前代未聞のダンジョンメーカー

黛 ちまた

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第一章 新しい生活の始まり

009-3

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 ラズロさんに連れられて城を出た僕は、大通りから一本内側に入った場所にある市場に連れて来てもらった。
 この前の買い出しの時には来なかった場所だ。
 あちこちからお客さんを呼びこもうとする声がする。
 人の通りも多い。にぎやか!

「あんまキョロキョロしてっとはぐれるぞ」

「あ、はい」

 分かってるんだけど、見るもの全部が目新しくて、つい目がいっちゃう。
 そんな僕の様子にラズロさんは笑った。

「アシュリーの文字の勉強の為にも、買い物は一緒に来るようにするか」

「本当ですか?! 嬉しいです!」

 にっ、と笑ってラズロさんは僕の頭をぽんぽんと叩く。

「買い物の基本は、季節の物を買う事だ。安いだけじゃねぇし、栄養価も高いからな」

 身体に良いのは知ってたけど、そうか、値段も安くなるのか。そうだよね。季節だから沢山獲れるんだもんね。

「今は北から海鮮物が王都に入って来る。冬になれば北の連中は雪が多くなってこっちに来れなくなるからな。今が稼ぎ時だ」

 村も雪が沢山降ったけど、王都の北の国も雪深いんだね。王都に来れなくなるぐらい雪が凄いなんて。

 ここだ、と言ってラズロさんが立ち止まったお店では、見たこともない食材が所狭しと並んでいた。
 魚がいっぱい!
 川や湖、沼なんかで獲れる魚があるから、魚自身は見たことあるけど、大きさが全然違う。倍は大きいんじゃないかな。
 それに、川と違って、塩っぽい、なんかちょっと生臭い?においがする。

「ぅわぁ……!」

「ラズロ! 今日は良いのがたっぷり入ってるよ! 見てっとくれ!」

「おぅ!」

 顔馴染みらしい女将さんがラズロさんに話しかける。
 女将さんの視線が僕に向いたので、お辞儀した。

「ラズロ、あんた、いつ結婚したんだい? それにしては大きいねぇ……昔の女が連れて来た隠し子かい?!」

「違うに決まってんだろ! オレはまだ独り身だ!」

 ラズロさんは僕の肩を叩いて、女将さんに紹介してくれた。

「こいつはアシュリー。城の食堂で見習いとして働き始めたんだ。これからは買い出しに来る事もあるだろうから、よろしくな」

 女将さんはにこにこしながら僕の頭を撫でる。
 きっと、年齢より下に見られている気がする。

「あたしはここで商売をやってるデボラだよ」

 改めてお辞儀をする。

「初めまして、デボラさん。アシュリーといいます」

 目をぱちぱちさせたデボラさんは、ラズロさんを見て言った。

「間違いない、ラズロの子では無いね。こんなに良い子がラズロの子の筈ないからね」

 ラズロさん、日頃一体どんな生活をすると、ここまで言われちゃうの……?

「何言ってんだよ。オレに息子が出来たら、アシュリーのように良い子に育つに決まってんだろ。当然父親似だ」

 デボラさんはあっはっはと笑うと、ラズロさんの発言を無視して、僕の頭を撫でる。

「ラズロと真逆のことをやってれば、きっと良い男になれるからね、アシュリーは真似しないようにするんだよ」

 ……ラズロさん……?

「アシュリー? 何でそんな目でオレを見るんだよ?
オレは酒と自由と女を愛してる善良な王都民だぞ?」

 ここで賭け事が入らなかっただけ、良いのカナ……。
 町に行く事になった兄さんに、父さんが口を酸っぱくして、賭け事は絶対にやるな、って言ってた。
 何だったかな……えーと……。

「ノム ウツ カウ……?」

 デボラさんが鬼の形相になってラズロさんを、バシバシ叩き始めた。

「ラズロ! あんたこんな小さい子に何てこと教えてんだい!」

「オレは教えてねぇよ!」

「デボラさんっ、誤解ですっ!」

 慌てて止めると、ラズロさんを叩く手が止まった。

「ごめんなさい。前に父さんが言っていた言葉を思い出しただけなんです。ラズロさんから教わったんじゃないです。ラズロさんもごめんなさい……」

 うっかり思い出した言葉を口にした所為で、かなり激しく叩かれてた……。
 痛かったらしく、叩かれた場所をさするラズロさんと、豪快に笑って誤魔化すデボラさん。

「悪ぃ悪い、ラズロ。お詫びにたっぷり買っていっとくれよ!」

 ……お詫び……?

「さっさと買って帰ろう、アシュリー。このままだと骨が折られそうだ」

 僕の言葉選びが悪かった所為で、散々な目に遭わせてしまった。
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