前代未聞のダンジョンメーカー

黛 ちまた

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第一章 新しい生活の始まり

013-4

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 次々と運ばれて来る料理で、テーブルはあっという間に埋め尽くされた。
 新年を迎える時と、スキルを神様からもらう時ぐらいしか、こんなに沢山の料理が並ぶ事はなかったから、それだけで僕の胸はワクワクしてしまった。

「アシュリー、コレ美味いぞー」

「こっちも美味しいよ、アシュリー」

 ラズロさんとノエルさんが僕のお皿にどんどん料理をのせていくから、食べるのに一生懸命で会話に参加する余裕はなかった。
 二人とも有名なのか、ひっきりなしに色んな人が来て話をしていった。男の人も、女の人も、とにかくいっぱい。

「おなか、いっぱいです」

「もうか? まだまだ美味いもんいっぱいあるぞ?」

 酔って来てご機嫌なラズロさんが肩に手を回して来た。

「もうちょっとでステージが始まるぞ」

「ステージ?」

「旅の吟遊詩人だったり、踊り子だったりな、日によって違う奴等が、ほら、あそこで」

 ラズロさんが指差した先には丸い台があった。踊るだけあって、結構大きめの台だ。

「歌ったり踊ったりすんだよ」

「へぇーっ!」

 村にも旅人は寄る事があったけど、芸を披露する人は見た事ない。

「芸が終わって、良かったと思ったら拍手すんだぞ。袋やら帽子を持ってテーブルの間を歩くから、気持ち入れてやるんだ」

 気持ち?

「二人とも、始まるよ」

 お店の奥から、着飾ったキレイな女の人が出て来て、台の上に乗った。楽器を持ってる。自由になる方の手でスカートを少しだけ持ち上げると、ゆっくりとお辞儀をして、椅子に腰掛けた。楽器を抱くように膝の上にのせる。
 村でもお祭りには楽器を弾く事もあったけど、初めて見る形だ。
 その女の人は色白で、切れ長の目をしている。微笑むと優しく見える。
 さっきまで賑やかだったお店の中は、水を打った様に静かになっていた。
 女の人の指が楽器の弦に触れると、ポロン、と少し物悲しい音がした。それから、透き通るような声で歌い出す。
 歌詞は分からなかった。見た目からして、この国の人じゃないのかも知れない。
 続けて5曲歌い終えると、女の人は立ち上がってお辞儀をした。みんなが拍手する。僕も拍手する。とても、ステキな歌だった。女の人は台から降りると、袋を持ってテーブルの間を歩いて回る。みんなが声をかけながらお金を入れている。なるほど! 気持ちって、お金の事だったんだ。
 僕達のいるテーブルに回って来たから、袋にお金を入れようとしたら、女の人に首を振られた。

「子供からはもらえないわ」

 ステキな歌だったから、もらって欲しかったのに。残念……。

 ラズロさんが銀貨を入れた。おぉ! と言う声が上がる。なんて大盤振る舞い!

「三人からだ」

 その言葉に女の人はにっこり微笑んだ。

「ありがとう! とても嬉しいわ」

「それから、嫌じゃなければ空いてる席に座って食ってけよ。料理が余ってる」

 僕が子供なのもあるけど、ラズロさんは頼み過ぎだと思うよ。

「……いいのかしら?」

 戸惑った顔で、女の人はノエルさんと僕を見る。

「僕はどちらでも」と、ノエルさん。心なし、素っ気ない?

「もし良かったら」と答える。

「じゃあ、着替えてきて良いかしら?」

「おぅ。エールで良いか?」

「えぇ、お願いするわ」

 そう言って女の人はお店の奥に入って行った。
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