アポカリプスな時代はマイペースな俺に合っていたらしい

黒城白爵

文字の大きさ
52 / 76
第一章

第五十二話 マイン

しおりを挟む


 ◆◇◆◇◆◇


「ーー平和だな……」

「平和ですネ」


 今いる場所は、元々は富裕層向けに作られていた高級ホテルの最上階。
 その最上階に備えつけられた屋外プールの傍にて日光浴をしている最中だ。
 用意されたサマーベッドの上で寝そべる俺の横には、同じようにサマーベッドに寝そべっているソフィアの姿がある。
 俺もソフィアも水着姿なので、横に視線を向けると大変破壊力のある絶景がそこにはあった。
 ソフィアに用意された水着が白のビキニだったせいで、彼女が水着姿を披露して以降、自分の中の理性という名の天使と本能という名の悪魔が戦い続けているのを感じる。なお、俺の水着はトランクスタイプだ。


「……今の世界でここまで夏を満喫しているのは貴方達ぐらいでしょうね」

「そんなことはないと思うけど、まぁ少数派だろうな」

「そうでしょう。はい、どうぞ。ペットボトルだけどね」

「ありがとう、シオン」

「ありがとうございマス、シオンさん」

「どういたしまして」


 室内からドリンクを持ってきてくれた水着姿のシオンに礼を言う。
 黒のビキニを着ているシオンがソフィアにドリンクを渡しているのを横目で眺めながら、ここ数日で起きたことを思い返す。


 敵性超人であるグルメに勝利した後、救出した超人部隊の隊員達と共に先にテレビ局を脱出していたソフィア達と無事に合流できた。
 合流後は、バイクに跨がったシオンの先導で彼女達の拠点である臨時政府がある場所へと移動した。
 暫くして到着した場所は、世界変革前から開発が進んでいた国際的な超大規模イベント会場があるエリアだった。
 完成目前だったこの場所に臨時政府が置かれているらしい。
 今現在も改修・開発・増築が進んでおり、日中は常に工事の音がどこからか聞こえてくる。

 
 拠点エリア内にある唯一の病院前で隊員達を下ろすと、そのまま此処のトップと面談することになった。
 相手側は、俺達が疲れているだろうから後日にと言ってくれたが、面倒なのはさっさと済ませたかったので、時間の都合がつくならばとすぐに面談を希望した。
 相手側のスケジュールに俺との交渉が元々入っていたのもあって、面談はすぐに行われた。
 そのトップとの交渉の詳細はさておき、交渉結果は概ね此方の希望通りになった。
 まぁ、概ねとあるように予定とは異なる点もあるのだが……。
 とまぁ、そういった交渉の末に今に至る。


「そうそう。さっき上から連絡があったわよ」

「連絡?」


 俺を挟んでソフィアの反対側にあるサマーベッドに座ったシオンがそんなことを告げてきた。
 シオンの方に振り向くと、此方も絶景だった。
 彼女の胸部はソフィアほどのサイズはないーーとは言っても十分にデカいーーが、こうして改めて見ると腰の細さや脚のエロさに関しては彼女の勝ちだな。
 年齢が近いなどの理由から、互いに敬語無しで話すようになったのもあって色々と見方が変わった影響もあるんだろうけど。


「貴方のコードネームについてよ」

「……コードネームって、やっぱり気恥ずかしさがあるんだが」

「慣れれば使いやすいわよ」

「そりゃあ、シオンは本名の紫音のまんまじゃないか」

「能力に根差した良い名前がなかったんだから仕方ないじゃない」


 コードネームというのは臨時政府の方で有力な超人達に付けられる、言わば個々人の情報を管理する上での仮の名前だ。
 中には世界変革前の自分とは区別するためにコードネームを嬉々として名乗る者もいるらしい。
 基本的には代表的な能力から付けられるが、そういった能力が無い者が殆どであるためコードネームがある者は少数派だ。
 シオンには〈魔眼〉という発動時に本来紫色である両眼が紅く染まる代表的な能力があるが、仮に付けられたコードネームを本人が嫌がったのでそのまま〈シオン〉となっていた。
 おそらく、他にシオンという名の超人がいないから通ったのだろう。


「で、なんて付けられたんだ?」

「貴方のコードネームは〈鉱山マイン〉よ」

「マインねぇ。まぁ、そのまんまだな」

「どちらかというとお兄さんは〈地雷マイン〉では、アイタッ!?」


 口は災いの元というのをソフィアに教えるべく、指先から生成し伸ばした金属触手でソフィアにデコピンをしておく。


「そちらの意味もあるわよ。取り扱い注意という意味で」

「……ま、甘く見られるよりかは良いけどさ」

「シオンさん、私にはコードネームはないんデスカ?」

「ソフィアは〈ウインド〉よ」

「し、シンプル過ぎマス。それならソフィアでいいデス」

「でしょうね。私と同じで他に同名がいないから要望は通ると思うわよ。〈ソフィア〉にしておく?」

「お願いしマス」


 やっぱりそういう理由から本名でオーケーが出てるんだな。
 俺の本名は……まぁ、普通だからな。確実に要望は通らないだろう。
 二つの意味を持たせてある点からも、俺の名前は〈マイン〉で確定か。


「そういうわけだから、監視役兼特設探索部隊の一員として私も行動を共にすることになったからよろしくね」

「……接待役から監視役に昇進したな」

「あら、私じゃご不満?」

「そんなことはないさ。全く知らない相手が来るよりはいいし、どうせなら美女に来て欲しいぐらいには俺も男だしな」


 臨時政府との交渉の末に、俺は俺用に特設された危険地域探索部隊の隊長の座に就任した。
 政府の力の恩恵を最大限受けつつ、自由に行動できる外部委託的なポジションを得るべく交渉したのだが、流石にそう上手くはいかず色々と折り合いを付けた結果、正式に臨時政府に属することになった。
 とはいえ、俺用に特設されたことからも分かるように、俺が希望していた自由行動権は緊急時を除けば保証されているし、恩恵も最大限受けられる。
 この高級ホテルの最上階についても、恩恵の一つとして俺の此処での拠点にと与えられたものだ。
 他にも色々恩恵はあるが、まぁそれについては追々だな。


「金属の身体に変化できても、そういう欲はちゃんとあるのね?」

「ああ。その点はちゃんと生物の枠組みらしい」


 グルメを倒した影響によって、〈錬金鎧〉は〈錬金竜〉へと名称を変更するほどに金属鎧化の時のシルエットは変わった。
 〈錬金竜〉となったのは、状況からして〈錬金鎧〉がグルメの異能である〈捕食〉を取り込んだ結果らしく、細々と能力が変化したことにより、俺の臨時政府での価値が戦闘面以外でも爆上がりしていた。
 俺一人のために部隊が新設されるなんていう、超特別待遇になっているのもそういった理由からだろう。
 危険地域ーー今いる政府エリアの外のことーーの探索という名の自由行動以外では、俺に生産・研究依頼が来ることがあると言っていた点からも間違いあるまい。
 シオンを監視役兼部隊員として付けられたのも配慮の一つと思われる。ちなみにソフィアも部隊員だ。


「それは良かったわ。情勢が安定したら、マインにはコッチの方でも頑張って貰いたかったから」

「コッチ? ぶっ」


 俺のサマーベッドの縁に座ってきたシオンが意味深な発言をしながら俺の身体に触れてきた。
 その意味について考えようとしていたら、横から飛んできたソフィアが操る風に頭部が包み込まれ、思考を邪魔された。
 風が吹く音に遮られて周りの音が全く聞こえないが、風の壁の向こう側に薄っすらと見える人影からシオンとソフィアが何かを話しているのが確認できた。

 世界変革後、生き延びるために好きなように行動してきた結果、色々と騒がしくも安定した環境を手に入れた。
 自宅から元自宅へと変わったマンションに置いてある物資を持ち込むなど、やらねばならないことは多くある。
 それでも、今後も自分のペースを維持したまま、この危うくも刺激的な終末世界を生き抜いて行くとしよう。



 



☆これにて第一章終了です。
 現代世界がファンタジーな変革を遂げた黎明期をイメージした章でしたが、如何だったでしょうか?
 当初こそ世界変革への適応力が高すぎてサイコパス感のある主人公でしたが、庇護者兼仲間なソフィアが加わってからはマトモに見えるようになりましたネ。
 なお、別作品での反省を活かして一章から女性キャラを前に出していった次第です。

 一章の着地点は少し悩みましたが、現実的に悠々自適に過ごす環境を得られるラインはこの辺だと個人的に判断し決定しました。
 この作品は不定期更新の予定だったのに、気付けば毎日更新していましたね……。
 良くも悪くも二作品の更新が重なった時の経験が出来たのは、今後の更新の糧になりそうです。
 二章については既にプロットはできていますが、脳を休めたいので日程は未定です。
 更新再開した時はまたよろしくお願いします。


 ここまで読んで、この作品を面白い・面白くなりそうと思われましたら、お気に入り登録をして頂けると大変ありがたいです。
 更新を続ける励みになります。
 どうぞよろしくお願い致します。



 
 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ダンジョンに行くことができるようになったが、職業が強すぎた

ひまなひと
ファンタジー
主人公がダンジョンに潜り、ステータスを強化し、強くなることを目指す物語である。 今の所、170話近くあります。 (修正していないものは1600です)

シスターヴレイヴ!~上司に捨て駒にされ会社をクビになり無職ニートになった俺が妹と異世界に飛ばされ妹が勇者になったけど何とか生きてます~

尾山塩之進
ファンタジー
鳴鐘 慧河(なるがね けいが)25歳は上司に捨て駒にされ会社をクビになってしまい世の中に絶望し無職ニートの引き籠りになっていたが、二人の妹、優羽花(ゆうか)と静里菜(せりな)に元気づけられて再起を誓った。 だがその瞬間、妹たち共々『魔力満ちる世界エゾン・レイギス』に異世界召喚されてしまう。 全ての人間を滅ぼそうとうごめく魔族の長、大魔王を倒す星剣の勇者として、セカイを護る精霊に召喚されたのは妹だった。 勇者である妹を討つべく襲い来る魔族たち。 そして慧河より先に異世界召喚されていた慧河の元上司はこの異世界の覇権を狙い暗躍していた。 エゾン・レイギスの人間も一枚岩ではなく、様々な思惑で持って動いている。 これは戦乱渦巻く異世界で、妹たちを護ると一念発起した、勇者ではない只の一人の兄の戦いの物語である。 …その果てに妹ハーレムが作られることになろうとは当人には知るよしも無かった。 妹とは血の繋がりであろうか? 妹とは魂の繋がりである。 兄とは何か? 妹を護る存在である。 かけがいの無い大切な妹たちとのセカイを護る為に戦え!鳴鐘 慧河!戦わなければ護れない!

【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~

シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。 木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。 しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。 そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。 【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】

天城の夢幻ダンジョン攻略と無限の神空間で超絶レベリング ~ガチャスキルに目覚めた俺は無職だけどダンジョンを攻略してトップの探索士を目指す~

仮実谷 望
ファンタジー
無職になってしまった摩廻天重郎はある日ガチャを引くスキルを得る。ガチャで得た鍛錬の神鍵で無限の神空間にたどり着く。そこで色々な異世界の住人との出会いもある。神空間で色んなユニットを配置できるようになり自分自身だけレベリングが可能になりどんどんレベルが上がっていく。可愛いヒロイン多数登場予定です。ガチャから出てくるユニットも可愛くて強いキャラが出てくる中、300年の時を生きる謎の少女が暗躍していた。ダンジョンが一般に知られるようになり動き出す政府の動向を観察しつつ我先へとダンジョンに入りたいと願う一般人たちを跳ね除けて天重郎はトップの探索士を目指して生きていく。次々と美少女の探索士が天重郎のところに集まってくる。天重郎は最強の探索士を目指していく。他の雑草のような奴らを跳ね除けて天重郎は最強への道を歩み続ける。

ダンジョン菌にまみれた、様々なクエストが提示されるこの現実世界で、【クエスト簡略化】スキルを手にした俺は最強のスレイヤーを目指す

名無し
ファンタジー
 ダンジョン菌が人間や物をダンジョン化させてしまう世界。ワクチンを打てば誰もがスレイヤーになる権利を与えられ、強化用のクエストを受けられるようになる。  しかし、ワクチン接種で稀に発生する、最初から能力の高いエリート種でなければクエストの攻略は難しく、一般人の佐嶋康介はスレイヤーになることを諦めていたが、仕事の帰りにコンビニエンスストアに立ち寄ったことで運命が変わることになる。

異世界帰りの英雄は理不尽な現代でそこそこ無双する〜やりすぎはいかんよ、やりすぎは〜

mitsuzoエンターテインメンツ
ファンタジー
<これからは「週一投稿(できれば毎週土曜日9:00)」または「不定期投稿」となります> 「異世界から元の世界に戻るとレベルはリセットされる」⋯⋯そう女神に告げられるも「それでも元の世界で自分の人生を取り戻したい」と言って一から出直すつもりで元の世界に戻った結城タケル。  死ぬ前の時間軸——5年前の高校2年生の、あの事故現場に戻ったタケル。そこはダンジョンのある現代。タケルはダンジョン探索者《シーカー》になるべくダンジョン養成講座を受け、初心者養成ダンジョンに入る。  レベル1ではスライム1匹にさえ苦戦するという貧弱さであるにも関わらず、最悪なことに2匹のゴブリンに遭遇するタケル。  絶望の中、タケルは「どうにかしなければ⋯⋯」と必死の中、ステータスをおもむろに開く。それはただの悪あがきのようなものだったが、 「え?、何だ⋯⋯これ?」  これは、異世界に転移し魔王を倒した勇者が、ダンジョンのある現代に戻っていろいろとやらかしていく物語である。

最強無敗の少年は影を従え全てを制す

ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。 産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。 カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。 しかし彼の力は生まれながらにして最強。 そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。

自由でいたい無気力男のダンジョン生活

無職無能の自由人
ファンタジー
無気力なおっさんが適当に過ごして楽をする話です。 すごく暇な時にどうぞ。

処理中です...