前代未聞のダンジョンメーカー

黛 ちまた

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第四章 魔女の国

063-1

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 パフィ──魔女 パシュパフィッツェは、僕にとって、母さんのようであり、姉さんでもあり、師匠でもあった。
 七才の時に自分のスキルを決められて、皆のように立派なスキルもなくって、悔しかった。
 村に住む魔女はなんでも解決してくれたから、僕の悩みも解決してくれる、勝手にそう信じて、魔女パフィの住む庵を訪れた。

 パフィはいつものように二日酔いで、面倒くさそうに僕の相手をした。
 僕が願いを口にしたら、愚か者め、と罵られた。
 それから、棚にある薬を取って来いと命令された。二日酔いの薬だった。
 毎日毎日、スキルを強くして欲しいと願う僕を、いつも面倒そうにしながらも相手してくれた。

"よし、おまえを今日からこのパシュパフィッツェ様の弟子にしてやろう"






「アシュリー、少し寝たほうがいい」

 パフィの身体は城の中に運び込まれた。キルヒシュタフ様の身体も一緒に。細かい破片は無理だったけど、冬の王──パフィの父さんの魂が入っていた核の破片も。
 いつの間に来たのか、使い魔の黒猫マグロはパフィのそばにやってきた。すぐそばに座ると、丸まって動かなくなった。
 黒猫マグロまでいなくなってしまう気がして、心がちぎれちゃうんじゃないかってぐらい痛かった。

 僕はパフィのそばから離れたくなかった。

「やはりこうなってしまったわね」

 白と黒の大きな蛇の頭に座った女の人と、雪のように真っ白で、おでこから角が出た馬に座る女の人。
 蛇に乗ってるのは、アマーリアーナ様。

「秩序の魔女 アマーリアーナ様と、予言の魔女 ヴィヴィアンナ様……」

 真っ白い髪に真っ赤な目をしたヴィヴィアンナ様は、馬から降りると、パフィのそばで屈んだ。アマーリアーナ様もその隣に座った。

「キルヒシュタフはね、北の国の第三王子と恋に落ちたのよ」

 昔話を語るように、アマーリアーナ様が話し始めた。

「人の身には多すぎる魔力と、魔法使いのスキルを与えられた王子は、己の力試しに世界を旅してまわって、キルヒシュタフと出会ったの。
人とはほとんど接点をもたなかったキルヒシュタフの孤独を王子が埋めて、パシュパフィッツェを身籠ったのよ。
幸せは長く続かないわ。人と、私たち魔女は生きる時間が違うから」

 同じ時間を過ごせても、同じ長さを生きることはできない。パフィがキルヒシュタフ様に言った言葉。

「王子が死んだことをキルヒシュタフは受け入れられなかった。そして、あることを思い付くのよ」

 冬の王の魂を核に入れて、魔力のある人間にいれること……?

「……キルヒシュタフの計画は上手くいかなかった。魔力を多く持つ人間はかつてほどいなくて、その数が減っていたの。彼女はこの大陸の南側の国々から魔力を奪うことを思いつく」

 そこまで話して、アマーリアーナ様はため息を吐いた。ヴィヴィアンナ様はずっと、パフィの髪を撫でている。子供にするみたいに。
 魔女の中で一番下のパフィを、妹みたいに思っていたのかもしれない。
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