前代未聞のダンジョンメーカー

黛 ちまた

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第二章 マレビト

034-4

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 夏の前に必ず訪れる雨季がいつもより早くにやって来た。
 ジメジメして、凄く不快になる季節。
 カビが発生しやすくなるから、夏とは違う気遣いが必要になって、正直苦手。
 洗濯物も外に干せないし。

 ダンジョンに第二王子派の人達が入り込むようになって一週間。毎朝ノエルさんとクリフさんが入って、大丈夫と言われてからじゃないと中には入れない。
 ノエルさん曰く、情操教育として大変よろしくない物をアシュリーの目に触れさせない為、なのだそうです。
 なんとなく分かるのと、僕も見たくはないので、お言葉に甘えてる。ごめんなさい……。

 メルとコッコは無事なので良いんだけど、ジャッロ達は毎晩のように巣が襲われるから苛立ってるのかと思いきや、思ったより怒ってない。不思議。

「もっとジャッロ達がイライラしてるのかと思ってたんだけど、そうでもないんだね」

 その事をパフィに話しながら、僕とパフィ、フルールはダンジョンに向かう。

『まぁな。でもそろそろ奴らも道具を使い始めるだろう』

「今までは使ってなかったの?」

 あの大きさの蜂に素手で?

『おまえが想像しているのとは違う。これまでも直接的な道具は用いていただろうがな、そうではなく、近付かずとも巣を攻撃出来るような物を用いるだろう、という事だ。村の男達も使っていただろう』

 みんなは煙の出るような物を持って巣を取りに行っていたような気がする。
 煙に慌てた蜂達が巣を離れてから、巣を取っちゃうんだよね。

「うーん……煙とか、ジャッロたちには苦しいよね」

『だろうな』

 ダンジョン内で火を使えない制限をかけるとか?

『外で火を付けてから持ち込めば良いだろう』

 確かに。

「じゃあ、ダンジョン内で雨を降らせるとかも、駄目そうだねぇ」

 夜にだけ雨を降らせる。……って、これも濡れないようにして持ってくれば良いもんね……。
 ジャッロ達を守りつつ、侵入して来た人達を何とかする方法、ないかなぁ。

『一週間程引き延ばせれば良いからな、おまえが思う妨害策を日々施してみるのも良かろう』

 一週間?
 この前パフィが言っていた案だろうか?
 誰にも内容は教えないって言ってたけど。

 とりあえずパフィが言うように、ダンジョンにあれこれと罠をしかけてみる。
 夜には雨が音をたてる程降るとか、強風が吹いて飛ばされそうになるとか、火を付けても消えちゃうとか。



 一週間後、王都内は原因不明の症状を訴える人が続出した。命に影響を及ぼすようなものではないけど、体調が優れない、と言う人達で診療所が溢れ返るようになった。
 雨季だったから食あたりかと言われていたけど、診療所が出した結果は、毒物だった。
 毒物が王都のあちこちの井戸で検出された。
 しかも、王城でも。

 僕やラズロさんは、僕が水魔法で出してる水を使ってるから被害を受けなかった。第一王子が口にするものは全部僕が作ったものだったから大丈夫だった。
 王族の人達や上級官達向けの料理を出している厨房は、井戸の水を使っていた所為で、被害を受けたんだって。
 でも、第二王子とその母親には症状が出なかったらしく、そこから第二妃の生家に調べがいったんだって。
 聖女が災いの元凶は第二妃の生家であり、そこに解毒剤もある、と言ったらしくって。
 ……聖女って、確かアリッサだったよね……。
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