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最終章 面倒、だけどいい
8.本当のこと
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「友佳子とのことはなんの心配もいらない。
一晩考えてそれしか麻里恵が怒っている理由が思いつかなかったんだが、他にもあるなら言ってほしい」
「うっ」
真摯に見つめられてたじろいだ。
理由はそれだけれどそれじゃない。
けれどこれを言うのは、好きだと告白するのに等しいわけで。
「え、えーっと。
いい加減出んと、遅刻……」
「麻里恵が熱出したから、病院連れていくから遅くなる、って連絡してある。
そういうわけで今日、麻里恵は休みだ」
「……」
いいのか、こんな理由で仮病を使って休んでも。
まあ、上司がいいと言っているんだからいいか。
「だから言いたいことは全部言え」
レンズの向こうから強い目力が私を射る。
退路は断たれた。
これはもう、腹を括るしかないわけで。
「……楠木さんが、好き、やけん」
私から出た声は、消え入りそうなほどか細かった。
「……楠木さんが好きやけど、あの日、……本当はキスしかしとらんし、……やけん、楠木さんは私と結婚する必要とかないし……」
「……知ってたよ」
そっと、楠木さんの腕が私を包み込む。
「寝起きで混乱してたときはあれだけど、帰ってシャワーを浴びたらおぼろながら記憶も戻ってきたから」
「なら、なんで?
やっぱり、オタクやけん?」
ぽすっ、と楠木さんの顎が私のあたまの上にのる。
「んー?
あの夜、麻里恵だからキスしたかったんだ、……とか言ったらどうする?」
「は?」
「いたっ!」
私が勢いよくあたまを上げたもんだから、彼の顎にゴン、とぶつかった。
「あ、ごめん……」
「いや、いい」
痛む顎を撫でながら、楠木さんは笑っている。
「あの夜、麻里恵だからキスしたいと思ったし、その先だってしたいと思った。
だから迷いなく結婚しようって言ったんだ」
ちゅっ、と優しく、楠木さんの唇が私の額に触れた。
「やけん、なんで?
普通、私とキスしたいとすら思わんやろ?」
「麻里恵は越してきたばかりの僕に、優しくしてくれただろ?
会社でもなんの打算もなく、僕に声をかけてくれた」
「ん、……あ」
ちゅっ、ちゅっ、と口付けの雨が降り続ける。
それが嫌じゃなくて……心地いい。
「それは私が、世話やきってだけで……」
「それでも僕は嬉しかったし、それに変なのに絡まれた面倒くさい、とか思いながらも邪険にしないでちゃんと僕の相手してくれたし」
「うっ」
にやり、と右の口端だけを上げて意地悪く楠木さんが笑う。
知っていたんなら、もうちょっとどうかしてくれてもよかったのに!
「言っただろ、誰がなんと言おうと僕からしたら麻里恵は可愛くて仕方ない、って。
化粧もしない、スカートも穿かない麻里恵が僕にとって可愛いんだから、なにも気にしなくていい」
眼鏡の下で目尻を下げ、うっとりと笑った彼の手が私の頬に触れる。
一晩考えてそれしか麻里恵が怒っている理由が思いつかなかったんだが、他にもあるなら言ってほしい」
「うっ」
真摯に見つめられてたじろいだ。
理由はそれだけれどそれじゃない。
けれどこれを言うのは、好きだと告白するのに等しいわけで。
「え、えーっと。
いい加減出んと、遅刻……」
「麻里恵が熱出したから、病院連れていくから遅くなる、って連絡してある。
そういうわけで今日、麻里恵は休みだ」
「……」
いいのか、こんな理由で仮病を使って休んでも。
まあ、上司がいいと言っているんだからいいか。
「だから言いたいことは全部言え」
レンズの向こうから強い目力が私を射る。
退路は断たれた。
これはもう、腹を括るしかないわけで。
「……楠木さんが、好き、やけん」
私から出た声は、消え入りそうなほどか細かった。
「……楠木さんが好きやけど、あの日、……本当はキスしかしとらんし、……やけん、楠木さんは私と結婚する必要とかないし……」
「……知ってたよ」
そっと、楠木さんの腕が私を包み込む。
「寝起きで混乱してたときはあれだけど、帰ってシャワーを浴びたらおぼろながら記憶も戻ってきたから」
「なら、なんで?
やっぱり、オタクやけん?」
ぽすっ、と楠木さんの顎が私のあたまの上にのる。
「んー?
あの夜、麻里恵だからキスしたかったんだ、……とか言ったらどうする?」
「は?」
「いたっ!」
私が勢いよくあたまを上げたもんだから、彼の顎にゴン、とぶつかった。
「あ、ごめん……」
「いや、いい」
痛む顎を撫でながら、楠木さんは笑っている。
「あの夜、麻里恵だからキスしたいと思ったし、その先だってしたいと思った。
だから迷いなく結婚しようって言ったんだ」
ちゅっ、と優しく、楠木さんの唇が私の額に触れた。
「やけん、なんで?
普通、私とキスしたいとすら思わんやろ?」
「麻里恵は越してきたばかりの僕に、優しくしてくれただろ?
会社でもなんの打算もなく、僕に声をかけてくれた」
「ん、……あ」
ちゅっ、ちゅっ、と口付けの雨が降り続ける。
それが嫌じゃなくて……心地いい。
「それは私が、世話やきってだけで……」
「それでも僕は嬉しかったし、それに変なのに絡まれた面倒くさい、とか思いながらも邪険にしないでちゃんと僕の相手してくれたし」
「うっ」
にやり、と右の口端だけを上げて意地悪く楠木さんが笑う。
知っていたんなら、もうちょっとどうかしてくれてもよかったのに!
「言っただろ、誰がなんと言おうと僕からしたら麻里恵は可愛くて仕方ない、って。
化粧もしない、スカートも穿かない麻里恵が僕にとって可愛いんだから、なにも気にしなくていい」
眼鏡の下で目尻を下げ、うっとりと笑った彼の手が私の頬に触れる。
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