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第三章 ダンジョンメーカーのお仕事
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海と繋ぐ為に作ったダンジョンは、実はギルドの奥にある。
魔力がある場合、ダンジョンは実はそこにはないんだって。でも、魔力がなくなると実体化するらしい。
だから僕が王城の裏庭に作ったダンジョンは、城の下に空洞を作った訳ではなくて、別のところにダンジョンはあって……。
原理とか、説明してもらったけど、ちんぷんかんぷんだった。
あと、魔力がなくなってしまったダンジョンが実体化することがどういう問題になるのか、よく分かっていなかった僕に、ノエルさんが教えてくれた。
あまりにダンジョンが沢山出来て、しかもダンジョンから魔力が失われていったら、地盤沈下などが起きる可能性があるし、魔物の住処になってしまうと、地上にあふれてきた時に問題になるんだって。
アマーリアーナ様が僕にダンジョンメーカーとしてダンジョンを閉じて欲しいと言っていたのは、その所為かも知れない。
とは言っても、滞留した魔力により自然に生み出されていくから、ダンジョンが生み出された後はその辺りの魔力はなくなってしまうし、そうそう直ぐに魔力は溜まらないらしいんだけど。
ダンジョンがギルドの奥に作られることになったのは、悪いことが出来ないようにだったり、間違って海に入って危険に遭わないように、という理由からだって聞いた。
沢山の人が出入りすることになる海のダンジョンは、誰でも入れるように制約がかけられていない。
裏庭のダンジョンのように、術符を持っている人は入れるようにする案もあったみたいなんだけど、なくした場合や、術符を売られてしまったり、人がいない時に入ってこっそり魚を獲って売る、ということが予想されて、なしになった。その代わりにギルドが雇った人が出入り口を見張るらしい。
それから、ダンジョンが実体化しない為に、専用の術符をティール様たち魔術師からギルドは購入することで、海のダンジョンを独占する権利を手にしたみたい。
村から出て城で働き始めてからも、あんまり悪い人に出会ったことがなかったから、他の人から酷い話を聞くたびに、僕は恵まれているんだと感じる。
広場には、その日の仕事を探している人たちが大勢いたけど、表情は暗くなくて、ほっとした。
何かしらの仕事につけているからかな。
まだいっぱい問題はあるってわかってるけど、それでも。
ギルドに到着した僕たちは、ダンジョンに向かう。
ティール様はローブの大きなポケットから術符を取り出して、一緒についてきたギルドの人に二枚、手渡した。
「これがこのダンジョンを安定させる為の術符になります、何処でも良いので貼って下さい。
あ、一度貼ると剥がせないのでご注意下さいね」
ギルド職員の人は、受け取った術符をじっと見つめている。
「効力を失効すると途端にダンジョンが実体化を始めてしまうので、常に注意しておいて下さい。
効果を発揮している場合は光を発します。色は濃い青です。だんだん色が薄まっていきますので、城にて購入後、貼って下さいね。
なんでしたら、色が薄まってきたら新しいのを購入いただいて、横に貼っていただいても問題ありません」
「承知致しました」
職員さんは頷き、ティール様に質問する。
「二枚並べた場合、どちらが先に使用される、というのはあるのでしょうか?」
「この術符はその場の魔力がダンジョンを維持する一定量になるよう、必要に応じて魔力を発するものです。
ですから、ニ枚貼り付けた場合は二枚とも効果を発するでしょうが、この場の魔力量がいくらか増えるだけです」
「理解しました。ありがとうございます」
職員さんは頷く。
「さ、どうぞ」
次回からはギルドの職員さんたちがティール様たち魔術師がいない所で術符を貼ることになる。
僕も裏庭のダンジョンで貼ったことがあるけど、ただぺたって貼るだけだから、問題ないと思う。
恐々とした様子で、職員さんは壁に術符を貼った。振り返ってティール様を見る。頷くティール様。
術符は青い光を発してる。
「これで大丈夫です」
ティール様がナインさんの方を向くと、ナインさんが頷いた。
ポケットから術符を取り出して、低くなっているダンジョンの奥に向かって歩き出す。
「最奥に海と繋げる術符をダンジョンに吸収させるんですよ」
かなり広い空間で、ナインさんの姿がどんどん小さくなっていく。
一番奥に到着したナインさんは、術符を壁に貼ったようで、小走りで戻って来た。
ナインさんを追い掛けるようにして、水が奥からあふれてきて、あっという間にいっぱいになった。
水が引いて、またこっちにやってくる。
貸してもらった本の中に、海のことが書かれていて、海には波というものがあるって知った。
満ちて、引く。
海から遠く離れたこのダンジョンと繋がったことで、目の前に波が迫るのは、なんだか不思議な気分。
「浅瀬と繋げてますから、これ以上水が上がってくることはないのでご安心下さいね」
ぼんやりと海水を見ていたらパフィに頰をぱんちされた。痛くはないけどびっくりした。
『何をぼけっと突っ立っている。ここを浅瀬らしくせんか。その為に海を見せてやったろう』
あ、そうだった。
少し見せてもらえた海を思い出す。
ダンジョンの天井が空に変わり、浅瀬に模して低くなった場所にいくつもの岩場が出来ていく。
「わ……っ!」
職員さんが声を上げる。
『少し時間はかかるだろうが、岩場に生き物が住み着く。まぁ、浅瀬だなんだと言っても、それなりの深さはある。貝類が獲れるだけの深さにはなっているからな』
どれ、と言ってパフィは僕の腕から飛び降りると、しっぽをぐるぐると回した。
岩場に藻みたいなものがくっついていく。
『住処がなくば、小さき者たちも来ないからな』
さっきの藻みたいな奴が住処になるのかな。
「少しずつ生き物が増えていくよ」
「それだと、貝はいつから食べられるようになるんですか?」
ノエルさんが笑って、「ここは少し時間がかかると思うけれど、下の層は沖と繋げるんでしょう? そうしたら魚が釣れるようになるよ」
そうなのか。
裏庭のダンジョンにも海を作ったら、釣り、出来るかな?
魔力がある場合、ダンジョンは実はそこにはないんだって。でも、魔力がなくなると実体化するらしい。
だから僕が王城の裏庭に作ったダンジョンは、城の下に空洞を作った訳ではなくて、別のところにダンジョンはあって……。
原理とか、説明してもらったけど、ちんぷんかんぷんだった。
あと、魔力がなくなってしまったダンジョンが実体化することがどういう問題になるのか、よく分かっていなかった僕に、ノエルさんが教えてくれた。
あまりにダンジョンが沢山出来て、しかもダンジョンから魔力が失われていったら、地盤沈下などが起きる可能性があるし、魔物の住処になってしまうと、地上にあふれてきた時に問題になるんだって。
アマーリアーナ様が僕にダンジョンメーカーとしてダンジョンを閉じて欲しいと言っていたのは、その所為かも知れない。
とは言っても、滞留した魔力により自然に生み出されていくから、ダンジョンが生み出された後はその辺りの魔力はなくなってしまうし、そうそう直ぐに魔力は溜まらないらしいんだけど。
ダンジョンがギルドの奥に作られることになったのは、悪いことが出来ないようにだったり、間違って海に入って危険に遭わないように、という理由からだって聞いた。
沢山の人が出入りすることになる海のダンジョンは、誰でも入れるように制約がかけられていない。
裏庭のダンジョンのように、術符を持っている人は入れるようにする案もあったみたいなんだけど、なくした場合や、術符を売られてしまったり、人がいない時に入ってこっそり魚を獲って売る、ということが予想されて、なしになった。その代わりにギルドが雇った人が出入り口を見張るらしい。
それから、ダンジョンが実体化しない為に、専用の術符をティール様たち魔術師からギルドは購入することで、海のダンジョンを独占する権利を手にしたみたい。
村から出て城で働き始めてからも、あんまり悪い人に出会ったことがなかったから、他の人から酷い話を聞くたびに、僕は恵まれているんだと感じる。
広場には、その日の仕事を探している人たちが大勢いたけど、表情は暗くなくて、ほっとした。
何かしらの仕事につけているからかな。
まだいっぱい問題はあるってわかってるけど、それでも。
ギルドに到着した僕たちは、ダンジョンに向かう。
ティール様はローブの大きなポケットから術符を取り出して、一緒についてきたギルドの人に二枚、手渡した。
「これがこのダンジョンを安定させる為の術符になります、何処でも良いので貼って下さい。
あ、一度貼ると剥がせないのでご注意下さいね」
ギルド職員の人は、受け取った術符をじっと見つめている。
「効力を失効すると途端にダンジョンが実体化を始めてしまうので、常に注意しておいて下さい。
効果を発揮している場合は光を発します。色は濃い青です。だんだん色が薄まっていきますので、城にて購入後、貼って下さいね。
なんでしたら、色が薄まってきたら新しいのを購入いただいて、横に貼っていただいても問題ありません」
「承知致しました」
職員さんは頷き、ティール様に質問する。
「二枚並べた場合、どちらが先に使用される、というのはあるのでしょうか?」
「この術符はその場の魔力がダンジョンを維持する一定量になるよう、必要に応じて魔力を発するものです。
ですから、ニ枚貼り付けた場合は二枚とも効果を発するでしょうが、この場の魔力量がいくらか増えるだけです」
「理解しました。ありがとうございます」
職員さんは頷く。
「さ、どうぞ」
次回からはギルドの職員さんたちがティール様たち魔術師がいない所で術符を貼ることになる。
僕も裏庭のダンジョンで貼ったことがあるけど、ただぺたって貼るだけだから、問題ないと思う。
恐々とした様子で、職員さんは壁に術符を貼った。振り返ってティール様を見る。頷くティール様。
術符は青い光を発してる。
「これで大丈夫です」
ティール様がナインさんの方を向くと、ナインさんが頷いた。
ポケットから術符を取り出して、低くなっているダンジョンの奥に向かって歩き出す。
「最奥に海と繋げる術符をダンジョンに吸収させるんですよ」
かなり広い空間で、ナインさんの姿がどんどん小さくなっていく。
一番奥に到着したナインさんは、術符を壁に貼ったようで、小走りで戻って来た。
ナインさんを追い掛けるようにして、水が奥からあふれてきて、あっという間にいっぱいになった。
水が引いて、またこっちにやってくる。
貸してもらった本の中に、海のことが書かれていて、海には波というものがあるって知った。
満ちて、引く。
海から遠く離れたこのダンジョンと繋がったことで、目の前に波が迫るのは、なんだか不思議な気分。
「浅瀬と繋げてますから、これ以上水が上がってくることはないのでご安心下さいね」
ぼんやりと海水を見ていたらパフィに頰をぱんちされた。痛くはないけどびっくりした。
『何をぼけっと突っ立っている。ここを浅瀬らしくせんか。その為に海を見せてやったろう』
あ、そうだった。
少し見せてもらえた海を思い出す。
ダンジョンの天井が空に変わり、浅瀬に模して低くなった場所にいくつもの岩場が出来ていく。
「わ……っ!」
職員さんが声を上げる。
『少し時間はかかるだろうが、岩場に生き物が住み着く。まぁ、浅瀬だなんだと言っても、それなりの深さはある。貝類が獲れるだけの深さにはなっているからな』
どれ、と言ってパフィは僕の腕から飛び降りると、しっぽをぐるぐると回した。
岩場に藻みたいなものがくっついていく。
『住処がなくば、小さき者たちも来ないからな』
さっきの藻みたいな奴が住処になるのかな。
「少しずつ生き物が増えていくよ」
「それだと、貝はいつから食べられるようになるんですか?」
ノエルさんが笑って、「ここは少し時間がかかると思うけれど、下の層は沖と繋げるんでしょう? そうしたら魚が釣れるようになるよ」
そうなのか。
裏庭のダンジョンにも海を作ったら、釣り、出来るかな?
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