置き去りにされた転生シンママはご落胤を秘かに育てるも、モトサヤはご容赦のほどを 

青の雀

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 翌朝、目覚めたバレンシアは、もうレオンハルトが戻ってこないことを悟った。

 ベッドの上に、レオンハルトの財布が残されていて、中には手紙が入っていた。この財布は一種のアイテムボックスのような役割を果たしていて、いくら入れても重さを感じないのだ。

「もし、この手紙をバレンシアが読むときが来たら、もうお別れだと思ってくれ。財布の中の有り金はバレンシアガ好きなように使ってくれてかまわない」

 バレンシアは、出国するときのレオンハルトの様子がいつもと違うことに気づいていた。どこか思いつめたような顔をしていたからだと思う。

 きっと、あの時から王妃様の病状が思わしくなかったのだと思う。

 財布の中には白金貨が100枚(日本円換算にして100億円)金貨が3500枚(日本円換算にして3500万円)、銀貨が500枚(日本円換算で500000円)入っている。

 この旅行が、いわばレオンハルトの手切れ金なのだと思うようにして、着替えて、食堂に行く。

 驚いたことに、レオンハルトは、このフランチェスカという宿屋に前金で、2年分の食費込みの宿泊代金を支払っていたことが分かった。

 要するに、後半年で学園を卒業することになるが、その後も1年半の間、バルセロナに帰ってくるなという意図が込められていることに気づく。

 結局、お金で解決したってことなのよね。悔しいけど、それはそれで仕方がないことと割り切っている。

 バレンシアは、実家から持ち出してきた宝石の小粒や現金をレオンハルトの財布の中に入れ、肌身離さず首からぶら下げるように持つ。

 重さを感じないから、大金を持っていることをつい忘れがちになってしまう。これだけの金品があれば、少々贅沢をしても暮らしていく分には十分すぎるほどの大金がある。

 食事を済ませ、今後の身の振り方に思いを馳せる。

 このまま絵描きとして、放浪の旅を続け、いや、素知らぬ顔をして、学園を卒業するのもアリかと思う。

 どちらにしても、一度実家に戻ってから身の振り方を考えなきゃならない。

 でも、ここの宿代を放棄するのも、もったいないような気がする。

 せっかく一人で気ままに生活できる拠点ができたのだから、帰国するにしても、この拠点を手放すには、もったいなさすぎる。

 三食昼寝付き、自由に絵が描ける環境は、お金では買えない価値がある。

 マドリードの王都へ午後から買い物に行くことにして、厩舎へ行くと、まだレオンハルトの馬が繋がれたままでいた。

 昨夜、王家の呪い魔法で、強制的に帰国させられたレオンハルトは、馬を連れていけなかったのね。

 でも、ほぼ全裸で帰国したレオンハルトも、言い訳に苦労したと思う。お風呂に入っている最中だったと言い訳しているのかしら?

 考えたら、知らずに笑いがこみあげてくる。

 もう別れてしまった男のこととはいえ、未練があるのかもしれない。

 昼食をフランチェスカで摂り、休憩してからマドリードの街へ行くことにした。その休憩中に、何とバレンシアは倒れてしまったのだ。

 急に気分が悪くなり、めまいがしたかと思うと、そこで意識を手放してしまった。

 宿からハウスドクターが呼ばれ、診てもらったところ、妊娠していることが分かったのだ。

「え!嘘……」

 そういえば、女性特有の日も、ずいぶん来ていないことに今更ながら気づく。バルセロナ王家の呪いは、もう一つある。

 血の魔法の他に、一人の王からは、一人の王しか生まれないという呪いが。

 今、ここでバルセロナの王位継承権者を産んでしまったら、もう二度とレオンハルトはいくら頑張っても、他の女性との間はおろか、バレンシアとの間でも、子を生すことはできないという呪いがある。

 妊娠がわかっても、素直に喜べない。生まれてくる子供は確実に男児である。この男児も、レオンハルトが死亡するとき、血の呪いを受け、バルセロナに強制的に帰還されることになるだろう。

 そう思うと、なおさら素直に喜べない。複雑な心境になってしまう。


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