153 / 271
第三章 ダンジョンメーカーのお仕事
037-5
しおりを挟む
今日は浅瀬を作るところまでで終わり。浅瀬は出来たんだけど、みんな、何も言わずに繋がったばかりの海を見ていた。
作り物だけれど、空は青くて、浅瀬に打ち寄せる波は青くて透き通ってた。キレイだった。
岩だけだったのに、少しずつ砂も波に運ばれてきて、小魚が波にのってやってきた。
「小魚だ。パフィ、あれは食べちゃ駄目だよ」
稚魚は釣っちゃ駄目って村で教わった。
頰に猫ぱんちされる。
『それぐらい知ってる』
「今、マグロと同調してるから、小魚に襲いかかりたくなるのかなと思って」
僕がパフィと話をしている間に、ティール様が職員さんへの説明が終わったみたいで、ダンジョンを後にした。
「問題ないとは思うんですが、第二層の沖合は一週間後になります」
「分かりました」
ギルドを出て広場に戻ると、いくつもの屋台が並んでいた。
『肉が食べたい』
本当に肉が好きだなぁ……。
パフィに野菜を食べさせるのに苦労して、色んな料理を覚えたんだよね……。
「僕も食べたい」とノエルさん。
「肉、良いな。ここの肉は焼き加減が絶妙なんだよな」とラズロさんまで。
聞いていたら僕も食べたくなってしまった。
みんなで屋台に並んで、焼きたての肉にかぶりつく。
隣に座るナインさんは目をきらきらさせながら肉を食べていく。
僕の視線に気付いて、首を傾げる。
「アシュリー、食べない?」
「食べますよ。美味しそうに食べるなーって思って見てたんです」
ナインさんは頷く。
「美味しい。肉、柔らかい。しあわせ」
そう言って嬉しそうに笑うナインさんに、僕も嬉しくなって、「美味しいものを食べると幸せですよね」と答えて肉を頬張った。
それからもパフィがあれが食べたい、これが食べたいと言うものだから、すぐに僕はおなかがいっぱいになってしまって、フルールに食べてもらった。
フルールが串を食べているのを見たのか、屋台のおじさんに食べてもらえないかと言われたので、ありがたくもらった。串も捨てるとなったらお金がかかるんだろうし、フルールはいくらでも食べられそうだし。
「廃棄の税がかかるのが、悩みどころだよなぁ」
ラズロさんが言う。
「かと言って、フルールはアシュリーから離れないよ」
「廃棄物を城に持ってきてもらうのも現実的じゃありませんしねぇ……」
「僕と同じテイマーの人がスライムをテイムして、食べてもらうのはどうでしょう?」
名案だと思ったのに、うーん、とノエルさんに首を捻られてしまった。
「あのねアシュリー、フルールはとても分解吸収速度が早いけど、他のスライムはこんなに早くないんだよ。
だから大量のスライムが必要になってしまう」
「そうなんですね」
トキア様もフルールの速度は早いって言ってた。
「フルールならいくらでも食べられますけど、フルールだけを外には出せませんし、さっきの海みたいに、裏庭と繋いで、運ばれてきたものをフルールが食べるとか出来れば良いんですけどね」
「それですよ!」と、突然ティール様が叫ぶ。
皆が驚いた顔でティール様を見る。
「廃棄物処理場と裏庭をつなげて、フルールが分解吸収すれば良いんです。その際には廃棄物を燃やす為の燃料なども不要なんですから、無料で回収が可能になります。
そうすれば誰にも負担がかかる事なく減税が可能です」
おぉ、とラズロさんが感心する。
「ただの研究馬鹿かと思ってたぞ、ティール」
幼馴染だからか、言いたい放題です。
「悪くないかも知れないね」
ノエルさんが頷く。
「廃棄の為の税を払うのを惜しむ者が最近現れていて、不法に投棄されたゴミが散見されてるんだよ。その為に夜間の見回りをしてるぐらいなんだ」
「人を雇用してまでやる事ではないと城の兵士が巡回を担当しているが、勤務時間が長時間化している。
もしその案が通れば、店を営むものにとっても、城の兵士にとっても利点が大きい」
クリフさんがフルールを撫でる。
「実に建設的です。戻り次第殿下に奏上します」
フルールがおなかいっぱい食べられるようになるのは良いことだと思う。いつ見てもフルールはおなかが空いているみたいだから。
「フルール、ごはん沢山食べられるようになるって」
僕の言葉に、フルールは鼻をひくひくさせた。
心なし、嬉しそうに見える。
作り物だけれど、空は青くて、浅瀬に打ち寄せる波は青くて透き通ってた。キレイだった。
岩だけだったのに、少しずつ砂も波に運ばれてきて、小魚が波にのってやってきた。
「小魚だ。パフィ、あれは食べちゃ駄目だよ」
稚魚は釣っちゃ駄目って村で教わった。
頰に猫ぱんちされる。
『それぐらい知ってる』
「今、マグロと同調してるから、小魚に襲いかかりたくなるのかなと思って」
僕がパフィと話をしている間に、ティール様が職員さんへの説明が終わったみたいで、ダンジョンを後にした。
「問題ないとは思うんですが、第二層の沖合は一週間後になります」
「分かりました」
ギルドを出て広場に戻ると、いくつもの屋台が並んでいた。
『肉が食べたい』
本当に肉が好きだなぁ……。
パフィに野菜を食べさせるのに苦労して、色んな料理を覚えたんだよね……。
「僕も食べたい」とノエルさん。
「肉、良いな。ここの肉は焼き加減が絶妙なんだよな」とラズロさんまで。
聞いていたら僕も食べたくなってしまった。
みんなで屋台に並んで、焼きたての肉にかぶりつく。
隣に座るナインさんは目をきらきらさせながら肉を食べていく。
僕の視線に気付いて、首を傾げる。
「アシュリー、食べない?」
「食べますよ。美味しそうに食べるなーって思って見てたんです」
ナインさんは頷く。
「美味しい。肉、柔らかい。しあわせ」
そう言って嬉しそうに笑うナインさんに、僕も嬉しくなって、「美味しいものを食べると幸せですよね」と答えて肉を頬張った。
それからもパフィがあれが食べたい、これが食べたいと言うものだから、すぐに僕はおなかがいっぱいになってしまって、フルールに食べてもらった。
フルールが串を食べているのを見たのか、屋台のおじさんに食べてもらえないかと言われたので、ありがたくもらった。串も捨てるとなったらお金がかかるんだろうし、フルールはいくらでも食べられそうだし。
「廃棄の税がかかるのが、悩みどころだよなぁ」
ラズロさんが言う。
「かと言って、フルールはアシュリーから離れないよ」
「廃棄物を城に持ってきてもらうのも現実的じゃありませんしねぇ……」
「僕と同じテイマーの人がスライムをテイムして、食べてもらうのはどうでしょう?」
名案だと思ったのに、うーん、とノエルさんに首を捻られてしまった。
「あのねアシュリー、フルールはとても分解吸収速度が早いけど、他のスライムはこんなに早くないんだよ。
だから大量のスライムが必要になってしまう」
「そうなんですね」
トキア様もフルールの速度は早いって言ってた。
「フルールならいくらでも食べられますけど、フルールだけを外には出せませんし、さっきの海みたいに、裏庭と繋いで、運ばれてきたものをフルールが食べるとか出来れば良いんですけどね」
「それですよ!」と、突然ティール様が叫ぶ。
皆が驚いた顔でティール様を見る。
「廃棄物処理場と裏庭をつなげて、フルールが分解吸収すれば良いんです。その際には廃棄物を燃やす為の燃料なども不要なんですから、無料で回収が可能になります。
そうすれば誰にも負担がかかる事なく減税が可能です」
おぉ、とラズロさんが感心する。
「ただの研究馬鹿かと思ってたぞ、ティール」
幼馴染だからか、言いたい放題です。
「悪くないかも知れないね」
ノエルさんが頷く。
「廃棄の為の税を払うのを惜しむ者が最近現れていて、不法に投棄されたゴミが散見されてるんだよ。その為に夜間の見回りをしてるぐらいなんだ」
「人を雇用してまでやる事ではないと城の兵士が巡回を担当しているが、勤務時間が長時間化している。
もしその案が通れば、店を営むものにとっても、城の兵士にとっても利点が大きい」
クリフさんがフルールを撫でる。
「実に建設的です。戻り次第殿下に奏上します」
フルールがおなかいっぱい食べられるようになるのは良いことだと思う。いつ見てもフルールはおなかが空いているみたいだから。
「フルール、ごはん沢山食べられるようになるって」
僕の言葉に、フルールは鼻をひくひくさせた。
心なし、嬉しそうに見える。
15
あなたにおすすめの小説
スナイパー令嬢戦記〜お母様からもらった"ボルトアクションライフル"が普通のマスケットの倍以上の射程があるんですけど〜
シャチ
ファンタジー
タリム復興期を読んでいただくと、なんでミリアのお母さんがぶっ飛んでいるのかがわかります。
アルミナ王国とディクトシス帝国の間では、たびたび戦争が起こる。
前回の戦争ではオリーブオイルの栽培地を欲した帝国がアルミナ王国へと戦争を仕掛けた。
一時はアルミナ王国の一部地域を掌握した帝国であったが、王国側のなりふり構わぬ反撃により戦線は膠着し、一部国境線未確定地域を残して停戦した。
そして20年あまりの時が過ぎた今、皇帝マーダ・マトモアの崩御による帝国の皇位継承権争いから、手柄を欲した時の第二皇子イビリ・ターオス・ディクトシスは軍勢を率いてアルミナ王国への宣戦布告を行った。
砂糖戦争と後に呼ばれるこの戦争において、両国に恐怖を植え付けた一人の令嬢がいる。
彼女の名はミリア・タリム
子爵令嬢である彼女に戦後ついた異名は「狙撃令嬢」
542人の帝国将兵を死傷させた狙撃の天才
そして戦中は、帝国からは死神と恐れられた存在。
このお話は、ミリア・タリムとそのお付きのメイド、ルーナの戦いの記録である。
他サイトに掲載したものと同じ内容となります。
青い鳥と 日記 〜コウタとディック 幸せを詰め込んで〜
Yokoちー
ファンタジー
もふもふと優しい大人達に温かく見守られて育つコウタの幸せ日記です。コウタの成長を一緒に楽しみませんか?
(長編になります。閑話ですと登場人物が少なくて読みやすいかもしれません)
地球で生まれた小さな魂。あまりの輝きに見合った器(身体)が見つからない。そこで新米女神の星で生を受けることになる。
小さな身体に何でも吸収する大きな器。だが、運命の日を迎え、両親との幸せな日々はたった三年で終わりを告げる。
辺境伯に拾われたコウタ。神鳥ソラと温かな家族を巻き込んで今日もほのぼのマイペース。置かれた場所で精一杯に生きていく。
「小説家になろう」「カクヨム」でも投稿しています。
婚約破棄されたので森の奥でカフェを開いてスローライフ
あげは
ファンタジー
「私は、ユミエラとの婚約を破棄する!」
学院卒業記念パーティーで、婚約者である王太子アルフリードに突然婚約破棄された、ユミエラ・フォン・アマリリス公爵令嬢。
家族にも愛されていなかったユミエラは、王太子に婚約破棄されたことで利用価値がなくなったとされ家を勘当されてしまう。
しかし、ユミエラに特に気にした様子はなく、むしろ喜んでいた。
これまでの生活に嫌気が差していたユミエラは、元孤児で転生者の侍女ミシェルだけを連れ、その日のうちに家を出て人のいない森の奥に向かい、森の中でカフェを開くらしい。
「さあ、ミシェル! 念願のスローライフよ! 張り切っていきましょう!」
王都を出るとなぜか国を守護している神獣が待ち構えていた。
どうやら国を捨てユミエラについてくるらしい。
こうしてユミエラは、転生者と神獣という何とも不思議なお供を連れ、優雅なスローライフを楽しむのであった。
一方、ユミエラを追放し、神獣にも見捨てられた王国は、愚かな王太子のせいで混乱に陥るのだった――。
なろう・カクヨムにも投稿
勝手にダンジョンを創られ魔法のある生活が始まりました
久遠 れんり
ファンタジー
別の世界からの侵略を機に地球にばらまかれた魔素、元々なかった魔素の影響を受け徐々に人間は進化をする。
魔法が使えるようになった人類。
侵略者の想像を超え人類は魔改造されていく。
カクヨム公開中。
うちの孫知りませんか?! 召喚された孫を追いかけ異世界転移。ばぁばとじぃじと探偵さんのスローライフ。
かの
ファンタジー
孫の雷人(14歳)からテレパシーを受け取った光江(ばぁば64歳)。誘拐されたと思っていた雷人は異世界に召喚されていた。康夫(じぃじ66歳)と柏木(探偵534歳)⁈ をお供に従え、異世界へ転移。料理自慢のばぁばのスキルは胃袋を掴む事だけ。そしてじぃじのスキルは有り余る財力だけ。そんなばぁばとじぃじが、異世界で繰り広げるほのぼのスローライフ。
ばぁばとじぃじは無事異世界で孫の雷人に会えるのか⁈
積みかけアラフォーOL、公爵令嬢に転生したのでやりたいことをやって好きに生きる!
ぽらいと
ファンタジー
アラフォー、バツ2派遣OLが公爵令嬢に転生したので、やりたいことを好きなようにやって過ごす、というほのぼの系の話。
悪役等は一切出てこない、優しい世界のお話です。
薬漬けレーサーの異世界学園生活〜無能被験体として捨てられたが、神族に拾われたことで、ダークヒーローとしてナンバーワン走者に君臨します〜
仁徳
ファンタジー
少年はとある研究室で実験動物にされていた。毎日薬漬けの日々を送っていたある日、薬を投与し続けても、魔法もユニークスキルも発動できない落ちこぼれの烙印を押され、魔の森に捨てられる。
森の中で魔物が現れ、少年は死を覚悟したその時、1人の女性に助けられた。
その後、女性により隠された力を引き出された少年は、シャカールと名付けられ、魔走学園の唯一の人間魔競走者として生活をすることになる。
これは、薬漬けだった主人公が、走者として成り上がり、ざまぁやスローライフをしながら有名になって、世界最強になって行く物語
今ここに、新しい異世界レースものが開幕する!スピード感のあるレースに刮目せよ!
競馬やレース、ウマ娘などが好きな方は、絶対に楽しめる内容になっているかと思います。レース系に興味がない方でも、異世界なので、ファンタジー要素のあるレースになっていますので、楽しめる内容になっています。
まずは1話だけでも良いので試し読みをしていただけると幸いです。
外れスキル【削除&復元】が実は最強でした~色んなものを消して相手に押し付けたり自分のものにしたりする能力を得た少年の成り上がり~
名無し
ファンタジー
突如パーティーから追放されてしまった主人公のカイン。彼のスキルは【削除&復元】といって、荷物係しかできない無能だと思われていたのだ。独りぼっちとなったカインは、ギルドで仲間を募るも意地悪な男にバカにされてしまうが、それがきっかけで頭痛や相手のスキルさえも削除できる力があると知る。カインは一流冒険者として名を馳せるという夢をかなえるべく、色んなものを削除、復元して自分ものにしていき、またたく間に最強の冒険者へと駆け上がっていくのだった……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる