契約書は婚姻届

霧内杳/眼鏡のさきっぽ

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第14話 お姉ちゃん?

2.ふたりの野々村

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「朋香!」

フレンチトーストと添えられたたっぷりの生クリームにフルーツという、朝食というかもうすっかり昼食になってしまった食事をとっていると、慌ただしい足音とともにやってきた人に驚いた。

「侑岐さん!?」

「あーん、朋香、大変だったわねー」

「ぐふっ」

食べたものが逆流してきそうな勢いで抱きつかれ、思わず変な声が出る。

「苦労したんでしょうね、肌、荒れ放題じゃない」

「えっと……」

べたべたと顔をさわられ、苦笑いしかできない。

「ごめんなさい、まだ食事中だったわね。
野々村、私にもコーヒーちょうだい」

「かしこまりました」

一礼すると執事の男が出て行った。
侑岐は隣の椅子に座り直すと、皿の上のブルーベリーを摘んで朋香に差し出してくる。

「あーん」

「え、えっと……」

「ほら朋香、口開けて。
あーん」

困惑気味の朋香にかまうことなく、にっこりと笑って侑岐はブルーベリーを差し出してくる。
渋々口を開けると朋香は、そのブルーベリーを口に入れてもらった。

「あのー、さっき、野々村って」

ただの同姓だといわれればそうかもしれないが、執事の男は年齢的にはちょうど、野々村の息子くらいだ。

「ああ、彼、尚一郎のところの、野々村の息子なのよ。
それで、尚恭おじさまの異母弟。
……あーん」

「あー……って!
はいっ!?」

「朋香ー、しっかり食べなきゃ。
前々からちょっと細いとは思ってたけど、ここしばらくでさらに細くなってるんだから。
ちゃんと食べないと抱き心地が悪いって、尚一郎に嫌われちゃうわよ?」

「は、はい……」

切ったフレンチトーストにたっぷりとクリームを乗せて差し出され、仕方なく口に入れる。

前からそんな気はしていたが、侑岐もやっぱり尚一郎と一緒で、溺愛体質なんだろうか。

いや、問題はそこではない。

執事の男が達之助と野々村とのあいだの子供だということだ。

「こっちの野々村さんにお子さんは……」

口に突っ込まれるフォークに、おとなしく口をもぐもぐと動かす。
野々村は侑岐にコーヒーを出すとそのまま控えているので、つい声は抑えめになる。

「朋香。
この話はあとでしましょう?
じゃないと食事がまずくなるわ」

「……はい」

しゃべるなとでもいうのか、続けざまにフルーツとフレンチトーストを口に押し込まれ、食事が終わるまで結局、なにも尋ねることはできなかった。
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