前代未聞のダンジョンメーカー

黛 ちまた

文字の大きさ
152 / 271
第三章 ダンジョンメーカーのお仕事

037-4

しおりを挟む
 海と繋ぐ為に作ったダンジョンは、実はギルドの奥にある。
 魔力がある場合、ダンジョンは実はそこにはないんだって。でも、魔力がなくなると実体化するらしい。
 だから僕が王城の裏庭に作ったダンジョンは、城の下に空洞を作った訳ではなくて、別のところにダンジョンはあって……。
 原理とか、説明してもらったけど、ちんぷんかんぷんだった。
 あと、魔力がなくなってしまったダンジョンが実体化することがどういう問題になるのか、よく分かっていなかった僕に、ノエルさんが教えてくれた。
 あまりにダンジョンが沢山出来て、しかもダンジョンから魔力が失われていったら、地盤沈下などが起きる可能性があるし、魔物の住処になってしまうと、地上にあふれてきた時に問題になるんだって。
 アマーリアーナ様が僕にダンジョンメーカーとしてダンジョンを閉じて欲しいと言っていたのは、その所為かも知れない。
 とは言っても、滞留した魔力により自然に生み出されていくから、ダンジョンが生み出された後はその辺りの魔力はなくなってしまうし、そうそう直ぐに魔力は溜まらないらしいんだけど。

 ダンジョンがギルドの奥に作られることになったのは、悪いことが出来ないようにだったり、間違って海に入って危険に遭わないように、という理由からだって聞いた。
 沢山の人が出入りすることになる海のダンジョンは、誰でも入れるように制約がかけられていない。
 裏庭のダンジョンのように、術符を持っている人は入れるようにする案もあったみたいなんだけど、なくした場合や、術符を売られてしまったり、人がいない時に入ってこっそり魚を獲って売る、ということが予想されて、なしになった。その代わりにギルドが雇った人が出入り口を見張るらしい。
 それから、ダンジョンが実体化しない為に、専用の術符をティール様たち魔術師からギルドは購入することで、海のダンジョンを独占する権利を手にしたみたい。

 村から出て城で働き始めてからも、あんまり悪い人に出会ったことがなかったから、他の人から酷い話を聞くたびに、僕は恵まれているんだと感じる。

 広場には、その日の仕事を探している人たちが大勢いたけど、表情は暗くなくて、ほっとした。
 何かしらの仕事につけているからかな。
 まだいっぱい問題はあるってわかってるけど、それでも。



 ギルドに到着した僕たちは、ダンジョンに向かう。
 ティール様はローブの大きなポケットから術符を取り出して、一緒についてきたギルドの人に二枚、手渡した。

「これがこのダンジョンを安定させる為の術符になります、何処でも良いので貼って下さい。
あ、一度貼ると剥がせないのでご注意下さいね」

 ギルド職員の人は、受け取った術符をじっと見つめている。

「効力を失効すると途端にダンジョンが実体化を始めてしまうので、常に注意しておいて下さい。
効果を発揮している場合は光を発します。色は濃い青です。だんだん色が薄まっていきますので、城にて購入後、貼って下さいね。
なんでしたら、色が薄まってきたら新しいのを購入いただいて、横に貼っていただいても問題ありません」

「承知致しました」

 職員さんは頷き、ティール様に質問する。

「二枚並べた場合、どちらが先に使用される、というのはあるのでしょうか?」

「この術符はその場の魔力がダンジョンを維持する一定量になるよう、必要に応じて魔力を発するものです。
ですから、ニ枚貼り付けた場合は二枚とも効果を発するでしょうが、この場の魔力量がいくらか増えるだけです」

「理解しました。ありがとうございます」

 職員さんは頷く。

「さ、どうぞ」

 次回からはギルドの職員さんたちがティール様たち魔術師がいない所で術符を貼ることになる。
 僕も裏庭のダンジョンで貼ったことがあるけど、ただぺたって貼るだけだから、問題ないと思う。
 恐々とした様子で、職員さんは壁に術符を貼った。振り返ってティール様を見る。頷くティール様。
 術符は青い光を発してる。

「これで大丈夫です」

 ティール様がナインさんの方を向くと、ナインさんが頷いた。
 ポケットから術符を取り出して、低くなっているダンジョンの奥に向かって歩き出す。

「最奥に海と繋げる術符をダンジョンに吸収させるんですよ」

 かなり広い空間で、ナインさんの姿がどんどん小さくなっていく。
 一番奥に到着したナインさんは、術符を壁に貼ったようで、小走りで戻って来た。
 ナインさんを追い掛けるようにして、水が奥からあふれてきて、あっという間にいっぱいになった。

 水が引いて、またこっちにやってくる。
 貸してもらった本の中に、海のことが書かれていて、海には波というものがあるって知った。
 満ちて、引く。
 海から遠く離れたこのダンジョンと繋がったことで、目の前に波が迫るのは、なんだか不思議な気分。

「浅瀬と繋げてますから、これ以上水が上がってくることはないのでご安心下さいね」

 ぼんやりと海水を見ていたらパフィに頰をぱんちされた。痛くはないけどびっくりした。

『何をぼけっと突っ立っている。ここを浅瀬らしくせんか。その為に海を見せてやったろう』

 あ、そうだった。

 少し見せてもらえた海を思い出す。
 ダンジョンの天井が空に変わり、浅瀬に模して低くなった場所にいくつもの岩場が出来ていく。

「わ……っ!」

 職員さんが声を上げる。

『少し時間はかかるだろうが、岩場に生き物が住み着く。まぁ、浅瀬だなんだと言っても、それなりの深さはある。貝類が獲れるだけの深さにはなっているからな』

 どれ、と言ってパフィは僕の腕から飛び降りると、しっぽをぐるぐると回した。
 岩場に藻みたいなものがくっついていく。

『住処がなくば、小さき者たちも来ないからな』

 さっきの藻みたいな奴が住処になるのかな。

「少しずつ生き物が増えていくよ」

「それだと、貝はいつから食べられるようになるんですか?」

 ノエルさんが笑って、「ここは少し時間がかかると思うけれど、下の層は沖と繋げるんでしょう? そうしたら魚が釣れるようになるよ」

 そうなのか。
 裏庭のダンジョンにも海を作ったら、釣り、出来るかな?
しおりを挟む
感想 8

あなたにおすすめの小説

美少女に転生して料理して生きてくことになりました。

ゆーぞー
ファンタジー
田中真理子32歳、独身、失業中。 飲めないお酒を飲んでぶったおれた。 気がついたらマリアンヌという12歳の美少女になっていた。 その世界は加護を受けた人間しか料理をすることができない世界だった

俺に王太子の側近なんて無理です!

クレハ
ファンタジー
5歳の時公爵家の家の庭にある木から落ちて前世の記憶を思い出した俺。 そう、ここは剣と魔法の世界! 友達の呪いを解くために悪魔召喚をしたりその友達の側近になったりして大忙し。 ハイスペックなちゃらんぽらんな人間を演じる俺の奮闘記、ここに開幕。

【完結】魔術師なのはヒミツで薬師になりました

すみ 小桜(sumitan)
ファンタジー
 ティモシーは、魔術師の少年だった。人には知られてはいけないヒミツを隠し、薬師(くすし)の国と名高いエクランド国で薬師になる試験を受けるも、それは年に一度の王宮専属薬師になる試験だった。本当は普通の試験でよかったのだが、見事に合格を果たす。見た目が美少女のティモシーは、トラブルに合うもまだ平穏な方だった。魔術師の組織の影がちらつき、彼は次第に大きな運命に飲み込まれていく……。

能力値カンストで異世界転生したので…のんびり生きちゃダメですか?

火産霊神
ファンタジー
私の異世界転生、思ってたのとちょっと違う…? 24歳OLの立花由芽は、ある日異世界転生し「ユメ」という名前の16歳の魔女として生きることに。その世界は魔王の脅威に怯え…ているわけでもなく、レベルアップは…能力値がカンストしているのでする必要もなく、能力を持て余した彼女はスローライフをおくることに。そう決めた矢先から何やらイベントが発生し…!?

異世界に転生した社畜は調合師としてのんびりと生きていく。~ただの生産職だと思っていたら、結構ヤバい職でした~

夢宮
ファンタジー
台風が接近していて避難勧告が出されているにも関わらず出勤させられていた社畜──渡部与一《わたべよいち》。 雨で視界が悪いなか、信号無視をした車との接触事故で命を落としてしまう。 女神に即断即決で異世界転生を決められ、パパっと送り出されてしまうのだが、幸いなことに女神の気遣いによって職業とスキルを手に入れる──生産職の『調合師』という職業とそのスキルを。 異世界に転生してからふたりの少女に助けられ、港町へと向かい、物語は動き始める。 調合師としての立場を知り、それを利用しようとする者に悩まされながらも生きていく。 そんな与一ののんびりしたくてものんびりできない異世界生活が今、始まる。 ※2話から登場人物の描写に入りますので、のんびりと読んでいただけたらなと思います。 ※サブタイトル追加しました。

勇者パーティのサポートをする代わりに姉の様なアラサーの粗雑な女闘士を貰いました。

石のやっさん
ファンタジー
年上の女性が好きな俺には勇者パーティの中に好みのタイプの女性は居ません 俺の名前はリヒト、ジムナ村に生まれ、15歳になった時にスキルを貰う儀式で上級剣士のジョブを貰った。 本来なら素晴らしいジョブなのだが、今年はジョブが豊作だったらしく、幼馴染はもっと凄いジョブばかりだった。 幼馴染のカイトは勇者、マリアは聖女、リタは剣聖、そしてリアは賢者だった。 そんな訳で充分に上位職の上級剣士だが、四職が出た事で影が薄れた。 彼等は色々と問題があるので、俺にサポーターとしてついて行って欲しいと頼まれたのだが…ハーレムパーティに俺は要らないし面倒くさいから断ったのだが…しつこく頼むので、条件を飲んでくれればと条件をつけた。 それは『27歳の女闘志レイラを借金の権利ごと無償で貰う事』 今度もまた年上ヒロインです。 セルフレイティングは、話しの中でそう言った描写を書いたら追加します。 カクヨムにも投稿中です

天才魔導医の弟子~転生ナースの戦場カルテ~

けろ
ファンタジー
【完結済み】 仕事に生きたベテランナース、異世界で10歳の少女に!? 過労で倒れた先に待っていたのは、魔法と剣、そして規格外の医療が交差する世界だった――。 救急救命の現場で十数年。ベテラン看護師の天木弓束(あまき ゆづか)は、人手不足と激務に心身をすり減らす毎日を送っていた。仕事に全てを捧げるあまり、プライベートは二の次。周囲からの期待もプレッシャーに感じながら、それでも人の命を救うことだけを使命としていた。 しかし、ある日、謎の少女を救えなかったショックで意識を失い、目覚めた場所は……中世ヨーロッパのような異世界の路地裏!? しかも、姿は10歳の少女に若返っていた。 記憶も曖昧なまま、絶望の淵に立たされた弓束。しかし、彼女が唯一失っていなかったもの――それは、現代日本で培った高度な医療知識と技術だった。 偶然出会った獣人冒険者の重度の骨折を、その知識で的確に応急処置したことで、弓束の運命は大きく動き出す。 彼女の異質な才能を見抜いたのは、誰もがその実力を認めながらも距離を置く、孤高の天才魔導医ギルベルトだった。 「お前、弟子になれ。俺の研究の、良い材料になりそうだ」 強引な天才に拾われた弓束は、魔法が存在するこの世界の「医療」が、自分の知るものとは全く違うことに驚愕する。 「菌?感染症?何の話だ?」 滅菌の概念すらない遅れた世界で、弓束の現代知識はまさにチート級! しかし、そんな彼女の常識をさらに覆すのが、師ギルベルトの存在だった。彼が操る、生命の根幹『魔力回路』に干渉する神業のような治療魔法。その理論は、弓束が知る医学の歴史を遥かに超越していた。 規格外の弟子と、人外の師匠。 二人の出会いは、やがて異世界の医療を根底から覆し、多くの命を救う奇跡の始まりとなる。 これは、神のいない手術室で命と向き合い続けた一人の看護師が、新たな世界で自らの知識と魔法を武器に、再び「救う」ことの意味を見つけていく物語。

神様の忘れ物

mizuno sei
ファンタジー
 仕事中に急死した三十二歳の独身OLが、前世の記憶を持ったまま異世界に転生した。  わりとお気楽で、ポジティブな主人公が、異世界で懸命に生きる中で巻き起こされる、笑いあり、涙あり(?)の珍騒動記。

処理中です...