求婚されても困ります!~One Night Mistake~

霧内杳/眼鏡のさきっぽ

文字の大きさ
9 / 38
第2章 理想の旦那

3.合コンかナンパか

しおりを挟む
食事のあいだは軽く、互いの自己紹介をした。

「僕は八月で二十九になるんだが、香坂は?」

「あー、私も誕生日は八月で、二十七になりますね……」

「本当か!?
誕生日は何日だ!?」

課長は興奮しているが、私はといえばそれを苦笑いで見ていた。

「十四日、です」

「奇遇だな!
僕は十三日なんだ!
これはもう、僕たちは結ばれる運命なんだな」

乙女思想で課長はうん、うん、なんて頷いているけれど。
ただの偶然です。
まあ、誕生日が一日違いでマンションのお隣さん、しかも上司と部下だなんて、かなり低い確率だろうとは思うが。

「血液型、血液型は?」

「Oです」

「Oかー。
僕はAなんだ。
ん?
OとAって相性いいのか?
まあ悪くても占いなんて信じないけどな」

課長はひとりで大はしゃぎだが、気になって仕方ない。
たとえ義務感でテンションが上がっているんだとしても、結婚相手がこの私でいいんだろうか。
仮にもデートなのにカーゴパンツとゆるだぼパーカーなんて普通、がっかりするよね。
なのに課長は文句を言わないどころか、気にしていない節がある。
あれか、もしかして変わった性癖の方とか?

「じゃあ、じゃあ、好きな食べ物は?」

……これは合コンかナンパか?

なんて口に出さない私は偉い。
偉いから明日、再びここに来てアイスの三種盛りを食べていいことにする。

「甘いもの、ですね」

「そうか、甘いものか。
僕も甘いものは好きだぞ。
そうだ、デザート、頼むか?」

いそいそと課長は私の前にメニューを広げた。

「遠慮はするな。
僕も頼む」

「……」

さっきからこの私の目の前にいる男は、本当に楠木課長なんだろうか。
会社では女性陣に塩対応の、あの。
あまりに笑わないものだからすでに、楠木課長は怒らせないようにしようなんて思われている、あの。

「決まったか?
……すみません」

スマートに手を上げ、課長が店員を呼ぶ。
たぶん奢りだし、遠慮なく明日食べるつもりだった、アイスの三種盛りを頼んだ。

「香坂の趣味は?
僕は読書なんだが」

意外でもなんでもなく、課長の趣味はイメージ通りだ。
なんかハードカバーの洋書を読んでいそう。

「あー、まんがとかアニメですね。
私、いわゆる腐女子という奴でして」

普段なら一般人には告げない、オタク趣味を出す。
課長も黙ったところを見ると、引いたよね!
よし、これで諦めてくれる!

……なーんて思った私が甘かった。

「んー、BLはよくわからないが、別に個人の趣味だから香坂が好きでも別にかまわないが?
それに僕は読む専だが、なろうとかカクヨムとか利用しているぞ。
今期のアニメなら、ドラゴンの奴が好きだな」

「……」

にっこりと笑い、課長がお冷やのグラスを口に運ぶ。
なんてこったーい!
目の前に趣味に理解のある、理想の男がいるではないか!
あ、いや、私はちっとも課長に恋愛感情などない。
もともとにおいて、恋愛? なにそれ? 美味しいの? が、私なのだ。
しかしながら友婚ならしてもいい!
と思うくらい、課長のポイントが爆上がりした。

「あ、ほら。
デザート来たぞ。
食べよう」

「……そうですね」

私の前には三種アイス盛り、課長の前にはアップルクランブルのアイスのせが置かれる。

「美味しいな」

実に嬉しそうに笑いながら食べている課長は眩しくて、つい目を細めてしまう。
課長となら友婚してもいい。
けれどきっと、課長が描いている結婚とはいわゆる愛のある結婚なんだろう。
そんなの、私に求められても困るし、それ以前に課長はまだ誤解したままだが、彼には私と結婚する義務などないのだ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ホストと女医は診察室で

星野しずく
恋愛
町田慶子は開業したばかりのクリニックで忙しい毎日を送っていた。ある日クリニックに招かれざる客、歌舞伎町のホスト、聖夜が後輩の真也に連れられてやってきた。聖夜の強引な誘いを断れず、慶子は初めてホストクラブを訪れる。しかし、その日の夜、慶子が目覚めたのは…、なぜか聖夜と二人きりのホテルの一室だった…。

久我くん、聞いてないんですけど?!

桜井 恵里菜
恋愛
愛のないお見合い結婚 相手はキモいがお金のため 私の人生こんなもの そう思っていたのに… 久我くん! あなたはどうして こんなにも私を惑わせるの? ━━ʚ♡ɞ━━ʚ♡ɞ━━ʚ♡ɞ━━ 父の会社の為に、お見合い結婚を決めた私。 同じ頃、職場で 新入社員の担当指導者を命じられる。 4歳も年下の男の子。 恋愛対象になんて、なる訳ない。 なのに…?

【完結】京都若旦那の恋愛事情〜四年ですっかり拗らせてしまったようです〜

藍生蕗
恋愛
大学二年生、二十歳の千田 史織は内気な性格を直したくて京都へと一人旅を決行。そこで見舞われたアクシデントで出会った男性に感銘を受け、改めて変わりたいと奮起する。 それから四年後、従姉のお見合い相手に探りを入れて欲しいと頼まれて再び京都へ。 訳あり跡取り息子と、少し惚けた箱入り娘のすれ違い恋物語

雨の日にやさぐれお姉さんを拾ったと思ったら胃袋も心も掴んでくるスーパーお姉さんだった

九戸政景
恋愛
新人小説家の由利美音は、ある日の夜に一人の女性を拾う。太刀川凛莉と名乗る女性との共同生活が始まる中、様々な出会いを果たしながら美音は自身の過去とも向き合っていく。

私の婚活事情〜副社長の策に嵌まるまで〜

みかん桜
恋愛
身長172センチ。 高身長であること以外ごく普通のアラサーOL、佐伯花音。 婚活アプリに登録し、積極的に動いているのに中々上手く行かない。 「名前からしてもっと可愛らしい人かと……」ってどういうこと? そんな男、こっちから願い下げ! ——でもだからって、イケメンで仕事もできる副社長……こんなハイスペ男子も求めてないっ! って思ってたんだけどな。気が付いた時には既に副社長の手の内にいた。

君色ロマンス~副社長の甘い恋の罠~

松本ユミ
恋愛
デザイン事務所で働く伊藤香澄は、ひょんなことから副社長の身の回りの世話をするように頼まれて……。 「君に好意を寄せているから付き合いたいってこと」 副社長の低く甘い声が私の鼓膜を震わせ、封じ込めたはずのあなたへの想いがあふれ出す。 真面目OLの恋の行方は?

【完結】1日1回のキスをしよう 〜対価はチョコレートで 〜

田沢みん
恋愛
ハナとコタローは、 お隣同士の幼馴染。 親から甘いもの禁止令を出されたハナがコタローにチョコレートをせがんだら、 コタローがその対価として望んだのは、 なんとキス。 えっ、 どういうこと?! そして今日もハナはチョコを受け取りキスをする。 このキスは対価交換。 それ以外に意味はない…… はずだけど……。 理想の幼馴染み発見! これは、 ちょっとツンデレで素直じゃないヒロインが、イケメンモテ男、しかも一途で尽くし属性の幼馴染みと恋人に変わるまでの王道もの青春ラブストーリーです。 *本編完結済み。今後は不定期で番外編を追加していきます。 *本作は『小説家になろう』でも『沙和子』名義で掲載しています。 *イラストはミカスケ様です。

わたしたち、いまさら恋ができますか?

樹沙都
恋愛
藤本波瑠《ふじもとはる》は、仕事に邁進するアラサー女子。二十九歳ともなればライフスタイルも確立しすっかり独身も板についた。 だが、条件の揃った独身主義の三十路には、現実の壁が立ちはだかる。 身内はおろか取引先からまで家庭を持って一人前と諭され見合いを持ち込まれ、辟易する日々をおくる波瑠に、名案とばかりに昔馴染みの飲み友達である浅野俊輔《あさのしゅんすけ》が「俺と本気で恋愛すればいいだろ?」と、囁いた。 幼かった遠い昔、自然消滅したとはいえ、一度はお互いに気持ちを通じ合わせた相手ではあるが、いまではすっかり男女を超越している。その上、お互いの面倒な異性関係の防波堤——といえば聞こえはいいが、つまるところ俊輔の女性関係の後始末係をさせられている間柄。 そんなふたりが、いまさら恋愛なんてできるのか? おとなになったふたりの恋の行方はいかに?

処理中です...