国王陛下ご夫妻とルクセンブルク家には、伝えられていること。
曾祖母は、何よりもひ孫が悲しむ様を見たくなかったので、こんな誓約魔法を施したのであろう。
1
あなたにおすすめの小説
主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します
白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。
あなたは【真実の愛】を信じますか?
そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。
だって・・・そうでしょ?
ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!?
それだけではない。
何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!!
私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。
それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。
しかも!
ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!!
マジかーーーっ!!!
前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!!
思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。
世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。
結婚初夜、「何故彼女が死んでお前が生きているんだ」と夫に言われました
ましゅぺちーの
恋愛
侯爵令嬢のアリサは婚約者だった王太子テオドールと結婚した。
ちょうどその半年前、アリサの腹違いの妹のシアは不慮の事故で帰らぬ人となっていた。
王太子が婚約者の妹のシアを愛していたのは周知の事実だった。
そんな彼は、結婚初夜、アリサに冷たく言い放った。
「何故彼女が死んでお前が生きているんだ」と。
【完結】氷の令嬢は愛を請わない - 捨て子の『義妹』に愛も家族も奪われたマリーローズの逆襲
恋せよ恋
恋愛
銀髪紫眼の美貌の侯爵令嬢、マリーローズ。
完璧な淑女に育った彼女だったが、母は捨て子ジュリエットを寵愛。
婚約者の公爵家嫡男アレックスも、友人も、次々に奪われる――。
家族に裏切られ、すべてを失った彼女が下した決断は、
家族を見かぎり、国を捨て、自らの人生を取り戻すこと。
理不尽な悲恋を力に変え、運命をひっくり返す令嬢の逆転劇!
🔶登場人物・設定は筆者の創作によるものです。
🔶不快に感じられる表現がありましたらお詫び申し上げます。
🔶誤字脱字・文の調整は、投稿後にも随時行います。
🔶今後もこの世界観で物語を続けてまいります。
🔶 『エール📣』『いいね❤️』励みになります!
つまらない妃と呼ばれた日
柴田はつみ
恋愛
公爵令嬢リーシャは政略結婚で王妃に迎えられる。だが国王レオニスの隣には、幼馴染のセレスが“当然”のように立っていた。祝宴の夜、リーシャは国王が「つまらない妃だ」と語る声を聞いてしまい、心を閉ざす。
舞踏会で差し出された手を取らず、王弟アドリアンの助けで踊ったことで、噂は一気に燃え上がる――「王妃は王弟と」「国王の本命は幼馴染」と。
さらに宰相は儀礼と世論を操り、王妃を孤立させる策略を進める。監視の影、届かない贈り物、すり替えられた言葉、そして“白薔薇の香”が事件現場に残る冤罪の罠。
リーシャは微笑を鎧に「今日から、王の隣に立たない」と決めるが、距離を取るほど誤解は確定し、王宮は二人を引き裂いていく。
――つまらない妃とは、いったい誰が作ったのか。真実が露わになった時、失われた“隣”は戻るのか。
【完結】使えない令嬢として一家から追放されたけど、あまりにも領民からの信頼が厚かったので逆転してざまぁしちゃいます
腕押のれん
ファンタジー
アメリスはマハス公国の八大領主の一つであるロナデシア家の三姉妹の次女として生まれるが、頭脳明晰な長女と愛想の上手い三女と比較されて母親から疎まれており、ついに追放されてしまう。しかしアメリスは取り柄のない自分にもできることをしなければならないという一心で領民たちに対し援助を熱心に行っていたので、領民からは非常に好かれていた。そのため追放された後に他国に置き去りにされてしまうものの、偶然以前助けたマハス公国出身のヨーデルと出会い助けられる。ここから彼女の逆転人生が始まっていくのであった!
私が死ぬまでには完結させます。
追記:最後まで書き終わったので、ここからはペース上げて投稿します。
追記2:ひとまず完結しました!
婚約者チェンジ? 義理の妹は公爵令嬢の地位もチェンジされました』 ~三日で破談、家ごと褫奪の末路です~
ふわふわ
恋愛
「お姉様の婚約者、私がいただきますわ。だって“公爵令嬢”ですもの」
義理の妹コンキュはそう言って、王太子との婚約を奪いました。
父はそれを容認し、私は静かに受け入れます。
けれど――
公爵令嬢とは“地位”ではなく、“責任”の継承者。
王宮で礼儀も実務も拒み、「未来の王太子妃」を名乗った義妹は、わずか三日で婚約破棄。
さらに王家への不敬と統治能力の欠如が問題視され、父の監督責任が問われます。
そして下されたのは――家ごとの褫奪。
一方で私は、領地を守り、帳簿を整え、静かに家を支え続ける。
欲しがったのは肩書。
継いだのは責任。
正統は叫びません。
ただ、残るだけ。
これは、婚約を奪われた公爵令嬢が
“本当に継がれるべきもの”を証明する物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる