161 / 271
第三章 ダンジョンメーカーのお仕事
039-4
しおりを挟む
魔法薬学の塔の近くに、ダンジョンを作った。
作る場所、大きさ、ダンジョン内をどんな風に作りたいかが細かく書かれた紙を持ったティール様に指示されながら。
言われた通りにダンジョンの環境を整えているけど、次から次へ指示がくるものだから、一体どれだけ書かれているのだろうかと疑問に思ってしまう。
そんな僕の視線に気付いて、ティール様が困ったように笑う。
「すみません、本当に。指定が細かいですよね」
「いえ、こんなに色々と整えなくちゃいけないぐらい、難しい場所で薬草は育つんだなって思ったんです」
パフィの元には色んな薬草があって、それを僕はたまにもらってた。その薬草が一体どれだけ貴重なものなのか、全然知らずに。
だからこうして、空気が薄めだとか、木は少なめだとか、朝と夜のダンジョン内の暖かさを変えたい、と言われて初めて、北の国から仕入れる理由が分かった。
しかも、このダンジョンでは階層を十も作る。裏庭のダンジョンと違って、魔力を使って草木を作るのではなくて、魔法薬学の人達が育てるのだそう。
育成方法はもう知ってて、種も持っているんだって。研究の為に持っていたけど、使える日がくるなんて、と噂のレンレンさんが興奮して大変だったって、ノエルさんが呟いてた。
ダンジョンを維持する為の魔力供給は、魔法薬学の人たちがするみたい。
「うーん、ここまで徹底する必要はないと思われるので、単純にレンレンの趣味と言うか、探究心と申しますか……まぁ、分からなくもないんですけどね。
いずれにせよ、面倒をかけてすみません」
ティール様に謝られて、そんな事ないです、と謝っていたら、ずっとお互いに謝り続けてしまって、ラズロさんにいい加減やめとけ、って呆れられてしまった。
一日置きに作っていって、二週間程かけて、薬草ダンジョン(ラズロさんが呼び始めて、その名前で定着した。レンレンさんはもっと別の名前が良いと言ってるみたい)は完成する。
終わる頃には、パフィ、帰って来るのかな。
ギルドに作った海に多くの人たちが出入りするようになって、デボラさんの店が再開したんだって。
北の国から魚が入らなくなって、このままじゃ店を畳むしかないって、らしくない様子で言ってたとラズロさんから聞いてたから、ほっとした。
海で魚を獲るのに使う網が必要になって、その網を海で働く男の人の家族が作ってると言う話も聞いた。
網に使われるのは麻や木綿の糸だったり、藁だったり。普段なら捨ててしまうような糸を縒り集めて作る。なんだか楽しそう。
働く場所が出来て、働く人が増えて、また少し王都が活気を取り戻してきてるんだって、ラズロさんたちの話を通して知って、嬉しくなる。
僕も買い出しに行きたいんだけど、食堂を利用する人が増えたのもあって仕込みに忙しくて、城から出られない。
あと、何があるか分からないから、一人で出かけては駄目だとパフィに言われてる。
薬草ダンジョンが作り終えたら、裏庭のダンジョンの第二層を夏に変えたい。
夏のあの暑さの中でも香辛料になる木は育つらしいとナインさんから教えてもらった。
それから、香辛料も色々あるんだと初めて知った。
目移りしてしまうけど、使い勝手が良さそうなものをまずは育ててみることにした。
その為の苗とか苗を買ってもらえることになったのだけど、なんだか申し訳ない気持ちになってしまう。
高いんじゃないかなぁ……。
「アシュリー、心配ない」
隣で香辛料の本を読んでいたナインさんが言った。
「一度育つ、後はダンジョンの魔力、育ててくれる」
……あ、そうか。
第一の春の階層ではずっとスオウの花が咲いてる。ダンジョン内の魔力を使って。
「ダンジョンの魔力で最初から作れたら便利ですけど、そんなことは出来るんでしょうか?」
ナインさんは首を横に振る。
「無理。一度でも触れないと、再現出来ない。
実がなるようなもの、もっと難しい。
種から苗、苗から幼木、成木、花、実、一連の流れ必要」
「そう簡単にはいかないんですね」
とは言っても、一度育てられたなら次からはダンジョンが育ててくれると言うのだし、それはとてもとても、凄いことなのだから、頑張ろう、うん。
「僕も、一緒に育てる」
うん、とナインさんが力強く頷いた。
「ありがとうございます、ナインさん」
「アシュリーのごはん、もっと美味しくなる、とっても幸せ」
ここに来たばっかりの時はあんなに痩せていたナインさんだけど、今はそんなの分からないぐらいになった。
僕の作る料理を美味しいと言って食べてくれる。
ちょっとノエルさんっぽくなってきたような気もしないけど、美味しいものを食べると幸せになるのは同感です。
作る場所、大きさ、ダンジョン内をどんな風に作りたいかが細かく書かれた紙を持ったティール様に指示されながら。
言われた通りにダンジョンの環境を整えているけど、次から次へ指示がくるものだから、一体どれだけ書かれているのだろうかと疑問に思ってしまう。
そんな僕の視線に気付いて、ティール様が困ったように笑う。
「すみません、本当に。指定が細かいですよね」
「いえ、こんなに色々と整えなくちゃいけないぐらい、難しい場所で薬草は育つんだなって思ったんです」
パフィの元には色んな薬草があって、それを僕はたまにもらってた。その薬草が一体どれだけ貴重なものなのか、全然知らずに。
だからこうして、空気が薄めだとか、木は少なめだとか、朝と夜のダンジョン内の暖かさを変えたい、と言われて初めて、北の国から仕入れる理由が分かった。
しかも、このダンジョンでは階層を十も作る。裏庭のダンジョンと違って、魔力を使って草木を作るのではなくて、魔法薬学の人達が育てるのだそう。
育成方法はもう知ってて、種も持っているんだって。研究の為に持っていたけど、使える日がくるなんて、と噂のレンレンさんが興奮して大変だったって、ノエルさんが呟いてた。
ダンジョンを維持する為の魔力供給は、魔法薬学の人たちがするみたい。
「うーん、ここまで徹底する必要はないと思われるので、単純にレンレンの趣味と言うか、探究心と申しますか……まぁ、分からなくもないんですけどね。
いずれにせよ、面倒をかけてすみません」
ティール様に謝られて、そんな事ないです、と謝っていたら、ずっとお互いに謝り続けてしまって、ラズロさんにいい加減やめとけ、って呆れられてしまった。
一日置きに作っていって、二週間程かけて、薬草ダンジョン(ラズロさんが呼び始めて、その名前で定着した。レンレンさんはもっと別の名前が良いと言ってるみたい)は完成する。
終わる頃には、パフィ、帰って来るのかな。
ギルドに作った海に多くの人たちが出入りするようになって、デボラさんの店が再開したんだって。
北の国から魚が入らなくなって、このままじゃ店を畳むしかないって、らしくない様子で言ってたとラズロさんから聞いてたから、ほっとした。
海で魚を獲るのに使う網が必要になって、その網を海で働く男の人の家族が作ってると言う話も聞いた。
網に使われるのは麻や木綿の糸だったり、藁だったり。普段なら捨ててしまうような糸を縒り集めて作る。なんだか楽しそう。
働く場所が出来て、働く人が増えて、また少し王都が活気を取り戻してきてるんだって、ラズロさんたちの話を通して知って、嬉しくなる。
僕も買い出しに行きたいんだけど、食堂を利用する人が増えたのもあって仕込みに忙しくて、城から出られない。
あと、何があるか分からないから、一人で出かけては駄目だとパフィに言われてる。
薬草ダンジョンが作り終えたら、裏庭のダンジョンの第二層を夏に変えたい。
夏のあの暑さの中でも香辛料になる木は育つらしいとナインさんから教えてもらった。
それから、香辛料も色々あるんだと初めて知った。
目移りしてしまうけど、使い勝手が良さそうなものをまずは育ててみることにした。
その為の苗とか苗を買ってもらえることになったのだけど、なんだか申し訳ない気持ちになってしまう。
高いんじゃないかなぁ……。
「アシュリー、心配ない」
隣で香辛料の本を読んでいたナインさんが言った。
「一度育つ、後はダンジョンの魔力、育ててくれる」
……あ、そうか。
第一の春の階層ではずっとスオウの花が咲いてる。ダンジョン内の魔力を使って。
「ダンジョンの魔力で最初から作れたら便利ですけど、そんなことは出来るんでしょうか?」
ナインさんは首を横に振る。
「無理。一度でも触れないと、再現出来ない。
実がなるようなもの、もっと難しい。
種から苗、苗から幼木、成木、花、実、一連の流れ必要」
「そう簡単にはいかないんですね」
とは言っても、一度育てられたなら次からはダンジョンが育ててくれると言うのだし、それはとてもとても、凄いことなのだから、頑張ろう、うん。
「僕も、一緒に育てる」
うん、とナインさんが力強く頷いた。
「ありがとうございます、ナインさん」
「アシュリーのごはん、もっと美味しくなる、とっても幸せ」
ここに来たばっかりの時はあんなに痩せていたナインさんだけど、今はそんなの分からないぐらいになった。
僕の作る料理を美味しいと言って食べてくれる。
ちょっとノエルさんっぽくなってきたような気もしないけど、美味しいものを食べると幸せになるのは同感です。
6
あなたにおすすめの小説
劣悪だと言われたハズレ加護の『空間魔法』を、便利だと思っているのは僕だけなのだろうか?
はらくろ
ファンタジー
海と交易で栄えた国を支える貴族家のひとつに、
強くて聡明な父と、優しくて活動的な母の間に生まれ育った少年がいた。
母親似に育った賢く可愛らしい少年は優秀で、将来が楽しみだと言われていたが、
その少年に、突然の困難が立ちはだかる。
理由は、貴族の跡取りとしては公言できないほどの、劣悪な加護を洗礼で授かってしまったから。
一生外へ出られないかもしれない幽閉のような生活を続けるよりも、少年は屋敷を出て行く選択をする。
それでも持ち前の強く非常識なほどの魔力の多さと、負けず嫌いな性格でその困難を乗り越えていく。
そんな少年の物語。
転生したら神だった。どうすんの?
埼玉ポテチ
ファンタジー
転生した先は何と神様、しかも他の神にお前は神じゃ無いと天界から追放されてしまった。僕はこれからどうすれば良いの?
人間界に落とされた神が天界に戻るのかはたまた、地上でスローライフを送るのか?ちょっと変わった異世界ファンタジーです。
異世界ママ、今日も元気に無双中!
チャチャ
ファンタジー
> 地球で5人の子どもを育てていた明るく元気な主婦・春子。
ある日、建設現場の事故で命を落としたと思ったら――なんと剣と魔法の異世界に転生!?
目が覚めたら村の片隅、魔法も戦闘知識もゼロ……でも家事スキルは超一流!
「洗濯魔法? お掃除召喚? いえいえ、ただの生活の知恵です!」
おせっかい上等! お節介で世界を変える異世界ママ、今日も笑顔で大奮闘!
魔法も剣もぶっ飛ばせ♪ ほんわかテンポの“無双系ほんわかファンタジー”開幕!
目つきが悪いと仲間に捨てられてから、魔眼で全てを射貫くまで。
桐山じゃろ
ファンタジー
高校二年生の横伏藤太はある日突然、あまり接点のないクラスメイトと一緒に元いた世界からファンタジーな世界へ召喚された。初めのうちは同じ災難にあった者同士仲良くしていたが、横伏だけが強くならない。召喚した連中から「勇者の再来」と言われている不東に「目つきが怖い上に弱すぎる」という理由で、森で魔物にやられた後、そのまま捨てられた。……こんなところで死んでたまるか! 奮起と同時に意味不明理解不能だったスキル[魔眼]が覚醒し無双モードへ突入。その後は別の国で召喚されていた同じ学校の女の子たちに囲まれて一緒に暮らすことに。一方、捨てた連中はなんだか勝手に酷い目に遭っているようです。※小説家になろう、カクヨムにも同じものを掲載しています。
外れスキル【削除&復元】が実は最強でした~色んなものを消して相手に押し付けたり自分のものにしたりする能力を得た少年の成り上がり~
名無し
ファンタジー
突如パーティーから追放されてしまった主人公のカイン。彼のスキルは【削除&復元】といって、荷物係しかできない無能だと思われていたのだ。独りぼっちとなったカインは、ギルドで仲間を募るも意地悪な男にバカにされてしまうが、それがきっかけで頭痛や相手のスキルさえも削除できる力があると知る。カインは一流冒険者として名を馳せるという夢をかなえるべく、色んなものを削除、復元して自分ものにしていき、またたく間に最強の冒険者へと駆け上がっていくのだった……。
【完結】魔術師なのはヒミツで薬師になりました
すみ 小桜(sumitan)
ファンタジー
ティモシーは、魔術師の少年だった。人には知られてはいけないヒミツを隠し、薬師(くすし)の国と名高いエクランド国で薬師になる試験を受けるも、それは年に一度の王宮専属薬師になる試験だった。本当は普通の試験でよかったのだが、見事に合格を果たす。見た目が美少女のティモシーは、トラブルに合うもまだ平穏な方だった。魔術師の組織の影がちらつき、彼は次第に大きな運命に飲み込まれていく……。
神樹の里で暮らす創造魔法使い ~幻獣たちとののんびりライフ~
あきさけ
ファンタジー
貧乏な田舎村を追い出された少年〝シント〟は森の中をあてどなくさまよい一本の新木を発見する。
それは本当に小さな新木だったがかすかな光を帯びた不思議な木。
彼が不思議そうに新木を見つめているとそこから『私に魔法をかけてほしい』という声が聞こえた。
シントが唯一使えたのは〝創造魔法〟といういままでまともに使えた試しのないもの。
それでも森の中でこのまま死ぬよりはまだいいだろうと考え魔法をかける。
すると新木は一気に生長し、天をつくほどの巨木にまで変化しそこから新木に宿っていたという聖霊まで姿を現した。
〝この地はあなたが創造した聖地。あなたがこの地を去らない限りこの地を必要とするもの以外は誰も踏み入れませんよ〟
そんな言葉から始まるシントののんびりとした生活。
同じように行き場を失った少女や幻獣や精霊、妖精たちなど様々な面々が集まり織りなすスローライフの幕開けです。
※この小説はカクヨム様でも連載しています。アルファポリス様とカクヨム様以外の場所では公開しておりません。
神の加護を受けて異世界に
モンド
ファンタジー
親に言われるまま学校や塾に通い、卒業後は親の進める親族の会社に入り、上司や親の進める相手と見合いし、結婚。
その後馬車馬のように働き、特別好きな事をした覚えもないまま定年を迎えようとしている主人公、あとわずか数日の会社員生活でふと、何かに誘われるように会社を無断で休み、海の見える高台にある、神社に立ち寄った。
そこで野良犬に噛み殺されそうになっていた狐を助けたがその際、野良犬に喉笛を噛み切られその命を終えてしまうがその時、神社から不思議な光が放たれ新たな世界に生まれ変わる、そこでは自分の意思で何もかもしなければ生きてはいけない厳しい世界しかし、生きているという実感に震える主人公が、力強く生きるながら信仰と奇跡にに導かれて神に至る物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる