前代未聞のダンジョンメーカー

黛 ちまた

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第一章 新しい生活の始まり

001-3

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「なんだ、女将」

「アタシじゃなくてね、この子、アシュリーって言うんだけど、アシュリーが聞きたい事があるんだってさ」

 どん!と背中を叩かれて、あまりの強さに咳き込んだ。

「何だ?」

 騎士の目が僕をじっと見つめる。
 うぅ、怖い…。怖いけど、これはもう、覚悟を決めるしかないのかも。
 だって僕がいつもしてる質問を女将さんは知ってるし、僕が適当な事言っても、騙せないから。

「あ、あの、騎士様は、ダンジョンメーカーというスキルを、ご存知ですか?」

 二人の顔がぴくり、と動く。

 ひっ。僕、なんかいけない質問した?!

「何故、そんな事を聞く?」

 さっきよりも低くなった声が、騎士からかけられる。
 騎士の隣に立つ魔法使いのような人が、騎士に声をかける。

「ちょっと待って、クリフ、この子、ダンジョンメーカー持ちみたいだよ」

「何?!」

「とは言っても、魔力量が高くないから、大した事は出来なさそうだけど」

 魔法使いの人、僕の持ってるスキルが見えるの?!

 驚いている僕に、魔法使いの人は申し訳なさそうな顔で謝罪を口にした。

「ごめんね、勝手に見て。普通は知らないスキルを口にするからさ」

「い、いえ。あの、僕、このスキルが一体何なのか分からなくて、それで村に来る人に聞いていたんです。
ご存知だったら教えて欲しいんですが、ダンジョンメーカーって、何をするスキルなんですか?」

 場所を変えようか、と言われて、3人でテーブルに座ると、騎士の人が僕の為に飲み物を頼んでくれた。
 遠慮したんだけど、さっき驚かせてしまったお詫びだからと言われた。
 いい人!

 魔法使いの人がしてくれた説明によると。
 ダンジョンメーカーというスキルは、ダンジョンという、亜空間を作り出せるというもので、魔力量が多ければ多いほど広く、深い、複雑な構造のものを作り出せるらしい。
 かつていたこのスキルの持ち主は大層な魔力の持ち主で、恐ろしい大きさのダンジョンを作り、しかもそこに魔物を放つという事をしたらしい。
 魔物は決してダンジョンから出ては来なかったらしいけど、それはどうやら結界のような物が張られていたから問題なかったらしく、その結界が破れてしまった為、そのダンジョンから魔物が出て来て、大変なんだって。
 どうも、魔物の住む世界とダンジョンをつなぐ魔法陣があって、倒しても倒してもその魔法陣から魔物がやって来てしまって、キリがないらしい。
 数年前に結界が張り直されたお陰で、魔物がダンジョンから溢れて来る事はもうないみたい。
 ただ、一時期溢れ出た魔物達から採れた皮や角といった物を求めて、冒険者達に討伐依頼が出るらしい。

 そんな事が出来るのかー、と思いながら聞いていたら、魔法使いの人が申し訳なさそうに言った。

「さっきも言ったけど、多分アシュリーには無理だと思う。
あの…色々スキルを持っているみたいだけど、どれもそれ程ではないから…」

 事実とは言え、改めて言われると凹む。

「ご、ごめんね。気を悪くしないでね」

「いえ、事実なので大丈夫です」

「以前そのダンジョンを作ったのはクロウリーという魔術師であり、ダンジョンメーカーだったんだよ」

 魔術師?魔法とは違うの?

 よっぽど僕が分かってない顔をしていたんだと思う。魔法使いの人が説明してくれた。

「えっとね、アシュリーも魔法をちょっとは使えると思うけど、それって大気中にあるエーテルを集めて使用するから、そのエーテルが無い場所では使えなかったりするんだよ。火山で水の魔法使おうとしても無理なんだよね。
だけど、精霊と契約していたりすると使える。だから僕のような魔法使いは複数の精霊と契約をして、魔法を使わせてもらうんだよ。日常使いするような魔法なら、精霊と契約する必要はないけどね。
魔術師っていうのは、魔力を込めた魔術符や陣を用いて魔法と同じ効果を発現させる者たちの事を言うんだけど、かなり高度な技術を要するから、数は少ないね。魔道具なんかを作ったりもする」

「へーっ」

 色んなスキルがあるんだなぁ。

「それで、アシュリーは今後どうやって身をたてていくの?」

「僕のスキル、全部中途半端で、なんとか出来るのは料理ぐらいなんですけど、この村で料理屋を開いても誰も来ないだろうし…。
テイム出来るのも牛とか鶏ぐらいで、魔法も攻撃出来るような威力も無いしで、どうしていいやら、途方に暮れてます」

 あはは、と力無く笑ったら、騎士の人が言った。

「それなら、王宮の調理場で働けば良い。
ちょうど見習いが辞めたばっかりで、人が足りないってボヤいてたからな」

「あぁ、それはいいかもね。料理の基本的な事が覚えられるだろうし、将来的に自分の店を持つのもいいし」

「えっ、そ、そんな、僕なんかが王宮の調理場で働いていいんでしょうか?!」

「誓約書は書かされるだろうが、問題ないだろう」

 魔法使いの人が困ったように言った。

「ちょっと言いづらい事だけど…アシュリーの持つその、ダンジョンメーカーというスキルはね、悪用される恐れがあるから、出来たら王宮で保護させてもらえると嬉しいんだよね」

 悪用?
 でも僕の魔力じゃ大した大きさのダンジョンは作れないって…。

「亜空間を作れれば、破落戸ゴロツキを匿う事だって出来ちゃうでしょ?別にダンジョンでなければいけないって訳じゃないからさ」

 なるほど。僕には思いつかなかったけど、確かにそういった使い方も考えられるんだなぁ。
 みんな頭いいなぁ。

「そうと決まれば、親御さんに会わせてもらっていいかな?僕達、明日の早朝にはこの村を発つつもりでいるからさ」

「お二人も王都に向かうんですか?」

 二人は、あ、と声に出して言うと、騎士の人が僕に向かって言った。

「オレはクリフォード・フォン・ジャーメイン。
騎士団の副団長を務めている。クリフと呼んでくれ」

 魔法使いの人は、にこっと微笑んだ。

「僕はノエル・オブディアン。魔法師団の副長をしてるんだよ、これでも。ノエルでいいよ」

 クリフさんとノエルさんを連れて家に帰ったら、父さんも母さんもぽかんとしていた。
 それから、ノエルさんが僕のスキルの事を説明してくれて、王家の監視下に置かねばならないと言った。

 父さんと母さんは何度も二人に頭を下げて、僕の事をよろしくお願いします、と言ってくれた。
 母さんは僕の事をぎゅっと抱きしめて泣いた。
 まさか、この村を出る事になるなんて、思ってもみなかった。
 ずっと、この村でそれっぽいスキルを手にして、生きていくんだと思っていたから。
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