前代未聞のダンジョンメーカー

黛 ちまた

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第一章 新しい生活の始まり

016-4

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 ちらり、とラズロさんの顔を見る。ラズロさんが笑った。

「オレの知ってる事なら教えてやるよ」

「あの、騎士団長の息子さんのレイモンド様は……」

「さっき閣下が言ってたように、家出した。女になるって言ってな」

 なれるの……?

「ま、気にすんな。それより、アシュリーはお偉いさんの心を掴む才能に溢れてんな」

「髪と瞳の色がたまたまレイモンド様と一緒だっただけですよ?」

「そんなの建前に決まってんだろ。あのオッサン、トキア様と同じぐらい厳しいんだからな。……っつっても、トキア様もアシュリーの事を気に入ってるから、分かんねぇか」

 トキア様は厳しそうだけど、優しいと思う。
 え、でも、騎士団長に会ったのは初めてだし……。

「騎士団長は王弟だ。庶子だけどな」

 オウテイ? ショシ?

「王の腹違いの弟だ、って事だけ分かるか?」

 頷く。
 それとどれぐらい偉い人なのかも分かりました。

「団長はクリフから連絡を受けて色々調べただろ。第一級危険スキル持ちを、S級ダンジョンからの帰還時に連れ帰ってるんだからな」

 S級ダンジョン……?

「食堂に戻ったら、パニーノを作りながら教えてやるよ」

「はい、よろしくお願いします」



 食堂に戻った僕達は、早速次のパニーノを作る。

「S級ダンジョンにいる魔物は、色んなのがいるらしいぜ、オレも見た事はないからな、又聞きだぞ?」

「はい」

「魅了をする魔物もいるらしい」

 ミリョウ?

「相手の行動や考える事を、本来の人間が望まないものに強制的に変えるもんだな」

 なにそれ、怖い!

「クリフとノエルが魅了されて、連れ帰って来たんじゃないかと思われて、アシュリーの事を調べたとしても不思議はないって事だ」

 えっと……それって僕、疑いは晴れたのかな?
 ラズロさんは笑って僕の頭を撫でた。

「問題無いと判断されたからあの反応なんだろ」

 ほっ。
 僕は僕で、魅了なんて使えないけど、疑われたままはやっぱり嫌だから、それがなくなったなら嬉しい。

 ラズロさんがスープの具材を切ってくれている間に、僕は今朝届いた卵を鍋にいれ、水を張る。

「何を作るんだ?」

「茹で卵です。それと、イワシのオイル漬けと重ねたら美味しいかなと思って」

「好き嫌いは分かれそうだが、美味そうだな。味見させてくれ」

「はい、お願いします」

 イワシのオイル漬けを瓶から取り出して細かく刻む。
 茹で上がった玉子は、適当な大きさにして、イワシのオイル漬けと混ぜる。
 それをパンで挟んで完成。
 味見用をラズロさんに渡す。ラズロさんは臭みの強いものでも結構平気だから、好きかも知れないなと思う。
 パンの半分を一口で食べてしまう。

「んん、イワシの濃い味が卵で緩和されるな。このままでも美味いが、マヨネーズが入ってたら更に美味くなりそうだ」

 マヨネーズ?

「前にイースタンが食わせてくれたんだけどな、卵とオイルと胡椒を死ぬ程攪拌して作るクリームなんだけどな、これが美味いんだよ」

 それ、僕でも作れるかな?
 攪拌は、風魔法で出来るし。

「興味津々って顔だな。夜にでも宵鍋に行ってイースタンに聞いてみるか?」

「はい!」

 沢山作ったパニーノとスープは、トキア様から連絡を受けた人達に伝わったらしくて、作った分だけもらわれていった。
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