29 / 33
29.
しおりを挟む
ふいにアリエールの指にとまったテントウムシ君から、思いがけない情報を得られた。
それによると、単純明快な罠が貼ってあり、それにまんまと引っかかったのが、先頭にいたエドワードとセレナーデの馬車だということ。
トリックは簡単なことで、分かれ道に通行止めの立て看板を置き、どちらか一方の道に誘導しながら、後続の馬車には目くらましをかませ、誘導した道に草をばらまき、1本道に見せかけたということらしい。
たいていの場合、盗賊団が絡んでいることが多く、馬車の中に女がいた場合、売り飛ばされるか、慰み者として餌食になる。男は、なぶり殺しにされると相場が決まっている。
そうなれば救出は困難で、一刻も早く見つけ出さなければ大変なことになる。
テントウムシ君の証言を頼りに、道の分岐点を探し出す。すぐ証言通りにわかり、もう一方の道を進むと金属音が聞こえてきた。
お兄様と護衛の騎士がセレナーデ王女を守るべく、懸命に盗賊と刃を交え戦っている。
そこへグレゴリーやその護衛が加勢し、一気に流れが変わる。
アリエールは、馬車の中に飛び込み、おびえているセレナーデを念のため老婆の姿に変える。そこで異空間を広げ、先ほどまでアリエールがいた馬車の中の異空間につなげ、セレナーデとともに、元の馬車へと戻る。
アリエールが飛び込んだのを見ていた盗賊どもは、アリエールの後を追い、すぐさま馬車の中に入るが、その時にはすでに誰も載っていないもぬけの殻だったのだ。
「あれ?馬車を背にして、あいつら戦っていたからてっきり?」
「でも、さっき乗り込んでいった女もいなくなっているとは?どこへ行ったのだ?」
「なんだか、薄気味悪いな。馬車側の援軍も来たところだし、嫌な予感しかしない。」
馬車に入り込んだ盗賊たちの話し合いが終わらないうちに、外での戦いが終わり、全員が縄に就くことになっていた。
「武器を捨て、馬車から出ろ!」
グレゴリーの声が響く。盗賊はビクリと肩を震わせ、恐る恐る声のする方を見ると、仁王立ちしたグレゴリーとエドワード王太子殿下の姿が……!
え?襲った馬車は、金持ちの裕福な馬車だと思ったら、王太子殿下の馬車を襲ってしまったということに気づき、青ざめる。
グレゴリーとエドワードは、盗賊に縄を打ち、アルキメデス侯爵家に引き渡す。
すぐにも愛するセレナーデやアリエールの元に戻りたいが、王族という立場上、盗賊のアジトを突き止め、調査しなければならない。
ほかに囚われているかもしれないから。
盗賊のアジトでは、盗んだ金銀財宝のほかに、アールスハイドのキャサリン嬢が変わり果てた姿で見つかった。
半ば放心状態で、盗賊の慰み者になっていたらしく、ほとんど失明していたようだが、その面影に見覚えがあったのだ。
王太子殿下の婚約者になることを夢見て、身の程をわきまえない態度に眉根をしかめたこともあったが、今となれば、哀れとしか言いようがない。
アールスハイド家に帰そうにも、そのように穢れた娘は、わが娘ではないと言い張り、引き取り手がないので、仕方なく修道院送りにすることにしたのだ。
修道院で、身も心も正常になってから、改めて己の慢心や不始末を顧みてもらいたいという意味で。
だが、キャサリン嬢は、カラダが元に戻るにつれ、余計に精神的に追い込まれていくようになる。
一度は、ジークフリートの婚約者になりそこない、エドワードには見向きもされず、社交界で笑いものになり、学園は退学処分、父は辺境の地へ領地替えになり、自身は盗賊に囚われ、辱めを受けた記憶が戻ってきてからは、ふさぎ込むようになり、ついには修道院の一番高い塔の上から身を躍らせたのだ。
考えてみれば、またキャサリン嬢も被害者と言えるのかもしれない。
それによると、単純明快な罠が貼ってあり、それにまんまと引っかかったのが、先頭にいたエドワードとセレナーデの馬車だということ。
トリックは簡単なことで、分かれ道に通行止めの立て看板を置き、どちらか一方の道に誘導しながら、後続の馬車には目くらましをかませ、誘導した道に草をばらまき、1本道に見せかけたということらしい。
たいていの場合、盗賊団が絡んでいることが多く、馬車の中に女がいた場合、売り飛ばされるか、慰み者として餌食になる。男は、なぶり殺しにされると相場が決まっている。
そうなれば救出は困難で、一刻も早く見つけ出さなければ大変なことになる。
テントウムシ君の証言を頼りに、道の分岐点を探し出す。すぐ証言通りにわかり、もう一方の道を進むと金属音が聞こえてきた。
お兄様と護衛の騎士がセレナーデ王女を守るべく、懸命に盗賊と刃を交え戦っている。
そこへグレゴリーやその護衛が加勢し、一気に流れが変わる。
アリエールは、馬車の中に飛び込み、おびえているセレナーデを念のため老婆の姿に変える。そこで異空間を広げ、先ほどまでアリエールがいた馬車の中の異空間につなげ、セレナーデとともに、元の馬車へと戻る。
アリエールが飛び込んだのを見ていた盗賊どもは、アリエールの後を追い、すぐさま馬車の中に入るが、その時にはすでに誰も載っていないもぬけの殻だったのだ。
「あれ?馬車を背にして、あいつら戦っていたからてっきり?」
「でも、さっき乗り込んでいった女もいなくなっているとは?どこへ行ったのだ?」
「なんだか、薄気味悪いな。馬車側の援軍も来たところだし、嫌な予感しかしない。」
馬車に入り込んだ盗賊たちの話し合いが終わらないうちに、外での戦いが終わり、全員が縄に就くことになっていた。
「武器を捨て、馬車から出ろ!」
グレゴリーの声が響く。盗賊はビクリと肩を震わせ、恐る恐る声のする方を見ると、仁王立ちしたグレゴリーとエドワード王太子殿下の姿が……!
え?襲った馬車は、金持ちの裕福な馬車だと思ったら、王太子殿下の馬車を襲ってしまったということに気づき、青ざめる。
グレゴリーとエドワードは、盗賊に縄を打ち、アルキメデス侯爵家に引き渡す。
すぐにも愛するセレナーデやアリエールの元に戻りたいが、王族という立場上、盗賊のアジトを突き止め、調査しなければならない。
ほかに囚われているかもしれないから。
盗賊のアジトでは、盗んだ金銀財宝のほかに、アールスハイドのキャサリン嬢が変わり果てた姿で見つかった。
半ば放心状態で、盗賊の慰み者になっていたらしく、ほとんど失明していたようだが、その面影に見覚えがあったのだ。
王太子殿下の婚約者になることを夢見て、身の程をわきまえない態度に眉根をしかめたこともあったが、今となれば、哀れとしか言いようがない。
アールスハイド家に帰そうにも、そのように穢れた娘は、わが娘ではないと言い張り、引き取り手がないので、仕方なく修道院送りにすることにしたのだ。
修道院で、身も心も正常になってから、改めて己の慢心や不始末を顧みてもらいたいという意味で。
だが、キャサリン嬢は、カラダが元に戻るにつれ、余計に精神的に追い込まれていくようになる。
一度は、ジークフリートの婚約者になりそこない、エドワードには見向きもされず、社交界で笑いものになり、学園は退学処分、父は辺境の地へ領地替えになり、自身は盗賊に囚われ、辱めを受けた記憶が戻ってきてからは、ふさぎ込むようになり、ついには修道院の一番高い塔の上から身を躍らせたのだ。
考えてみれば、またキャサリン嬢も被害者と言えるのかもしれない。
0
あなたにおすすめの小説
主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します
白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。
あなたは【真実の愛】を信じますか?
そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。
だって・・・そうでしょ?
ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!?
それだけではない。
何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!!
私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。
それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。
しかも!
ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!!
マジかーーーっ!!!
前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!!
思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。
世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。
【完結】氷の令嬢は愛を請わない - 捨て子の『義妹』に愛も家族も奪われたマリーローズの逆襲
恋せよ恋
恋愛
銀髪紫眼の美貌の侯爵令嬢、マリーローズ。
完璧な淑女に育った彼女だったが、母は捨て子ジュリエットを寵愛。
婚約者の公爵家嫡男アレックスも、友人も、次々に奪われる――。
家族に裏切られ、すべてを失った彼女が下した決断は、
家族を見かぎり、国を捨て、自らの人生を取り戻すこと。
理不尽な悲恋を力に変え、運命をひっくり返す令嬢の逆転劇!
🔶登場人物・設定は筆者の創作によるものです。
🔶不快に感じられる表現がありましたらお詫び申し上げます。
🔶誤字脱字・文の調整は、投稿後にも随時行います。
🔶今後もこの世界観で物語を続けてまいります。
🔶 『エール📣』『いいね❤️』励みになります!
結婚初夜、「何故彼女が死んでお前が生きているんだ」と夫に言われました
ましゅぺちーの
恋愛
侯爵令嬢のアリサは婚約者だった王太子テオドールと結婚した。
ちょうどその半年前、アリサの腹違いの妹のシアは不慮の事故で帰らぬ人となっていた。
王太子が婚約者の妹のシアを愛していたのは周知の事実だった。
そんな彼は、結婚初夜、アリサに冷たく言い放った。
「何故彼女が死んでお前が生きているんだ」と。
【完結】使えない令嬢として一家から追放されたけど、あまりにも領民からの信頼が厚かったので逆転してざまぁしちゃいます
腕押のれん
ファンタジー
アメリスはマハス公国の八大領主の一つであるロナデシア家の三姉妹の次女として生まれるが、頭脳明晰な長女と愛想の上手い三女と比較されて母親から疎まれており、ついに追放されてしまう。しかしアメリスは取り柄のない自分にもできることをしなければならないという一心で領民たちに対し援助を熱心に行っていたので、領民からは非常に好かれていた。そのため追放された後に他国に置き去りにされてしまうものの、偶然以前助けたマハス公国出身のヨーデルと出会い助けられる。ここから彼女の逆転人生が始まっていくのであった!
私が死ぬまでには完結させます。
追記:最後まで書き終わったので、ここからはペース上げて投稿します。
追記2:ひとまず完結しました!
つまらない妃と呼ばれた日
柴田はつみ
恋愛
公爵令嬢リーシャは政略結婚で王妃に迎えられる。だが国王レオニスの隣には、幼馴染のセレスが“当然”のように立っていた。祝宴の夜、リーシャは国王が「つまらない妃だ」と語る声を聞いてしまい、心を閉ざす。
舞踏会で差し出された手を取らず、王弟アドリアンの助けで踊ったことで、噂は一気に燃え上がる――「王妃は王弟と」「国王の本命は幼馴染」と。
さらに宰相は儀礼と世論を操り、王妃を孤立させる策略を進める。監視の影、届かない贈り物、すり替えられた言葉、そして“白薔薇の香”が事件現場に残る冤罪の罠。
リーシャは微笑を鎧に「今日から、王の隣に立たない」と決めるが、距離を取るほど誤解は確定し、王宮は二人を引き裂いていく。
――つまらない妃とは、いったい誰が作ったのか。真実が露わになった時、失われた“隣”は戻るのか。
婚約者チェンジ? 義理の妹は公爵令嬢の地位もチェンジされました』 ~三日で破談、家ごと褫奪の末路です~
ふわふわ
恋愛
「お姉様の婚約者、私がいただきますわ。だって“公爵令嬢”ですもの」
義理の妹コンキュはそう言って、王太子との婚約を奪いました。
父はそれを容認し、私は静かに受け入れます。
けれど――
公爵令嬢とは“地位”ではなく、“責任”の継承者。
王宮で礼儀も実務も拒み、「未来の王太子妃」を名乗った義妹は、わずか三日で婚約破棄。
さらに王家への不敬と統治能力の欠如が問題視され、父の監督責任が問われます。
そして下されたのは――家ごとの褫奪。
一方で私は、領地を守り、帳簿を整え、静かに家を支え続ける。
欲しがったのは肩書。
継いだのは責任。
正統は叫びません。
ただ、残るだけ。
これは、婚約を奪われた公爵令嬢が
“本当に継がれるべきもの”を証明する物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる