126 / 271
第二章 マレビト
031-3
しおりを挟む
いもを僕が洗う。そのいもの皮をラズロさんが剥く。剥かれたいもは器の中へ。残った皮はフルールのおなかへ。
大量の皮も、フルールにかかるとあっという間に消えていく。気持ち良い食べっぷり。
半分ぐらいのいもを洗い終えたところで、鍋に水をはり、火魔法で湯を沸かし始める。
残りのいもを洗う。あともう一つ魔法を発動するぐらいが僕の魔力の限界。
この前のダンジョンでの話で、僕は自分の魔力だけで魔法を使ってることがわかった。
精霊は見えるけど、確かに僕の周りには近付いて来ないなとは思ってたんだよね……。
じゃあ、テイマーの能力は要らないのか、って言われると、そもそも魔力がそれほどないから魔法使いとしてはあんまりなんだろうし、生活に不便のないほどの魔法が使えて、フルールたちをテイム出来て、実はとっても恵まれているんじゃないかって思ってる。
皮をむいたいもを半分に切って、まとめて水にさらしておく。
沸かしておいた湯に塩を入れて、そこにいもを入れる。勢いよく入れて湯が飛ぶと熱い。やけどするといけないから、そっと。
大きな鍋で料理をするのに、僕だと腕の長さが足りない。そんな僕にラズロさんがこの前、調理道具をくれた。
長い柄のついた木べら。これまでは、鍋に身体を近付けすぎて服を焦がしそうになっていたんだけど、柄が長いから腕を伸ばさなくても鍋の底をかき混ぜられる。
わざわざ注文して作ってくれたんだって!
「木べら、丁度良さそうだな」
「はい、とっても使いやすいです! ありがとうございます!」
「そりゃ、なにより。奥から粉取ってくるわ」
茹で上がったいもは、いもがバラバラにならないように、つなぎの粉を入れてこねる。その後にも粉を使う。
粉は大きな袋に入ってるから、僕だとどうしても一回で沢山の量を持ってくるのは難しい。少しの時は、器を持っていって、氷室で粉を袋から器に移せば済むんだけどね。
ラズロさんがたっぷりの粉を持って来てくれた。
器に移したいもは茹で上がったばかりで、ほかほかと良い匂いがする。いもを木べらで潰す。温かいうちにやらないと、潰しにくくなっちゃうから、大急ぎ。
「変わってやるよ」
笑って僕からいもの入った大きな器を受け取ると、ラズロさんは慣れた手付きでいもをあっという間に潰していく。早い。
「アシュリー、上から粉入れてって」
「はい」
振りかけるようにいもに粉を入れる。いもと粉を手早くラズロさんがかき混ぜていく。
「んー、もう少し。さっきの半分ぐらい入れてくれ」
追加した粉も、ラズロさんがこねるたびにいもに馴染んでいく。
「よっし、こねもこんなもんだろ。丸めんぞー」
「はーい」
僕はこの、ひと口大に丸める作業が好きだ。
進んでやるぐらい、好き。生地をぎゅっと握って、親指と人差し指の間から出るぐらいの量がちょうどひと口大で、ニョッキを二人で作る時は、僕がこの役割をやらせてもらってる。
ひと口大にした生地はそのままラズロさんがきれいに丸めて、フォークの背をおしつけてくぼみを作ってくれる。こうしないと茹でても中まできれいに茹でられないから、大事な工程。でも僕はいつも強く押しすぎてしまって、ぺっちゃんこにしちゃう。
だから、作業を分担。
ニョッキはすぐに茹で上がるから、後はクリームソースだけど、それもすぐに出来てしまうから、ニョッキの仕込みはここまでにして、夜から時間をかけて発酵させておいたパンの生地を氷室から取り出す。これは、第一王子の為だけに作っているパンで、ジャッロたちが分けてくれる蜂ヤニを入れて練り込んであるもの。
僕やラズロさんたちが食べる用のには蜂ヤニの入っていないパン。パンを僕の拳ぐらいの大きさに丸めて焼いたものを二つ、添えて今日のお昼は完成。
「あーー、疲れたーー」
掠れた声をさせて、リンさんが食堂に入って来た。
「いつものミルクコーヒーで良いかー?」
ダンジョンで暮らすようになってから、メルのミルクの量が増えた。パフィが言うには、ダンジョンには魔力が溢れてるから、その魔力を吸収しているんだろうとのこと。
僕としては、ミルクの量が増えるのは、メルの身体に負担がかからないなら大歓迎。今までもある程度の量を搾らせてもらっていたけど、増えたお陰で買わなくて済むようになった。足りない分は買っていたんだよね。
第一王子はミルクが好きみたいで、ミルクの入った茶をよく飲む。侍従のことがあってから、第一王子が飲む飲み物は、食堂で作ったものに限られるようになった。
「うん、その前に水もらえるかな」
水魔法で出した水を器に入れて渡すと、凄い勢いで水を一気飲みする。よっぽど咽喉が渇いてたんだね。
咽喉が潤ったリンさんは、ほっと息を吐いて僕を見た。
「ねぇ、アシュリー、この水さ、食事時に飲めないかな?」
食事時?と聞き返すと、リンさんは頷いた。
「スープがある時はいいんだけどさ、ない時に欲しくなるんだよね」
あぁ、なるほど。
「それはありっちゃありだが、すぐには無理だな。器が足りん」
「是非、ご一考をー」
ミルクコーヒーの入った器が、リンさんの前に置かれる。
「ありがとー!」
大量の皮も、フルールにかかるとあっという間に消えていく。気持ち良い食べっぷり。
半分ぐらいのいもを洗い終えたところで、鍋に水をはり、火魔法で湯を沸かし始める。
残りのいもを洗う。あともう一つ魔法を発動するぐらいが僕の魔力の限界。
この前のダンジョンでの話で、僕は自分の魔力だけで魔法を使ってることがわかった。
精霊は見えるけど、確かに僕の周りには近付いて来ないなとは思ってたんだよね……。
じゃあ、テイマーの能力は要らないのか、って言われると、そもそも魔力がそれほどないから魔法使いとしてはあんまりなんだろうし、生活に不便のないほどの魔法が使えて、フルールたちをテイム出来て、実はとっても恵まれているんじゃないかって思ってる。
皮をむいたいもを半分に切って、まとめて水にさらしておく。
沸かしておいた湯に塩を入れて、そこにいもを入れる。勢いよく入れて湯が飛ぶと熱い。やけどするといけないから、そっと。
大きな鍋で料理をするのに、僕だと腕の長さが足りない。そんな僕にラズロさんがこの前、調理道具をくれた。
長い柄のついた木べら。これまでは、鍋に身体を近付けすぎて服を焦がしそうになっていたんだけど、柄が長いから腕を伸ばさなくても鍋の底をかき混ぜられる。
わざわざ注文して作ってくれたんだって!
「木べら、丁度良さそうだな」
「はい、とっても使いやすいです! ありがとうございます!」
「そりゃ、なにより。奥から粉取ってくるわ」
茹で上がったいもは、いもがバラバラにならないように、つなぎの粉を入れてこねる。その後にも粉を使う。
粉は大きな袋に入ってるから、僕だとどうしても一回で沢山の量を持ってくるのは難しい。少しの時は、器を持っていって、氷室で粉を袋から器に移せば済むんだけどね。
ラズロさんがたっぷりの粉を持って来てくれた。
器に移したいもは茹で上がったばかりで、ほかほかと良い匂いがする。いもを木べらで潰す。温かいうちにやらないと、潰しにくくなっちゃうから、大急ぎ。
「変わってやるよ」
笑って僕からいもの入った大きな器を受け取ると、ラズロさんは慣れた手付きでいもをあっという間に潰していく。早い。
「アシュリー、上から粉入れてって」
「はい」
振りかけるようにいもに粉を入れる。いもと粉を手早くラズロさんがかき混ぜていく。
「んー、もう少し。さっきの半分ぐらい入れてくれ」
追加した粉も、ラズロさんがこねるたびにいもに馴染んでいく。
「よっし、こねもこんなもんだろ。丸めんぞー」
「はーい」
僕はこの、ひと口大に丸める作業が好きだ。
進んでやるぐらい、好き。生地をぎゅっと握って、親指と人差し指の間から出るぐらいの量がちょうどひと口大で、ニョッキを二人で作る時は、僕がこの役割をやらせてもらってる。
ひと口大にした生地はそのままラズロさんがきれいに丸めて、フォークの背をおしつけてくぼみを作ってくれる。こうしないと茹でても中まできれいに茹でられないから、大事な工程。でも僕はいつも強く押しすぎてしまって、ぺっちゃんこにしちゃう。
だから、作業を分担。
ニョッキはすぐに茹で上がるから、後はクリームソースだけど、それもすぐに出来てしまうから、ニョッキの仕込みはここまでにして、夜から時間をかけて発酵させておいたパンの生地を氷室から取り出す。これは、第一王子の為だけに作っているパンで、ジャッロたちが分けてくれる蜂ヤニを入れて練り込んであるもの。
僕やラズロさんたちが食べる用のには蜂ヤニの入っていないパン。パンを僕の拳ぐらいの大きさに丸めて焼いたものを二つ、添えて今日のお昼は完成。
「あーー、疲れたーー」
掠れた声をさせて、リンさんが食堂に入って来た。
「いつものミルクコーヒーで良いかー?」
ダンジョンで暮らすようになってから、メルのミルクの量が増えた。パフィが言うには、ダンジョンには魔力が溢れてるから、その魔力を吸収しているんだろうとのこと。
僕としては、ミルクの量が増えるのは、メルの身体に負担がかからないなら大歓迎。今までもある程度の量を搾らせてもらっていたけど、増えたお陰で買わなくて済むようになった。足りない分は買っていたんだよね。
第一王子はミルクが好きみたいで、ミルクの入った茶をよく飲む。侍従のことがあってから、第一王子が飲む飲み物は、食堂で作ったものに限られるようになった。
「うん、その前に水もらえるかな」
水魔法で出した水を器に入れて渡すと、凄い勢いで水を一気飲みする。よっぽど咽喉が渇いてたんだね。
咽喉が潤ったリンさんは、ほっと息を吐いて僕を見た。
「ねぇ、アシュリー、この水さ、食事時に飲めないかな?」
食事時?と聞き返すと、リンさんは頷いた。
「スープがある時はいいんだけどさ、ない時に欲しくなるんだよね」
あぁ、なるほど。
「それはありっちゃありだが、すぐには無理だな。器が足りん」
「是非、ご一考をー」
ミルクコーヒーの入った器が、リンさんの前に置かれる。
「ありがとー!」
17
あなたにおすすめの小説
劣悪だと言われたハズレ加護の『空間魔法』を、便利だと思っているのは僕だけなのだろうか?
はらくろ
ファンタジー
海と交易で栄えた国を支える貴族家のひとつに、
強くて聡明な父と、優しくて活動的な母の間に生まれ育った少年がいた。
母親似に育った賢く可愛らしい少年は優秀で、将来が楽しみだと言われていたが、
その少年に、突然の困難が立ちはだかる。
理由は、貴族の跡取りとしては公言できないほどの、劣悪な加護を洗礼で授かってしまったから。
一生外へ出られないかもしれない幽閉のような生活を続けるよりも、少年は屋敷を出て行く選択をする。
それでも持ち前の強く非常識なほどの魔力の多さと、負けず嫌いな性格でその困難を乗り越えていく。
そんな少年の物語。
転生したら神だった。どうすんの?
埼玉ポテチ
ファンタジー
転生した先は何と神様、しかも他の神にお前は神じゃ無いと天界から追放されてしまった。僕はこれからどうすれば良いの?
人間界に落とされた神が天界に戻るのかはたまた、地上でスローライフを送るのか?ちょっと変わった異世界ファンタジーです。
異世界ママ、今日も元気に無双中!
チャチャ
ファンタジー
> 地球で5人の子どもを育てていた明るく元気な主婦・春子。
ある日、建設現場の事故で命を落としたと思ったら――なんと剣と魔法の異世界に転生!?
目が覚めたら村の片隅、魔法も戦闘知識もゼロ……でも家事スキルは超一流!
「洗濯魔法? お掃除召喚? いえいえ、ただの生活の知恵です!」
おせっかい上等! お節介で世界を変える異世界ママ、今日も笑顔で大奮闘!
魔法も剣もぶっ飛ばせ♪ ほんわかテンポの“無双系ほんわかファンタジー”開幕!
目つきが悪いと仲間に捨てられてから、魔眼で全てを射貫くまで。
桐山じゃろ
ファンタジー
高校二年生の横伏藤太はある日突然、あまり接点のないクラスメイトと一緒に元いた世界からファンタジーな世界へ召喚された。初めのうちは同じ災難にあった者同士仲良くしていたが、横伏だけが強くならない。召喚した連中から「勇者の再来」と言われている不東に「目つきが怖い上に弱すぎる」という理由で、森で魔物にやられた後、そのまま捨てられた。……こんなところで死んでたまるか! 奮起と同時に意味不明理解不能だったスキル[魔眼]が覚醒し無双モードへ突入。その後は別の国で召喚されていた同じ学校の女の子たちに囲まれて一緒に暮らすことに。一方、捨てた連中はなんだか勝手に酷い目に遭っているようです。※小説家になろう、カクヨムにも同じものを掲載しています。
外れスキル【削除&復元】が実は最強でした~色んなものを消して相手に押し付けたり自分のものにしたりする能力を得た少年の成り上がり~
名無し
ファンタジー
突如パーティーから追放されてしまった主人公のカイン。彼のスキルは【削除&復元】といって、荷物係しかできない無能だと思われていたのだ。独りぼっちとなったカインは、ギルドで仲間を募るも意地悪な男にバカにされてしまうが、それがきっかけで頭痛や相手のスキルさえも削除できる力があると知る。カインは一流冒険者として名を馳せるという夢をかなえるべく、色んなものを削除、復元して自分ものにしていき、またたく間に最強の冒険者へと駆け上がっていくのだった……。
【完結】魔術師なのはヒミツで薬師になりました
すみ 小桜(sumitan)
ファンタジー
ティモシーは、魔術師の少年だった。人には知られてはいけないヒミツを隠し、薬師(くすし)の国と名高いエクランド国で薬師になる試験を受けるも、それは年に一度の王宮専属薬師になる試験だった。本当は普通の試験でよかったのだが、見事に合格を果たす。見た目が美少女のティモシーは、トラブルに合うもまだ平穏な方だった。魔術師の組織の影がちらつき、彼は次第に大きな運命に飲み込まれていく……。
神樹の里で暮らす創造魔法使い ~幻獣たちとののんびりライフ~
あきさけ
ファンタジー
貧乏な田舎村を追い出された少年〝シント〟は森の中をあてどなくさまよい一本の新木を発見する。
それは本当に小さな新木だったがかすかな光を帯びた不思議な木。
彼が不思議そうに新木を見つめているとそこから『私に魔法をかけてほしい』という声が聞こえた。
シントが唯一使えたのは〝創造魔法〟といういままでまともに使えた試しのないもの。
それでも森の中でこのまま死ぬよりはまだいいだろうと考え魔法をかける。
すると新木は一気に生長し、天をつくほどの巨木にまで変化しそこから新木に宿っていたという聖霊まで姿を現した。
〝この地はあなたが創造した聖地。あなたがこの地を去らない限りこの地を必要とするもの以外は誰も踏み入れませんよ〟
そんな言葉から始まるシントののんびりとした生活。
同じように行き場を失った少女や幻獣や精霊、妖精たちなど様々な面々が集まり織りなすスローライフの幕開けです。
※この小説はカクヨム様でも連載しています。アルファポリス様とカクヨム様以外の場所では公開しておりません。
神の加護を受けて異世界に
モンド
ファンタジー
親に言われるまま学校や塾に通い、卒業後は親の進める親族の会社に入り、上司や親の進める相手と見合いし、結婚。
その後馬車馬のように働き、特別好きな事をした覚えもないまま定年を迎えようとしている主人公、あとわずか数日の会社員生活でふと、何かに誘われるように会社を無断で休み、海の見える高台にある、神社に立ち寄った。
そこで野良犬に噛み殺されそうになっていた狐を助けたがその際、野良犬に喉笛を噛み切られその命を終えてしまうがその時、神社から不思議な光が放たれ新たな世界に生まれ変わる、そこでは自分の意思で何もかもしなければ生きてはいけない厳しい世界しかし、生きているという実感に震える主人公が、力強く生きるながら信仰と奇跡にに導かれて神に至る物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる