あの日々に戻りたくない!自称聖女の義妹に夫と娘を奪われた妃は、死に戻り聖女の力で復讐を果たす

青の雀

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 蓼食う虫も好き好き。とは、よく言ったもので、まさにこのカップルがその諺の通りとなってしまった。

 普通の公女様と他国の貴族の三男坊だけでも、珍妙な取り合わせだというのに、聖女様で王位継承権者第2位のプリンセスの称号を持つスカーレットと、他国アビゲイルの侯爵家の三男坊では、誰が見ても、つり合いが取れない。

 ましてや、美女とブ男なら、なおさらというもの。

 それでも当人同士が深く愛し合っているから、誰にも反対できない。

 スカーレットとジャックが婚約したという話は、世界を駆け巡る。それに納得しない国が一つだけあり、それはジャックの母国アビゲイル王国だけだった。

 それに反して、ジャックの生家、モーガン家の人々には、大歓迎されて、とりわけジャックの父モーガン侯爵は、いち早くジェミニ王国に駆け付けてきて、ジャックとスカーレットに祝福してくれた。

「はじめまして。私はジャックの父親でアビゲイルで侯爵をしているモーガンと申すものです。この度、倅と聖女様が婚約したという話を聞きつけ、駆け付けた次第でございまして……その、倅は今、どこに居りますでしょうか?モーガンが来たと言伝いただくわけには参りませんでしょうか?」

 モーガン侯爵は、目の前にいる自分の息子のことがわからないらしい。15歳で家を飛び出して以来、何年も会っていない息子とはいえ、幼い頃の面影ぐらい残っているかと思うのだけど、それでもわからないみたい。

 スカーレットとジャックは、クスクス笑う。

「何、言ってんだよ。親父」
「へ!?まさかとは思いますが、……ジャックか?」
「そうだよ」
「お、お前、ずいぶん雰囲気が変わったなぁ。見違えたぞ。立派になって……父さんは、嬉しいぞ」

 ロッテンマイヤー家の玄関先でオイオイと泣かれても……、執事が応接室に案内してくれ、お茶を一口飲むと、モーガン侯爵も、ようやく落ち着きを取り戻した。

「それでご令息を是非、我がロッテンマイヤー家に婿入りしていただきたい件ですが、ご承知いただけるとは、ありがたい、今後とも親戚付き合いの方、よろしくお願いします」

 父もモーガン侯爵も嬉しそうで何より。

「いやあ、実にめでたいですな」
「今宵は、我が拙邸にお泊り頂き、この後、一献どうですかな?」
「おお、それはありがたい」
「あはははは」
「わはははは」

 二人の親父殿は、早くも意気投合してしまったみたい。

 ロッテンマイヤー公爵は、娘を嫁にやることなく、結婚後もしばらくは、同じ家で暮らせる喜びがあり、モーガン侯爵は、というと逆玉に乗った息子を自慢したい。将来、ジェミニ王国との縁続きになることを歓迎している。

 結婚は家同士の一種の契約だから、利害関係が一致すれば、笑いあい祝福しあう。

 アビゲイル王国から王族が来たときも、モーガン侯爵が一手に引き受けてくれて対応に苦慮することなく済んだのだが、どうしてもジャックとスカーレットに会いたいと要望を出してきた。

 モーガン侯爵も、主君の命には背けないので、仕方なく婚約披露パーティにアビゲイルの王子を臨席させることで折り合いがついた。

 スカーレットは、ジャックの瞳の色と同じ藤色のドレスを着る。ジャックもまた、自身の瞳と同じ色の藤色のタキシードにネッカチーフをスカーレットの瞳の色に合わせる。

 二人して、仲良く手を繋ぎ現れると会場のあちらこちらから歓声が上がる。どこからどう見ても似合いのカップルに見える。

 それもそのはずで、もう済ませた本物の恋人同士だから。前々世の時からの付き合いで息ピッタリ、眼と眼を合わせるだけで、相手の考えていることがズバリわかる。

 スカーレットは古女房になった気分もしないわけでもないが、新婚気分も味わえるから幸せいっぱい、夢いっぱいなのだ。

 パーティの始まりを告げる鐘が鳴り響く、アビゲイルの王子がしゃしゃり出てきて、スカーレットにファーストダンスを申し込むと、会場全体は衝撃を受けたようにざわざわと騒がしくなる。

 スカーレットは、それをきっぱり断り、ジャックの手を取り中央に進み出て、ダンスを踊り始める。

 先ほどまでざわついていた会場は、一気に静まり返って、二人のダンスにため息をついている。

 練習時間がさほどあったわけでもないのに、前々世からの腐れ縁で、長年夫婦をしてきたカップルのように息がぴったりと合う。

 流れるようなステップに程よいターン。曲が終わってから、しばらくギャラリーの拍手は鳴りやまなかった。

 歓談タイムに入った頃、ジャックの元上司が耳元で囁く。

「どうやって、あんな美女を射止めたのだ?それに、なんだかジャックは雰囲気が違ったな。幸せ太りって奴か?」
「……」

 黙っているジャックの代わりにスカーレットが横から口出しする。
「わたくしの一目惚れから始まった恋ですもの」

 これには、アビゲイル国の関係者は目を白黒させて、ビックリして、同時に項垂れている。
「美しいものを見飽きた聖女様の眼からは、違う角度を見てしまわれたようですな」

 なんだ?それは?

 とにかくアビゲイル国は、諦めて帰国の途についた。

 これで、やっと二人きりになれた。もう眼を潤ませながら、口づけを躱す二人に空から無数の花びらが舞い、その花びらは、受け取った人にとって、必要なものへと変化していく。

 貧しき者には、少量の金の粒に変化し、飢えている者には、花弁がパンへと変わり、乾いている者には、水分となる。また、病める者には万能薬として痛みを抑える効果がある。幸せな人のところに堕ちる花弁は、一生その思いが続くように、と祈りを込めた一生枯れない花弁として、残る。

 二人の元に堕ちた花弁は、まさにそれで、死が二人を分かつまで、永遠に枯れない花として王座に飾られている。

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