求婚されても困ります!~One Night Mistake~

霧内杳/眼鏡のさきっぽ

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最終章 面倒、だけどいい

6.ヤキモチとかない

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今日はもうなにもしたくないとのことで駅ビルのラーメン屋で食事をすることにした。

「……」

ラーメンを待つあいだ、無言で楠木さんの顔を見つめる。
訊きたいことはある。
あの噂は本当なのか。
家で私と話すとき以外、あんなに気楽に楠木さんが話しているのを見たことがなかった。
少なくとも、それだけ気を許しているってことだ。
それに、喧嘩するほど仲がいいとかいうし。

「もしかして妬いているのか」

自分でも気づいていなかった図星を指され、かっと頬が熱くなる。

「や、妬いたりするわけないじゃないですか。
自惚れないでください」

「そうか。
残念」

楠木さんのラーメンが運ばれてきたあと、少しして私のもきた。
混乱する気持ちを少しでも落ち着けようと、無心にがりがりとごますり器を回す。

「なあ。
えらい擂ってるけど、大丈夫か?」

指摘されて見た丼の中には、こんもりと胡麻の山ができていた。
満杯だったごますり器の中身も、半分以上、減っている。

「きょ、今日は胡麻をたくさん取りたい気分なんですよ!」

「なら、いいが」

箸で乱暴に胡麻の山を崩し、麺を啜る。
そのタイミングで今度は餃子がきた。

「博多のこの、一口サイズの餃子がいいよな」

にやりと笑い、彼がぽいっと餃子を口に放り込む。
さらにごくごくとビールを流し込んだ。

「……あまり飲まないでくださいよ。
酔っぱらうと面倒なんですから」

「ジョッキ一杯くらい、平気だぞ」

笑ってまた餃子でビールを飲んでいるが、信用ならない。
前科があるだけに。

黙々と半分まで食べ進め、味チェンに紅ショウガを入れるか高菜を入れるかで悩んだ。
ちょっと刺激が欲しいし、なら高菜だな。

「すみません、替え玉。
カタ麺で」

軽く手を上げ、楠木さんが追加を頼む。
もうすっかり、頼み方が博多の人間だ。

「食べたー」

楠木さんは満足げだが、そりゃ、お腹もいっぱいになるよね。
替え玉二回もしたら。
今日も彼に守られながら電車で帰る。
お酒も入っているし、ぐだぐだだったらどうしよう、とか思ったけれど、意外と足取りはしっかりとしていた。
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