アポカリプスな時代はマイペースな俺に合っていたらしい

黒城白爵

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第二章

第五十三話 秩序と現代人は切り離せない

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 突如として世界各地に発生したゲートからモンスターが現れた〈世界変革〉の日から半年が経とうとしていた。
 世界変革の日以降、モンスターを倒すことで起こるようになった〈超人化〉と呼ばれている現象は、俺のような凡人も含めた万人を常人から〈超人〉へと変質させていた。
 それによって起こったのは生存を懸けた争いであり、世界各地で治安が悪化していないところはないほどに、人間とモンスターだけでなく人間同士の抗争も勃発していた。

 高度に発展した文明は人の本能を退化させていたが、世界変革を経て人は失われた本能の一部を取り戻した。
 そのおかげで人外であり暴力の化身たる空想上の存在だったモンスターが現れても尚、半年近く経った今も人類は滅んでいなかった。
 そんな騒乱期とも混乱期とも言える段階を乗り越えた人類が次に行うのが、秩序の形成なあたりは流石は現代人と言うべきか。


「つまり、そのような秩序を形成し、皆さんもご存知のかつての生活を再び取り戻すためには、どうしても人手が必要というわけです。これがどういうことかお分かりでしょうか?」

「……労働力、ということでしょうか?」

「簡単に言えばそうなります。他にも、このままだと死にゆく国民を救いたいという現首相を含めた現政権の意向もあります。人手が増えれば、それだけ出来ることが増えます。それは更に多くの人々を救うことに繋がりますので」


 目の前にいるとあるコミュニティを纏めているリーダーの男性に臨時政府の意向を説明する。
 

「なるほど。だから、私達に接触なされたのですね?」

「はい。事前調査の結果、皆さんが危険な集団などではなく、我々と共にかつての秩序を取り戻すために手が取り合える方々だと判断がなされました。接触まで時間が掛かったことについては、今も申しました通り人手の不足と悪化している治安への警戒故ですのでご理解ください」

「はい。えっと、その節は私達の一部が大変失礼なことを……」

「いえいえ。今の世でも、かつてのような物言いが通じると思っている愚か者がいるのは仕方がないことです。そのような輩を宥めるような余裕は我が国にはありませんので、このように実力行使に出させていただきます。今更ですが、このようなやり方についてもご理解くださいませ」


 臨時政府を代表して勧誘しに来た俺と目の前のリーダーの近くの地面には、倒れ伏したまま身体を痙攣させている老若男女の姿があった。
 自分達が危険な目にあったのはお前達の所為だ。責任を取れ。などといった此方を加害者扱いした被害者面の輩達である。
 リーダーの男性と交渉を開始して間もなく騒ぎだしたので、最近手に入れた才覚能力である〈殺気〉を使って制圧した次第だ。
 政府に所属する前だったら処理してたんだが……運の良い奴らだな。


「は、ははっ、も、勿論です。貴方のように強い方がいらっしゃるなら、これから向かう場所はこの場所よりかは安全そうですね」

「その点については安心なさってください。世の中には絶対という事は無いので確約はできませんが、此処より安全なのは保障しますよ」


 彼らのコミュニティがある場所と臨時政府が置かれている〈新都エリア〉までの間には強力なモンスターの生息域が広がっていた。
 そのため、彼らを安全に連れて行くために俺に白羽の矢が立った。
 なし崩し的に交渉役まで俺が担うことになったが、その分報酬が貰えるので良しとしよう。

 ここまで俺と一緒にやってきた職員達の案内に従って、コミュニティの者達がバスに乗車していく。
 この数台のバスの車体には俺の異能〈錬金竜〉によって生み出せる謎金属こと〈神秘金属メルクリウス〉と名付けた特殊な金属が使われているため、その防御力は通常のバスの比ではない。
 それでもフロントガラスやタイヤなどは従来のままなのでモンスター相手には不安がある。
 そのため俺をはじめとした臨時政府所属の超人達が護衛役として同行していた。


「お兄さん、全員乗車しましたヨ」

「強めの奴らは分散して乗せたな?」

「抜かりなしデス」


 金髪碧眼の北欧系美少女であるソフィアからの報告を聞いた後、彼女の後方にいる職員に視線を向けると頷きが返ってきた。
 なお、交渉中に騒いだ輩達は他のコミュニティの者達によって拘束・監視された上で雑に積み込まれていた。


「大丈夫そうだな」

「……お兄さん、今の反応は納得いかないんデスガ?」

「ダブルチェックというやつだ」


 据わった目を向けてくるソフィアから視線を逸らすと、手元の通信機のスイッチを入れる。


「見える範囲でモンスターはいるか?」

『今のところ見当たらないわね。往路でマインが蹴散らしていたから生き残りも逃げていったみたい』

「まぁ、この辺りのは雑魚だからな。問題は危険地帯だが……」

『そっちは行きで念入りに潰したから大丈夫でしょう』

「そう願うとしようか。出発するからシオンも降りてきてくれ」

『了解』


 近くの高層の建物の屋上から〈魔眼〉発動状態を示す紅眼のままの黒髪美女が飛び降りてきた。
 着地の手前からシオンの落下速度が減速し、そのまま空中で一瞬停止した後に地面に着地した。
 シオンは魔眼以外にも重力を操れる能力があるため、その能力を使って落下速度を無くしたようだ。
 様々な面で応用が効く何とも羨ましい能力である。


「全員、乗車してくれ。新都に戻るぞ」


 各員からの返事を聞きながら、ソフィアとシオンを伴って俺も装甲機動車へと乗車した。


 
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