求婚されても困ります!~One Night Mistake~

霧内杳/眼鏡のさきっぽ

文字の大きさ
31 / 38
最終章 面倒、だけどいい

4.犬も食わない?

しおりを挟む
「麻里恵、帰るぞ」

楠木さんは私を立たせ、さっさと帰ろうとしているけど、今日、小長井さんは福岡初日なのだ。
どこか食事に連れていったりしなくていいんだろうか。

「あの、小長井さんと食事とか……」

「え?
侑と食事?
遠慮するわー。
麻里恵ちゃんとふたりっきりなら、行くけど」

「え、えーっと……」

両手で私の手を掴み、ふーん、ふーん、と鼻息荒く顔を近づけられたら堪らない。

「だ、れ、が!
君なんかと麻里恵をふたりっきりにするか!」

後ろから伸びてきた手が私を引き寄せ、彼女から引き離す。

「えー、男の独占欲はみっともないわよ?
侑」

「独占欲もなにも!
君と関わるとろくなことにならないからだ!」

楠木さんは完全に私を抱き込み、野生動物バリに小長井さんを警戒している。

「侑、もしかしてあの件、まだ根に持ってるの?
あ、あれじゃなくてこっちかしら?
いつまでもこだわるなんて男が小さいわよ?
別にあれが小さいとは言ってないけど」

「友佳子!」

小長井さんが高らかに笑い、楠木さんはまさに、怒髪天を衝くといった感じだ。
というか、こんなに弄ばれている楠木さんは初めて見た……。

「侑と付き合うのは大変でしょ?
こいつ、男のくせに妙に細かいし」

「はぁっ!?
君こそ、綺麗なのは外見だけじゃないか!
あのだらしない部屋、どうにかしろよ!」

これは完全に、痴話喧嘩って奴じゃないのかな。
そしてそれに私を巻き込まないでほしい。

「ガタガタうるさいわねー。
男の作る料理が毎回、どこかのカフェみたいなお洒落料理とか、気持ち悪いのよ」

「どこが気持ち悪いんだ!
僕は美味しそうに見える見た目にもこだわっているだけだ!」

「インスタに上げるわけでもないのに、あんな料理作ってる意味がわかんないのよ!」

「いいだろ、別に!
だいたい、君が気持ち悪がろうと麻里恵が喜んでくれれば僕はそれでいいんだよ!
なあ、麻里恵!?」

「へっ!?」

曖昧に笑って傍観していたところへ話を振られ、変な声が漏れた。

「麻里恵ちゃん、どうなの?」

「あー……」

ふたりの視線が集中し、変な汗が出てくる。
これは正直にお伝えしていいんでしょうか……?

「そう、ですね。
私はお腹に入ればなんでもいいほうなんで、見た目は……」

「ほら!」

腕を組んで勝ち誇っている小長井さんとは反対に、楠木さんは泣きそうになっている。
それに心の中でため息をつきつつ、さらに先を続けた。

「でも、美味しそうな盛り付けは、それはそれで食欲が出るので、はい」

「だろ!」

私と両手を繋ぎ、うん、うんと頷いたあと、じろっ、と楠木さんが小長井さんを睨みつける。

「あーもー、侑ってやっぱり、面倒くさいー。
今日はおとなしく、ホテルに帰るわー。
じゃあね、麻里恵ちゃーん」

彼女は楠木さん――ではなく私に投げキッスをして去っていった。

「……はぁーっ」

小長井さんがいなくなり、楠木さんが精も根も尽き果てたようなため息を吐きだす。

「……疲れた。
帰ろう」

社内だというのに彼は私の手を掴んで歩きだす。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】京都若旦那の恋愛事情〜四年ですっかり拗らせてしまったようです〜

藍生蕗
恋愛
大学二年生、二十歳の千田 史織は内気な性格を直したくて京都へと一人旅を決行。そこで見舞われたアクシデントで出会った男性に感銘を受け、改めて変わりたいと奮起する。 それから四年後、従姉のお見合い相手に探りを入れて欲しいと頼まれて再び京都へ。 訳あり跡取り息子と、少し惚けた箱入り娘のすれ違い恋物語

雨の日にやさぐれお姉さんを拾ったと思ったら胃袋も心も掴んでくるスーパーお姉さんだった

九戸政景
恋愛
新人小説家の由利美音は、ある日の夜に一人の女性を拾う。太刀川凛莉と名乗る女性との共同生活が始まる中、様々な出会いを果たしながら美音は自身の過去とも向き合っていく。

ホストと女医は診察室で

星野しずく
恋愛
町田慶子は開業したばかりのクリニックで忙しい毎日を送っていた。ある日クリニックに招かれざる客、歌舞伎町のホスト、聖夜が後輩の真也に連れられてやってきた。聖夜の強引な誘いを断れず、慶子は初めてホストクラブを訪れる。しかし、その日の夜、慶子が目覚めたのは…、なぜか聖夜と二人きりのホテルの一室だった…。

久我くん、聞いてないんですけど?!

桜井 恵里菜
恋愛
愛のないお見合い結婚 相手はキモいがお金のため 私の人生こんなもの そう思っていたのに… 久我くん! あなたはどうして こんなにも私を惑わせるの? ━━ʚ♡ɞ━━ʚ♡ɞ━━ʚ♡ɞ━━ 父の会社の為に、お見合い結婚を決めた私。 同じ頃、職場で 新入社員の担当指導者を命じられる。 4歳も年下の男の子。 恋愛対象になんて、なる訳ない。 なのに…?

【完結】あなた専属になります―借金OLは副社長の「専属」にされた―

七転び八起き
恋愛
『借金を返済する為に働いていたラウンジに現れたのは、勤務先の副社長だった。 彼から出された取引、それは『専属』になる事だった。』 実家の借金返済のため、昼は会社員、夜はラウンジ嬢として働く優美。 ある夜、一人でグラスを傾ける謎めいた男性客に指名される。 口数は少ないけれど、なぜか心に残る人だった。 「また来る」 そう言い残して去った彼。 しかし翌日、会社に現れたのは、なんと店に来た彼で、勤務先の副社長の河内だった。 「俺専属の嬢になって欲しい」 ラウンジで働いている事を秘密にする代わりに出された取引。 突然の取引提案に戸惑う優美。 しかし借金に追われる現状では、断る選択肢はなかった。 恋愛経験ゼロの優美と、完璧に見えて不器用な副社長。 立場も境遇も違う二人が紡ぐラブストーリー。

シンデレラは王子様と離婚することになりました。

及川 桜
恋愛
シンデレラは王子様と結婚して幸せになり・・・ なりませんでした!! 【現代版 シンデレラストーリー】 貧乏OLは、ひょんなことから会社の社長と出会い結婚することになりました。 はたから見れば、王子様に見初められたシンデレラストーリー。 しかしながら、その実態は? 離婚前提の結婚生活。 果たして、シンデレラは無事に王子様と離婚できるのでしょうか。

私の婚活事情〜副社長の策に嵌まるまで〜

みかん桜
恋愛
身長172センチ。 高身長であること以外ごく普通のアラサーOL、佐伯花音。 婚活アプリに登録し、積極的に動いているのに中々上手く行かない。 「名前からしてもっと可愛らしい人かと……」ってどういうこと? そんな男、こっちから願い下げ! ——でもだからって、イケメンで仕事もできる副社長……こんなハイスペ男子も求めてないっ! って思ってたんだけどな。気が付いた時には既に副社長の手の内にいた。

【完結】1日1回のキスをしよう 〜対価はチョコレートで 〜

田沢みん
恋愛
ハナとコタローは、 お隣同士の幼馴染。 親から甘いもの禁止令を出されたハナがコタローにチョコレートをせがんだら、 コタローがその対価として望んだのは、 なんとキス。 えっ、 どういうこと?! そして今日もハナはチョコを受け取りキスをする。 このキスは対価交換。 それ以外に意味はない…… はずだけど……。 理想の幼馴染み発見! これは、 ちょっとツンデレで素直じゃないヒロインが、イケメンモテ男、しかも一途で尽くし属性の幼馴染みと恋人に変わるまでの王道もの青春ラブストーリーです。 *本編完結済み。今後は不定期で番外編を追加していきます。 *本作は『小説家になろう』でも『沙和子』名義で掲載しています。 *イラストはミカスケ様です。

処理中です...