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最終話 契約書は婚姻届
4.決戦
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尚一郎が工場を訪れる前日、朋香は病院を訪れていた。
「おめでとうございます。
妊娠五週目です」
「そうですか……」
ここのところ忙しくて気にしてなかったが、生理が遅れていた。
昨日、もしかしてと思って市販の検査キットを使うと陽性反応が出た。
「尚一郎さんは喜んでくれるのかな……」
別れる前、あんなに朋香が妊娠していると決めつけ、扱っていたのはきっと、尚一郎の願望なんじゃないだろうか。
朋香と、家族を持つことを夢見ていたから。
だから、もうすぐ終わりがくるとわかっていたからこそ、ああいう態度をとっていたんじゃないか。
「尚一郎さん。
私たちの子供ですよ。
喜んでくれますよね?
あんなに、待ってたんだから……」
そっとおなかを撫でると涙が出てくる。
――明日。
すべてが決まる。
社長室で、明夫の隣に緊張して座っていた。
明夫の隣には和解の話もあるので丸尾が控えている。
昨晩は子供のためにもちゃんと寝なくちゃいけないとわかっていながら、一睡もできなかった。
「押部CEOがお見えです」
案内してきた女子事務員の声に、ソファーから慌て立ち上がる。
「本日はありがとうございました」
部屋に入ってきた尚一郎は朋香を目に留めると一瞬、足を止めたが、すぐに何事もないかのように勧められたソファーに座った。
その隣に羽山が座り、後ろに立った犬飼は朋香と目が合うと、短く頷いた。
「いえ、こちらこそわざわざご足労、ありがとうございます」
にこやかに笑っている尚一郎は、どこか人を寄せ付けないように気を張っているように見えた。
そんなところもまた、朋香を悲しくさせる。
「それで。
こちらの謝罪を受け入れ、和解に応じてくださるということで、本当にありがとうございます」
「それが、その、……一つ条件がありまして」
「は?」
慇懃にあたまを下げた尚一郎だったが、驚いたのかぱっと勢いよくあたまを上げた。
「……朋香」
明夫に促され、小さく深呼吸をすると朋香は口を開いた。
「はい。
……私と、再婚してください。
これが和解に応じる条件です」
「……っ」
震える朋香の声に合わせて丸尾が置いた書類に、苦しげに尚一郎の顔が歪む。
目の前に置かれたのは婚姻届だった。
妻の欄にはもちろん、朋香の名前が記載してある。
保証人の欄にも明夫と尚恭のサインがしてあった。
明夫は渋ることなくサインしてくれたし、――尚恭も。
「おめでとうございます。
妊娠五週目です」
「そうですか……」
ここのところ忙しくて気にしてなかったが、生理が遅れていた。
昨日、もしかしてと思って市販の検査キットを使うと陽性反応が出た。
「尚一郎さんは喜んでくれるのかな……」
別れる前、あんなに朋香が妊娠していると決めつけ、扱っていたのはきっと、尚一郎の願望なんじゃないだろうか。
朋香と、家族を持つことを夢見ていたから。
だから、もうすぐ終わりがくるとわかっていたからこそ、ああいう態度をとっていたんじゃないか。
「尚一郎さん。
私たちの子供ですよ。
喜んでくれますよね?
あんなに、待ってたんだから……」
そっとおなかを撫でると涙が出てくる。
――明日。
すべてが決まる。
社長室で、明夫の隣に緊張して座っていた。
明夫の隣には和解の話もあるので丸尾が控えている。
昨晩は子供のためにもちゃんと寝なくちゃいけないとわかっていながら、一睡もできなかった。
「押部CEOがお見えです」
案内してきた女子事務員の声に、ソファーから慌て立ち上がる。
「本日はありがとうございました」
部屋に入ってきた尚一郎は朋香を目に留めると一瞬、足を止めたが、すぐに何事もないかのように勧められたソファーに座った。
その隣に羽山が座り、後ろに立った犬飼は朋香と目が合うと、短く頷いた。
「いえ、こちらこそわざわざご足労、ありがとうございます」
にこやかに笑っている尚一郎は、どこか人を寄せ付けないように気を張っているように見えた。
そんなところもまた、朋香を悲しくさせる。
「それで。
こちらの謝罪を受け入れ、和解に応じてくださるということで、本当にありがとうございます」
「それが、その、……一つ条件がありまして」
「は?」
慇懃にあたまを下げた尚一郎だったが、驚いたのかぱっと勢いよくあたまを上げた。
「……朋香」
明夫に促され、小さく深呼吸をすると朋香は口を開いた。
「はい。
……私と、再婚してください。
これが和解に応じる条件です」
「……っ」
震える朋香の声に合わせて丸尾が置いた書類に、苦しげに尚一郎の顔が歪む。
目の前に置かれたのは婚姻届だった。
妻の欄にはもちろん、朋香の名前が記載してある。
保証人の欄にも明夫と尚恭のサインがしてあった。
明夫は渋ることなくサインしてくれたし、――尚恭も。
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