前代未聞のダンジョンメーカー

黛 ちまた

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第一章 新しい生活の始まり

017-4

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 冬も半ばに入ると、クリフさんはほぼ城にいなかった。
 ノエルさんもいない事が増えた。城にいるけど忙しくて食べる暇がない、とかじゃなく。
 これまで準備していたものを使う時が来たと言うか、遂に来たのか、僕には初めての事ばかりで分からないけど。

「皆さん、大変そうですね」

「それが仕事とは言え、今年はハズレ年だな」

 ちゃんと寝れてるのかな、食べるものはあるのかな、怪我とかしないといいな。

「あの二人は大丈夫だ」

 僕の心配を見透かしたのか、ラズロさんは言って、頭を撫でてくれた。ほっとする。

 ノエルさん達が帰って来たら、メルのミルクを使った栄養たっぷりの食事を食べてもらいたいなぁ。

 「なぁ、昼さ、粒マスタードをソーセージに付けた奴にしようぜ」

 ラズロさんはすっかり粒マスタードが気に入ったようで、来年も作るんだと意気込んでいる。
 ソーセージに粒マスタードを付けて、ではなくて、粒マスタードをソーセージに付けて、と口にするぐらい、気に入ってくれている。
 今日は久々に宵鍋に行くから、ザックさんの感想も聞いてみたい。ザックさんの料理はとても美味しい。粒マスタードを使った新しい料理も生まれているかも知れない。

「そうですね。それならパニーノにもしやすいし、良いですね」

 まだ冬も半ば。
 寒さそのものはピークに達しているけど、これからが問題だとラズロさんは言う。
 春が近づけば山が芽吹いて、動物も魔物もそちらに向かうけど、山そのものに何もないこれからしばらくの間が大変になる。
 村にいた時も山から降りて来た魔物が襲って来た事があった。僕たちの村は魔女がいてくれたから無事だったけど、全ての村が守られている訳じゃないし、助けを求めても直ぐには増援は来ない。
 難しい問題だよね。

「アシュリーもだいぶ読み書きが出来るようになってきたなぁ」

 トキア様をはじめとして、色んな人が教えてくれて、読みやすい本を貸してくれた。
 本には種類があって、分からないことを教えてくれるもの、書いてる人の日記だったり、何処かに行った時の記録だったり、全部が空想のものもある。
 子供向けの本ならそんなに時間もかけずに読めるようになってきたし、字も力を入れ過ぎずに書けるようになってきた。
 トキア様から、何も書いてない真っ白い本を渡されて、これに日記を書きなさいと言われた。書く程の出来事はぼくにはないです、と断ったんだけど、日記は己の心と向き合う為にも必要なものだと言われた。
 自分の心に向き合う?
 意味はよく分からなかったけど、トキア様がここまでおっしゃるんだから、いつか必要になるのかも知れない。
 そう思って日記を書き始めた。でも、あんまり書く事がなくて、2~3行で終わってしまう。慣れてきたら、スラスラと沢山書けるようになるのかな。
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