前代未聞のダンジョンメーカー

黛 ちまた

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第三章 ダンジョンメーカーのお仕事

039-5

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 薬草ダンジョンの五階層目を、ティール様に指示されながら作っていたら、噂のレンレン様に会った。……と言うか、いきなり飛び込んで来たと言うか。
 笑顔で、目の前に立った瞬間に両手を掴まれてぶんぶんと上下に振られた。

「わーっ! 君が噂のアシュリーなんだね! 初めまして僕レンレン! 僕の事も噂で聞いていると思うけど、全くのデマだから気にしないでね! 僕は純粋に魔法薬学を愛する至って真面目で探究心旺盛な青年なだけだから! それでアシュリーは魔法薬学を知ってるかな?! 知らなかったら是非この後説明させて欲しいんだけどどうかな?!」

 ……凄い。
 息継ぎ、何処でしてるんだろう……。

「いえ、大丈夫です」

 とりあえず僕はやる事が沢山あるし、レンレン様もやる事沢山ある立場だろうし。

「魔法薬学の素晴らしさを知っておいた方が人生に輝きが増すよ?! 知らないなんて絶対に損をする! 断言する! むしろ人として不完全と言ってもいいくらいなんだよ?!」
「ティール様、次の指示をもらえますか?」

 レンレン様は自分のペースに強引に巻き込んでいく人なんだね。
 答えても答えなくても変わらないだろうし、ダンジョンを作るのに両手が使えなくても平気だから、進めてしまおうかな……。

「あ、あぁ……ハイ」

 ティール様は僕とレンレン様の顔を見比べた後、ぎこちなく頷いた。
 安心して下さい、僕もレンレン様への態度、よくないとは分かっているんです。

 ティール様の指示通りに階層内の環境を変える。空気が冷えたのを感じたレンレン様がダンジョン内を見渡して、引き続き興奮した様子で話す。

「凄いね、アシュリー! 君のその能力はまさに、魔法薬学の為のものと言って過言じゃないと思うよ! 魔法薬学はね」
『五月蝿いな』

 ぽん、と弾ける音をさせて目の前にマグロ──の姿をしたパフィが現れた。
 レンレン様の口には大きな紙みたいなものが貼られていて、それを剥がそうとレンレン様は必死だ。

「むーーーーっ!!」

「おかえり、パフィ」

『戻ったぞ。それにしてもまだ完成しておらんとは、おまえは本当に愚鈍だな』

 呆れ顔の黒猫。
 ……素朴な疑問なんだけど、魔女の会合には元の姿で行ったんだよね?

「だいぶ慣れてはきたんだけどね」

「薬草ダンジョンはレンレンの指定が無駄に細かい為、アシュリーには手間をかけさせてしまっている上に、階層が十に及ぶ為時間がかかっているんです。申し訳ありません」

 申し訳なさそうに謝るティール様。その指定をしたレンレン様はまだ紙を剥がせなくてもがいてる。
 ちら、とパフィはレンレン様を見る。

『まぁ、薬草はそういうものだから仕方ないが。こちらを早く済ませて裏庭のダンジョンの構築に力を注がねばならん』

 会合でアマーリアーナ様に何か言われたりしたのかな?

『香辛料をとっとと作らせ、アシュリーの料理の幅を広げねばならんからな。その為の本も探してきた』

 あぁ、うん。
 パフィはそういう人だった。

 マグロを抱き上げて頭を撫でる。

『なんだ、突然』

「おかえり、パフィ」

『さっきも言ったろう』

「もう一度言いたくなったんだ」

 ふん、と鼻で笑いながら、嬉しそうに見えた。

 良かった、パフィが無事に戻って来て。
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