前代未聞のダンジョンメーカー

黛 ちまた

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第一章 新しい生活の始まり

014-1

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 ラズロさんと僕は、裏庭にやって来た。
 要らない布が欲しいと言ったら、ラズロさんが城のメイドさんから使い古しのシーツをもらって来てくれた。
 シーツの真ん中にカラシナの枝を置き、ブーツを履いた足で踏む。
 足の下で種が弾ける感触がする。

「踏むのか?!」

「そうなんです」

 扱いに困っていたサイモンさんは、店頭に出していたカラシナ以外の物も、あの後城に届けてきてくれた。
 僕としては嬉しいけど、扱いを知らないサイモンさんからすれば、困る量だったと思う。

 僕と同じようにブーツを履いて、シーツの上のカラシナを踏むラズロさん。

「お? 何か弾けるな」

「はい。踏むと殻から種が出てくるんですよ」

「これ、楽しいな!」

 笑顔で踏んでいくラズロさん。童心にかえるって、こういう感じかな?

「そうなんです。僕、粒マスタード作りでこの作業が一番好きです」

 結構な量だったけど、ラズロさんが一緒にやってくれたお陰で、思ったより早く終わらせることが出来た。
 シーツの上に、黄土色の殻と、こげ茶色の種に分かれているのが見える。
 枝だけを取り出し、フルールに渡すと、ポキポキと音をさせながら食べ始めた。いつも思うんだけど、フルールの食べる時に出す音、美味しそうで、困る。食べてみようかな、とか思ってしまう。

「フルールは美味そうに食うよな」

 どうやらラズロさんも同じこと考えてたみたいで、笑ってしまった。

「僕も思ってました」

「あの音さ、試してみたくなるよな。絶対不味かったり、食えないもんなんだろうにさ。この前だってトキア様が持ってきた紙をシャクシャクいわせてて、リンゴでも食ってんのかと思ったよ」

 それは美味しそうな音。

 シーツの端を持つ。

「ラズロさん、反対側を持ってもらえますか? 振って殻と種を分けたいんです」

「おぅよー」

 殻と種が溢れ落ちないように、軽く揺らしていくと、目に見えて殻だけが上に集まってくる。

「なるほどなー、軽い殻が上に寄せられる仕組みかー」

 殻をフルール用の木の器に移す。フルールはまだ枝に夢中だ。かなり本数があったから、しばらく枝を食べるのに時間がかかるだろうな。

 一緒に殻を器に移しながら、ラズロさんが話し始める。

「アシュリーが来てから、オレの衛生状況がすこぶる良いぜ。
溜めてからじゃないと出せなかった洗濯が二日にいっぺんぐらいの頻度で洗われるからな、それにオレ自身も毎晩風呂に入ってる。肌がスベスベになってきた所為か、女受けも良い。アシュリー様々だよ。
なんか礼をしたいんだけど、何か欲しい物はないのか?」

 清潔になると女の人にモテるのか。
 どんなに格好良くても、不潔だったり、においがしたら、嫌なものかもね。

「僕は村にいた時と同じぐらいに清潔に過ごさないと、どうも気持ち悪いんです。好きでやってることなので、気にしないで下さいね」

 ラズロさんがシワシワの服を着なくなって、せっけんの良い香りがするようになったのは、僕にとっても嬉しい。
 正直に、王都の人達は、お風呂に入れないからなのか、におうのです。買い出しに出かけたときの僕の悩みの一つだったりする。

「でもなぁ……あぁ、そうだ、風呂で使うせっけんあるだろ。あれを差し入れるってのはどうだ? 洗濯にも使えるだろ?」

 あ、それは凄く嬉しいかも。
 この国は表皮を削ると油が出て来る木が沢山あるからか、油が安い。
 せっけんは油を沢山使うんだけど、油が安いのもあって、値段が高くない。

「助かります」

「タオルはどうする?」

 せっかくお風呂でキレイになっても、皆は洗濯がマメに出来ないんだとしたら、タオルも清潔じゃないって事だから、あんまり良い事じゃない。

「タオルはこっちで用意します」

 あの大きな金ダライだと、沢山洗えるから、洗濯の回数も減ったんだよね。

「分かった。マナーの守れない奴は出禁にするから安心しろよ」

 マナー? あぁ、身体を洗ってから、ってことかな?

「よろしくお願いします」
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