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まだ、お開きには早すぎ時間があるが、もう帰ろうと暇乞いをしていると、ベルーナの姿が見えない。
きょろきょろと見回すと、どうやらバルコニーに連れ出されている。
誰かに何か言われているように見えるが、その横顔は、うっとりとするぐらい美しい。
よく見ると、相手の男性は第1王子殿下のセドリック。
マディソンは、「あの野郎!」と一瞬思ったが、よく考えると、これは大変な玉の輿じゃねえか?と思い直す。
二人のやり取りを見届けてから、帰路に着く。
マディソンは、エミリアにベルーナがセドリック殿下のお目に止まったようだ。と告げ、夫婦で二人の恋の行方を後押しするつもりでいた。
ところが、翌日から貴族家から横やりが入り、
「男爵令嬢の分際で、もうセドリック殿下に色目を遣うとは、あさましい」
「さすが、お里が知れるというところですわね」
「美人だからと言って、なんでも許されるわけがございません」
「はしたない娘、汚らわしい」
誹謗中傷がいつまでも続く。言葉の暴力だけでなく、男爵邸に投石する者まで現れ、精神的にまいる。
力でやるのなら、力で押し返す自信があるが、下のガキ2人は、まだ冒険者になれない。
当のベルーナは、セドリック殿下からのお誘いで、馬で遠乗りに出かけているというのに。
ベルーナのやっとつかんだ恋は、儚く消え入りそうで、マディソンとエミリアはため息しか付けない。
ベルーナのために叙勲を受け入れたというのに、却って、ベルーナに悲しい思いをさせて、養親失格だと打ちのめされる。
マディソンは、パーティで考えていたブルゴーニュ国へ出発することをエミリアにほのめかすと、賛成してくれた。
おそらくベルーナは、男爵家以上の娘に違いないと確信を持つ。
ひょっとすれば侯爵か、それ以上の令嬢ではないかと思われる。
カサブランカ国王には、何も言わず、いつもの冒険だと称し、8人家族は、すぐさま、出発した。
どうせ冒険家稼業は、こんなもの。そうと知っていながら、あえて叙勲した王家に責任がある。と言わんばかりに黙って、出国した。
男爵家をカサブランカ国から、追い出したのは、嫉妬に狂った貴族なのだから。脅迫状や嫌がらせを記した手紙はすべて書斎机の上に置いたまま、出奔したのだ。
後は野となれ山となれ。
マディソンは、家族を侮辱されることが何より許せない。
マディソン達が、カサブランカ国を出奔して、数日後、カサブランカ国では大規模な粛清が行われ、国家に損害を与えたものとして、相当数の貴族がお取りつぶしの憂き目にあった。
適齢期を迎えたセドリック殿下の落ち込みが激しく、なぜ男爵家が出奔したかを調べさせたところ、投石、脅迫状などを押収して、ベルーナに対する嫌がらせを確認したのだ。
それら貴族の中には、当然、マディソンやベルーナに嫌がらせをした貴族がいたことは、マディソン以下冒険者家族には知る由がない。
-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-
カサブランカ国を出奔してから、一度、冒険者ギルドに顔を出し、それからすぐにブルゴーニュ国に向かった。
その間に、ベルーナに真実を伝えると、涙を流してベルーナに感謝される。
手掛かりは、ベルーナという名前とベビー服だけ、あえて言うならば、もう一つの手がかりはベルーナ自身の美貌しかない。
それでブルゴーニュ国の王都まで行き、いろいろ聞き込みを開始する。
とりあえず、冒険者ギルドに顔を出し、16、17年前にベルーナという令嬢が行方不明になっていないか確かめることに。
これと言った収穫が得られなかったので、衛兵の詰め所にも同様の話をして、聞きに行くことにした。
ベルーナの身元調査をして3日目、突然、宿に近衛騎士団が取り囲むようにして、現れた。
マディソンは驚くも、話がベルーナの件で、と言われ納得し、宿の部屋に騎士を招き入れた。
騎士は、ベルーナの容姿を見て、思わず跪く。ベルーナには美しさだけでなく、人を圧倒する何かを持っていたから。
きょろきょろと見回すと、どうやらバルコニーに連れ出されている。
誰かに何か言われているように見えるが、その横顔は、うっとりとするぐらい美しい。
よく見ると、相手の男性は第1王子殿下のセドリック。
マディソンは、「あの野郎!」と一瞬思ったが、よく考えると、これは大変な玉の輿じゃねえか?と思い直す。
二人のやり取りを見届けてから、帰路に着く。
マディソンは、エミリアにベルーナがセドリック殿下のお目に止まったようだ。と告げ、夫婦で二人の恋の行方を後押しするつもりでいた。
ところが、翌日から貴族家から横やりが入り、
「男爵令嬢の分際で、もうセドリック殿下に色目を遣うとは、あさましい」
「さすが、お里が知れるというところですわね」
「美人だからと言って、なんでも許されるわけがございません」
「はしたない娘、汚らわしい」
誹謗中傷がいつまでも続く。言葉の暴力だけでなく、男爵邸に投石する者まで現れ、精神的にまいる。
力でやるのなら、力で押し返す自信があるが、下のガキ2人は、まだ冒険者になれない。
当のベルーナは、セドリック殿下からのお誘いで、馬で遠乗りに出かけているというのに。
ベルーナのやっとつかんだ恋は、儚く消え入りそうで、マディソンとエミリアはため息しか付けない。
ベルーナのために叙勲を受け入れたというのに、却って、ベルーナに悲しい思いをさせて、養親失格だと打ちのめされる。
マディソンは、パーティで考えていたブルゴーニュ国へ出発することをエミリアにほのめかすと、賛成してくれた。
おそらくベルーナは、男爵家以上の娘に違いないと確信を持つ。
ひょっとすれば侯爵か、それ以上の令嬢ではないかと思われる。
カサブランカ国王には、何も言わず、いつもの冒険だと称し、8人家族は、すぐさま、出発した。
どうせ冒険家稼業は、こんなもの。そうと知っていながら、あえて叙勲した王家に責任がある。と言わんばかりに黙って、出国した。
男爵家をカサブランカ国から、追い出したのは、嫉妬に狂った貴族なのだから。脅迫状や嫌がらせを記した手紙はすべて書斎机の上に置いたまま、出奔したのだ。
後は野となれ山となれ。
マディソンは、家族を侮辱されることが何より許せない。
マディソン達が、カサブランカ国を出奔して、数日後、カサブランカ国では大規模な粛清が行われ、国家に損害を与えたものとして、相当数の貴族がお取りつぶしの憂き目にあった。
適齢期を迎えたセドリック殿下の落ち込みが激しく、なぜ男爵家が出奔したかを調べさせたところ、投石、脅迫状などを押収して、ベルーナに対する嫌がらせを確認したのだ。
それら貴族の中には、当然、マディソンやベルーナに嫌がらせをした貴族がいたことは、マディソン以下冒険者家族には知る由がない。
-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-
カサブランカ国を出奔してから、一度、冒険者ギルドに顔を出し、それからすぐにブルゴーニュ国に向かった。
その間に、ベルーナに真実を伝えると、涙を流してベルーナに感謝される。
手掛かりは、ベルーナという名前とベビー服だけ、あえて言うならば、もう一つの手がかりはベルーナ自身の美貌しかない。
それでブルゴーニュ国の王都まで行き、いろいろ聞き込みを開始する。
とりあえず、冒険者ギルドに顔を出し、16、17年前にベルーナという令嬢が行方不明になっていないか確かめることに。
これと言った収穫が得られなかったので、衛兵の詰め所にも同様の話をして、聞きに行くことにした。
ベルーナの身元調査をして3日目、突然、宿に近衛騎士団が取り囲むようにして、現れた。
マディソンは驚くも、話がベルーナの件で、と言われ納得し、宿の部屋に騎士を招き入れた。
騎士は、ベルーナの容姿を見て、思わず跪く。ベルーナには美しさだけでなく、人を圧倒する何かを持っていたから。
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