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第10話 私の帰る場所
5.誰のもの?
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場所を変えると決まったまではよかったが、どっちの車に乗るかでまた揉めた。
「朋香は私と一緒に行くの!
ねえ、朋香?」
「は?
なに云ってるんだい?
君と朋香を一緒になんてさせられるわけないだろう?」
「私よね!」
「僕だよね!」
云い争いを半ば呆れてみていた朋香だが、突然、決断を迫られて慌ててしまう。
「えっと。
……尚一郎さんで」
「ほら!」
勝ち誇って笑う尚一郎に侑岐は親指の爪を悔しそうにぎりぎりと噛んでいる。
……が。
正直に云えば、侑岐の急発進と急ブレーキを繰り返す運転が怖いだけの朋香だった。
駐車場に止めてあったベンツに高橋はいなかった。
「あれ?
高橋さんは?」
「あー……。
慌ててたから高橋から鍵を奪って、ひとりで来たんだよね……」
ばつが悪そうに笑う尚一郎に、黙って車に乗る。
そんなことをされれば、犬飼はなおのこと心配だっただろう。
けれど。
……そんなに私が心配だったんだ。
そう気付くと嬉しくて、朋香は緩みそうな顔を必死に引き締めた。
車の中ではずっと無言だった。
ちらちらと尚一郎がなにか云いたそうにこちらを窺うが、不機嫌なフリをした。
すでに尚一郎を許していたが、十分反省してから迎えにくると云ったのは尚一郎だ。
どう反省したのかは気になる。
犬飼の手配してくれた料亭で落ち合った。
仲居がふすまを閉め、三人になった途端に侑岐が口を開く。
「尚一郎。
朋香を私にちょうだい?」
侑岐がなにを云っているのかわからない。
尚一郎はまた、侑岐から庇うように朋香を抱きしめると、ぐるるるっと歯をむき出しにした犬のように警戒している。
「だって朋香、可愛いし。
達之助おじいさまに苛められても尚一郎を一途に思い続けてるなんて、健気だし。
気に入っちゃったの。
だから、私にちょうだい?」
「朋香は僕のものだって何度も云ってるだろ!」
朋香を置いてけぼりで早くも第二ラウンドのゴングが鳴った。
「だいたい、侑岐にはメグがいるだろ。
いいのかい、メグに云ったって」
「右手にマーガレット、左手に雛菊ってよくない?
きっとメグだって、すぐに朋香と仲良くなるわ」
きっとメグは侑岐の恋人なのだろう。
薄々そんな気がしていた、侑岐は女性が好きなんじゃないかって。
まあ、知ったところで多少の驚きはあったが、嫌悪感など少しも抱かなかったが。
「だから、朋香は僕のものだ。
絶対に渡さない」
「えー、だって甲斐性なしの尚一郎にはもったいないわ」
「誰が甲斐性なしだって?」
「尚一郎が。
だってそうでしょ?
あの家が嫌いなくせに、出ていく勇気もないんだもの」
「僕にだっていろいろあるんだよ」
「じゃあ私と結婚しましょう?」
「朋香は私と一緒に行くの!
ねえ、朋香?」
「は?
なに云ってるんだい?
君と朋香を一緒になんてさせられるわけないだろう?」
「私よね!」
「僕だよね!」
云い争いを半ば呆れてみていた朋香だが、突然、決断を迫られて慌ててしまう。
「えっと。
……尚一郎さんで」
「ほら!」
勝ち誇って笑う尚一郎に侑岐は親指の爪を悔しそうにぎりぎりと噛んでいる。
……が。
正直に云えば、侑岐の急発進と急ブレーキを繰り返す運転が怖いだけの朋香だった。
駐車場に止めてあったベンツに高橋はいなかった。
「あれ?
高橋さんは?」
「あー……。
慌ててたから高橋から鍵を奪って、ひとりで来たんだよね……」
ばつが悪そうに笑う尚一郎に、黙って車に乗る。
そんなことをされれば、犬飼はなおのこと心配だっただろう。
けれど。
……そんなに私が心配だったんだ。
そう気付くと嬉しくて、朋香は緩みそうな顔を必死に引き締めた。
車の中ではずっと無言だった。
ちらちらと尚一郎がなにか云いたそうにこちらを窺うが、不機嫌なフリをした。
すでに尚一郎を許していたが、十分反省してから迎えにくると云ったのは尚一郎だ。
どう反省したのかは気になる。
犬飼の手配してくれた料亭で落ち合った。
仲居がふすまを閉め、三人になった途端に侑岐が口を開く。
「尚一郎。
朋香を私にちょうだい?」
侑岐がなにを云っているのかわからない。
尚一郎はまた、侑岐から庇うように朋香を抱きしめると、ぐるるるっと歯をむき出しにした犬のように警戒している。
「だって朋香、可愛いし。
達之助おじいさまに苛められても尚一郎を一途に思い続けてるなんて、健気だし。
気に入っちゃったの。
だから、私にちょうだい?」
「朋香は僕のものだって何度も云ってるだろ!」
朋香を置いてけぼりで早くも第二ラウンドのゴングが鳴った。
「だいたい、侑岐にはメグがいるだろ。
いいのかい、メグに云ったって」
「右手にマーガレット、左手に雛菊ってよくない?
きっとメグだって、すぐに朋香と仲良くなるわ」
きっとメグは侑岐の恋人なのだろう。
薄々そんな気がしていた、侑岐は女性が好きなんじゃないかって。
まあ、知ったところで多少の驚きはあったが、嫌悪感など少しも抱かなかったが。
「だから、朋香は僕のものだ。
絶対に渡さない」
「えー、だって甲斐性なしの尚一郎にはもったいないわ」
「誰が甲斐性なしだって?」
「尚一郎が。
だってそうでしょ?
あの家が嫌いなくせに、出ていく勇気もないんだもの」
「僕にだっていろいろあるんだよ」
「じゃあ私と結婚しましょう?」
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