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第15話 社長秘書
2.義父
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今日、お昼につれてこられたのは近くの蕎麦屋だった。
なんでも、昼限定の親子丼があるらしい。
はじめは普通にカウンターに案内されかけたが、尚恭に気付いた店主が慌てて個室へと案内させた。
「申し訳ありません。
彼女はまだ、日が浅いもので」
「いえ、気にしなくていいですよ。
そもそもカウンターのみの昼間に、無理に個室を開けていただいてる私が悪いんですから」
恐縮しきる女将に尚恭は何事もないように笑っている。
毎回、そうだ。
取るに足らない些細な失敗はいつも、尚恭は笑って許してしまう。
そういうところはとても好感が持てると朋香は思っていた。
すぐに、親子丼が運ばれてきた。
とろとろの玉子に、蕎麦屋秘伝の出汁がしみたしっかりと噛みごたえのあるもも肉と淡泊な胸肉がよく絡み、何杯でもいけそうな気がする。
「そういえば先ほどのお客様、朋香さんは私の義娘だと云ったら、うらやましがってましたよ」
「……ありがとうございます」
嬉しそうに、眼鏡の奥の目が細くなる尚恭に心の中ではぁっ、と小さくため息をついた。
尚恭の秘書として働くようになって、なにかと尚恭は朋香を自慢したがる。
可愛がってくれているのは嬉しいが、複雑な気分だ。
昼食を終えて会社に戻ると、部屋に入るよりも早く寺本が飛んできた。
「藤井室長がおみえになっています。
朋香さんは避難した方が」
藤井、その名が出たとたんに尚恭も加賀も、渋い顔になる。
朋香も不安になって、おろおろとしてしまう。
「わかった。
朋香さんは応接室へ」
「……はい」
まるでかばうかのように尚恭に肩を抱かれて応接室に入った。
勧められてソファーに座ったものの、小さく背中を丸めてしまう。
「きっと、たわいのない用事ですよ。
少々ここで、待っていてくださいね」
「……はい」
安心させるようにか、にっこりと笑った尚恭に、少しだけ気持ちが落ち着いた。
ここしばらくオシベの会社の入ってわかったことだが、現在のオシベグループは二つに分かれているらしい。
旧体制然として強引に物事を押し進める達之助派と、新しいものを取り込み柔軟な態度の尚恭派。
尚一郎が達之助派でないのはわかるが、そうかといって尚恭派かというと、わからない。
とにかく、二つの派閥の対立は深刻化していて、同じビルにいたくないがためにわざわざ新社屋を建てて達之助は会長室をそちらに移しているほどだ。
ちなみに加賀と寺本は秘書室から出向という形で尚恭についている。
もちろん、尚恭派の人間だ。
反対に秘書室室長の藤井は達之助派で、達之助の秘書として働いている。
「またお祖父さん、なにか云ってきたのかな……」
尚恭の秘書初日、どこから聞きつけたのか、達之助の使いとして藤井がきた。
尚恭の秘書として働くのなら、自分の秘書として働けというのだ。
しかし、きっぱりと尚恭に断られた上に追い返された。
その後もしぶとく、ちょこちょこと藤井を寄越してくる。
「いい加減、諦めてくれないかな……」
朋香の苦悩は、深い。
ソファーの上で膝を抱えて丸くなっていると、一時間ほどして寺本が顔を出した。
「朋香さん、お茶にしましょう?
尚恭社長がケーキを買ってきてくださったから」
「はい」
俯いていた顔を上げる。
うじうじ考えていても仕方ない。
自分はいまできることを精一杯するのみ、だ。
なんでも、昼限定の親子丼があるらしい。
はじめは普通にカウンターに案内されかけたが、尚恭に気付いた店主が慌てて個室へと案内させた。
「申し訳ありません。
彼女はまだ、日が浅いもので」
「いえ、気にしなくていいですよ。
そもそもカウンターのみの昼間に、無理に個室を開けていただいてる私が悪いんですから」
恐縮しきる女将に尚恭は何事もないように笑っている。
毎回、そうだ。
取るに足らない些細な失敗はいつも、尚恭は笑って許してしまう。
そういうところはとても好感が持てると朋香は思っていた。
すぐに、親子丼が運ばれてきた。
とろとろの玉子に、蕎麦屋秘伝の出汁がしみたしっかりと噛みごたえのあるもも肉と淡泊な胸肉がよく絡み、何杯でもいけそうな気がする。
「そういえば先ほどのお客様、朋香さんは私の義娘だと云ったら、うらやましがってましたよ」
「……ありがとうございます」
嬉しそうに、眼鏡の奥の目が細くなる尚恭に心の中ではぁっ、と小さくため息をついた。
尚恭の秘書として働くようになって、なにかと尚恭は朋香を自慢したがる。
可愛がってくれているのは嬉しいが、複雑な気分だ。
昼食を終えて会社に戻ると、部屋に入るよりも早く寺本が飛んできた。
「藤井室長がおみえになっています。
朋香さんは避難した方が」
藤井、その名が出たとたんに尚恭も加賀も、渋い顔になる。
朋香も不安になって、おろおろとしてしまう。
「わかった。
朋香さんは応接室へ」
「……はい」
まるでかばうかのように尚恭に肩を抱かれて応接室に入った。
勧められてソファーに座ったものの、小さく背中を丸めてしまう。
「きっと、たわいのない用事ですよ。
少々ここで、待っていてくださいね」
「……はい」
安心させるようにか、にっこりと笑った尚恭に、少しだけ気持ちが落ち着いた。
ここしばらくオシベの会社の入ってわかったことだが、現在のオシベグループは二つに分かれているらしい。
旧体制然として強引に物事を押し進める達之助派と、新しいものを取り込み柔軟な態度の尚恭派。
尚一郎が達之助派でないのはわかるが、そうかといって尚恭派かというと、わからない。
とにかく、二つの派閥の対立は深刻化していて、同じビルにいたくないがためにわざわざ新社屋を建てて達之助は会長室をそちらに移しているほどだ。
ちなみに加賀と寺本は秘書室から出向という形で尚恭についている。
もちろん、尚恭派の人間だ。
反対に秘書室室長の藤井は達之助派で、達之助の秘書として働いている。
「またお祖父さん、なにか云ってきたのかな……」
尚恭の秘書初日、どこから聞きつけたのか、達之助の使いとして藤井がきた。
尚恭の秘書として働くのなら、自分の秘書として働けというのだ。
しかし、きっぱりと尚恭に断られた上に追い返された。
その後もしぶとく、ちょこちょこと藤井を寄越してくる。
「いい加減、諦めてくれないかな……」
朋香の苦悩は、深い。
ソファーの上で膝を抱えて丸くなっていると、一時間ほどして寺本が顔を出した。
「朋香さん、お茶にしましょう?
尚恭社長がケーキを買ってきてくださったから」
「はい」
俯いていた顔を上げる。
うじうじ考えていても仕方ない。
自分はいまできることを精一杯するのみ、だ。
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