53 / 76
第二章
第五十三話 秩序と現代人は切り離せない
しおりを挟む突如として世界各地に発生したゲートからモンスターが現れた〈世界変革〉の日から半年が経とうとしていた。
世界変革の日以降、モンスターを倒すことで起こるようになった〈超人化〉と呼ばれている現象は、俺のような凡人も含めた万人を常人から〈超人〉へと変質させていた。
それによって起こったのは生存を懸けた争いであり、世界各地で治安が悪化していないところはないほどに、人間とモンスターだけでなく人間同士の抗争も勃発していた。
高度に発展した文明は人の本能を退化させていたが、世界変革を経て人は失われた本能の一部を取り戻した。
そのおかげで人外であり暴力の化身たる空想上の存在だったモンスターが現れても尚、半年近く経った今も人類は滅んでいなかった。
そんな騒乱期とも混乱期とも言える段階を乗り越えた人類が次に行うのが、秩序の形成なあたりは流石は現代人と言うべきか。
「つまり、そのような秩序を形成し、皆さんもご存知のかつての生活を再び取り戻すためには、どうしても人手が必要というわけです。これがどういうことかお分かりでしょうか?」
「……労働力、ということでしょうか?」
「簡単に言えばそうなります。他にも、このままだと死にゆく国民を救いたいという現首相を含めた現政権の意向もあります。人手が増えれば、それだけ出来ることが増えます。それは更に多くの人々を救うことに繋がりますので」
目の前にいるとあるコミュニティを纏めているリーダーの男性に臨時政府の意向を説明する。
「なるほど。だから、私達に接触なされたのですね?」
「はい。事前調査の結果、皆さんが危険な集団などではなく、我々と共にかつての秩序を取り戻すために手が取り合える方々だと判断がなされました。接触まで時間が掛かったことについては、今も申しました通り人手の不足と悪化している治安への警戒故ですのでご理解ください」
「はい。えっと、その節は私達の一部が大変失礼なことを……」
「いえいえ。今の世でも、かつてのような物言いが通じると思っている愚か者がいるのは仕方がないことです。そのような輩を宥めるような余裕は我が国にはありませんので、このように実力行使に出させていただきます。今更ですが、このようなやり方についてもご理解くださいませ」
臨時政府を代表して勧誘しに来た俺と目の前のリーダーの近くの地面には、倒れ伏したまま身体を痙攣させている老若男女の姿があった。
自分達が危険な目にあったのはお前達の所為だ。責任を取れ。などといった此方を加害者扱いした被害者面の輩達である。
リーダーの男性と交渉を開始して間もなく騒ぎだしたので、最近手に入れた才覚能力である〈殺気〉を使って制圧した次第だ。
政府に所属する前だったら処理してたんだが……運の良い奴らだな。
「は、ははっ、も、勿論です。貴方のように強い方がいらっしゃるなら、これから向かう場所はこの場所よりかは安全そうですね」
「その点については安心なさってください。世の中には絶対という事は無いので確約はできませんが、此処より安全なのは保障しますよ」
彼らのコミュニティがある場所と臨時政府が置かれている〈新都エリア〉までの間には強力なモンスターの生息域が広がっていた。
そのため、彼らを安全に連れて行くために俺に白羽の矢が立った。
なし崩し的に交渉役まで俺が担うことになったが、その分報酬が貰えるので良しとしよう。
ここまで俺と一緒にやってきた職員達の案内に従って、コミュニティの者達がバスに乗車していく。
この数台のバスの車体には俺の異能〈錬金竜〉によって生み出せる謎金属こと〈神秘金属〉と名付けた特殊な金属が使われているため、その防御力は通常のバスの比ではない。
それでもフロントガラスやタイヤなどは従来のままなのでモンスター相手には不安がある。
そのため俺をはじめとした臨時政府所属の超人達が護衛役として同行していた。
「お兄さん、全員乗車しましたヨ」
「強めの奴らは分散して乗せたな?」
「抜かりなしデス」
金髪碧眼の北欧系美少女であるソフィアからの報告を聞いた後、彼女の後方にいる職員に視線を向けると頷きが返ってきた。
なお、交渉中に騒いだ輩達は他のコミュニティの者達によって拘束・監視された上で雑に積み込まれていた。
「大丈夫そうだな」
「……お兄さん、今の反応は納得いかないんデスガ?」
「ダブルチェックというやつだ」
据わった目を向けてくるソフィアから視線を逸らすと、手元の通信機のスイッチを入れる。
「見える範囲でモンスターはいるか?」
『今のところ見当たらないわね。往路でマインが蹴散らしていたから生き残りも逃げていったみたい』
「まぁ、この辺りのは雑魚だからな。問題は危険地帯だが……」
『そっちは行きで念入りに潰したから大丈夫でしょう』
「そう願うとしようか。出発するからシオンも降りてきてくれ」
『了解』
近くの高層の建物の屋上から〈魔眼〉発動状態を示す紅眼のままの黒髪美女が飛び降りてきた。
着地の手前からシオンの落下速度が減速し、そのまま空中で一瞬停止した後に地面に着地した。
シオンは魔眼以外にも重力を操れる能力があるため、その能力を使って落下速度を無くしたようだ。
様々な面で応用が効く何とも羨ましい能力である。
「全員、乗車してくれ。新都に戻るぞ」
各員からの返事を聞きながら、ソフィアとシオンを伴って俺も装甲機動車へと乗車した。
2
あなたにおすすめの小説
ダンジョンに行くことができるようになったが、職業が強すぎた
ひまなひと
ファンタジー
主人公がダンジョンに潜り、ステータスを強化し、強くなることを目指す物語である。
今の所、170話近くあります。
(修正していないものは1600です)
ブラック国家を制裁する方法は、性癖全開のハーレムを作ることでした。
タカハシヨウ
ファンタジー
ヴァン・スナキアはたった一人で世界を圧倒できる強さを誇り、母国ウィルクトリアを守る使命を背負っていた。
しかし国民たちはヴァンの威を借りて他国から財産を搾取し、その金でろくに働かずに暮らしている害悪ばかり。さらにはその歪んだ体制を維持するためにヴァンの魔力を受け継ぐ後継を求め、ヴァンに一夫多妻制まで用意する始末。
ヴァンは国を叩き直すため、あえてヴァンとは子どもを作れない異種族とばかり八人と結婚した。もし後継が生まれなければウィルクトリアは世界中から報復を受けて滅亡するだろう。生き残りたければ心を入れ替えてまともな国になるしかない。
激しく抵抗する国民を圧倒的な力でギャフンと言わせながら、ヴァンは愛する妻たちと甘々イチャイチャ暮らしていく。
天城の夢幻ダンジョン攻略と無限の神空間で超絶レベリング ~ガチャスキルに目覚めた俺は無職だけどダンジョンを攻略してトップの探索士を目指す~
仮実谷 望
ファンタジー
無職になってしまった摩廻天重郎はある日ガチャを引くスキルを得る。ガチャで得た鍛錬の神鍵で無限の神空間にたどり着く。そこで色々な異世界の住人との出会いもある。神空間で色んなユニットを配置できるようになり自分自身だけレベリングが可能になりどんどんレベルが上がっていく。可愛いヒロイン多数登場予定です。ガチャから出てくるユニットも可愛くて強いキャラが出てくる中、300年の時を生きる謎の少女が暗躍していた。ダンジョンが一般に知られるようになり動き出す政府の動向を観察しつつ我先へとダンジョンに入りたいと願う一般人たちを跳ね除けて天重郎はトップの探索士を目指して生きていく。次々と美少女の探索士が天重郎のところに集まってくる。天重郎は最強の探索士を目指していく。他の雑草のような奴らを跳ね除けて天重郎は最強への道を歩み続ける。
どうしてこうなった道中記-サブスキルで面倒ごとだらけ-
すずめさん
ファンタジー
ある日、友達に誘われ始めたMMORPG…[アルバスクロニクルオンライン]
何の変哲も無くゲームを始めたつもりがしかし!?…
たった一つのスキルのせい?…で起きる波乱万丈な冒険物語。
※本作品はPCで編集・改行がされて居る為、スマホ・タブレットにおける
縦読みでの読書は読み難い点が出て来ると思います…それでも良いと言う方は……
ゆっくりしていってね!!!
※ 現在書き直し慣行中!!!
現実世界にダンジョンが出現したのでフライングして最強に!
おとうふ
ファンタジー
2026年、突如として世界中にダンジョンが出現した。
ダンジョン内は無尽蔵にモンスターが湧き出し、それを倒すことでレベルが上がり、ステータスが上昇するという不思議空間だった。
過去の些細な事件のトラウマを克服できないまま、不登校の引きこもりになっていた中学2年生の橘冬夜は、好奇心から自宅近くに出現したダンジョンに真っ先に足を踏み入れた。
ダンジョンとは何なのか。なぜ出現したのか。その先に何があるのか。
世界が大混乱に陥る中、何もわからないままに、冬夜はこっそりとダンジョン探索にのめり込んでいく。
やがて来る厄災の日、そんな冬夜の好奇心が多くの人の命を救うことになるのだが、それはまだ誰も知らぬことだった。
至らぬところも多いと思いますが、よろしくお願いします!
最強無敗の少年は影を従え全てを制す
ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。
産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。
カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。
しかし彼の力は生まれながらにして最強。
そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。
【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~
シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。
木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。
しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。
そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。
【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】
異世界帰りの英雄は理不尽な現代でそこそこ無双する〜やりすぎはいかんよ、やりすぎは〜
mitsuzoエンターテインメンツ
ファンタジー
<これからは「週一投稿(できれば毎週土曜日9:00)」または「不定期投稿」となります>
「異世界から元の世界に戻るとレベルはリセットされる」⋯⋯そう女神に告げられるも「それでも元の世界で自分の人生を取り戻したい」と言って一から出直すつもりで元の世界に戻った結城タケル。
死ぬ前の時間軸——5年前の高校2年生の、あの事故現場に戻ったタケル。そこはダンジョンのある現代。タケルはダンジョン探索者《シーカー》になるべくダンジョン養成講座を受け、初心者養成ダンジョンに入る。
レベル1ではスライム1匹にさえ苦戦するという貧弱さであるにも関わらず、最悪なことに2匹のゴブリンに遭遇するタケル。
絶望の中、タケルは「どうにかしなければ⋯⋯」と必死の中、ステータスをおもむろに開く。それはただの悪あがきのようなものだったが、
「え?、何だ⋯⋯これ?」
これは、異世界に転移し魔王を倒した勇者が、ダンジョンのある現代に戻っていろいろとやらかしていく物語である。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる