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最終章 面倒、だけどいい
4.犬も食わない?
「麻里恵、帰るぞ」
楠木さんは私を立たせ、さっさと帰ろうとしているけど、今日、小長井さんは福岡初日なのだ。
どこか食事に連れていったりしなくていいんだろうか。
「あの、小長井さんと食事とか……」
「え?
侑と食事?
遠慮するわー。
麻里恵ちゃんとふたりっきりなら、行くけど」
「え、えーっと……」
両手で私の手を掴み、ふーん、ふーん、と鼻息荒く顔を近づけられたら堪らない。
「だ、れ、が!
君なんかと麻里恵をふたりっきりにするか!」
後ろから伸びてきた手が私を引き寄せ、彼女から引き離す。
「えー、男の独占欲はみっともないわよ?
侑」
「独占欲もなにも!
君と関わるとろくなことにならないからだ!」
楠木さんは完全に私を抱き込み、野生動物バリに小長井さんを警戒している。
「侑、もしかしてあの件、まだ根に持ってるの?
あ、あれじゃなくてこっちかしら?
いつまでもこだわるなんて男が小さいわよ?
別にあれが小さいとは言ってないけど」
「友佳子!」
小長井さんが高らかに笑い、楠木さんはまさに、怒髪天を衝くといった感じだ。
というか、こんなに弄ばれている楠木さんは初めて見た……。
「侑と付き合うのは大変でしょ?
こいつ、男のくせに妙に細かいし」
「はぁっ!?
君こそ、綺麗なのは外見だけじゃないか!
あのだらしない部屋、どうにかしろよ!」
これは完全に、痴話喧嘩って奴じゃないのかな。
そしてそれに私を巻き込まないでほしい。
「ガタガタうるさいわねー。
男の作る料理が毎回、どこかのカフェみたいなお洒落料理とか、気持ち悪いのよ」
「どこが気持ち悪いんだ!
僕は美味しそうに見える見た目にもこだわっているだけだ!」
「インスタに上げるわけでもないのに、あんな料理作ってる意味がわかんないのよ!」
「いいだろ、別に!
だいたい、君が気持ち悪がろうと麻里恵が喜んでくれれば僕はそれでいいんだよ!
なあ、麻里恵!?」
「へっ!?」
曖昧に笑って傍観していたところへ話を振られ、変な声が漏れた。
「麻里恵ちゃん、どうなの?」
「あー……」
ふたりの視線が集中し、変な汗が出てくる。
これは正直にお伝えしていいんでしょうか……?
「そう、ですね。
私はお腹に入ればなんでもいいほうなんで、見た目は……」
「ほら!」
腕を組んで勝ち誇っている小長井さんとは反対に、楠木さんは泣きそうになっている。
それに心の中でため息をつきつつ、さらに先を続けた。
「でも、美味しそうな盛り付けは、それはそれで食欲が出るので、はい」
「だろ!」
私と両手を繋ぎ、うん、うんと頷いたあと、じろっ、と楠木さんが小長井さんを睨みつける。
「あーもー、侑ってやっぱり、面倒くさいー。
今日はおとなしく、ホテルに帰るわー。
じゃあね、麻里恵ちゃーん」
彼女は楠木さん――ではなく私に投げキッスをして去っていった。
「……はぁーっ」
小長井さんがいなくなり、楠木さんが精も根も尽き果てたようなため息を吐きだす。
「……疲れた。
帰ろう」
社内だというのに彼は私の手を掴んで歩きだす。
楠木さんは私を立たせ、さっさと帰ろうとしているけど、今日、小長井さんは福岡初日なのだ。
どこか食事に連れていったりしなくていいんだろうか。
「あの、小長井さんと食事とか……」
「え?
侑と食事?
遠慮するわー。
麻里恵ちゃんとふたりっきりなら、行くけど」
「え、えーっと……」
両手で私の手を掴み、ふーん、ふーん、と鼻息荒く顔を近づけられたら堪らない。
「だ、れ、が!
君なんかと麻里恵をふたりっきりにするか!」
後ろから伸びてきた手が私を引き寄せ、彼女から引き離す。
「えー、男の独占欲はみっともないわよ?
侑」
「独占欲もなにも!
君と関わるとろくなことにならないからだ!」
楠木さんは完全に私を抱き込み、野生動物バリに小長井さんを警戒している。
「侑、もしかしてあの件、まだ根に持ってるの?
あ、あれじゃなくてこっちかしら?
いつまでもこだわるなんて男が小さいわよ?
別にあれが小さいとは言ってないけど」
「友佳子!」
小長井さんが高らかに笑い、楠木さんはまさに、怒髪天を衝くといった感じだ。
というか、こんなに弄ばれている楠木さんは初めて見た……。
「侑と付き合うのは大変でしょ?
こいつ、男のくせに妙に細かいし」
「はぁっ!?
君こそ、綺麗なのは外見だけじゃないか!
あのだらしない部屋、どうにかしろよ!」
これは完全に、痴話喧嘩って奴じゃないのかな。
そしてそれに私を巻き込まないでほしい。
「ガタガタうるさいわねー。
男の作る料理が毎回、どこかのカフェみたいなお洒落料理とか、気持ち悪いのよ」
「どこが気持ち悪いんだ!
僕は美味しそうに見える見た目にもこだわっているだけだ!」
「インスタに上げるわけでもないのに、あんな料理作ってる意味がわかんないのよ!」
「いいだろ、別に!
だいたい、君が気持ち悪がろうと麻里恵が喜んでくれれば僕はそれでいいんだよ!
なあ、麻里恵!?」
「へっ!?」
曖昧に笑って傍観していたところへ話を振られ、変な声が漏れた。
「麻里恵ちゃん、どうなの?」
「あー……」
ふたりの視線が集中し、変な汗が出てくる。
これは正直にお伝えしていいんでしょうか……?
「そう、ですね。
私はお腹に入ればなんでもいいほうなんで、見た目は……」
「ほら!」
腕を組んで勝ち誇っている小長井さんとは反対に、楠木さんは泣きそうになっている。
それに心の中でため息をつきつつ、さらに先を続けた。
「でも、美味しそうな盛り付けは、それはそれで食欲が出るので、はい」
「だろ!」
私と両手を繋ぎ、うん、うんと頷いたあと、じろっ、と楠木さんが小長井さんを睨みつける。
「あーもー、侑ってやっぱり、面倒くさいー。
今日はおとなしく、ホテルに帰るわー。
じゃあね、麻里恵ちゃーん」
彼女は楠木さん――ではなく私に投げキッスをして去っていった。
「……はぁーっ」
小長井さんがいなくなり、楠木さんが精も根も尽き果てたようなため息を吐きだす。
「……疲れた。
帰ろう」
社内だというのに彼は私の手を掴んで歩きだす。
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