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第一章
第五十二話 マイン
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「ーー平和だな……」
「平和ですネ」
今いる場所は、元々は富裕層向けに作られていた高級ホテルの最上階。
その最上階に備えつけられた屋外プールの傍にて日光浴をしている最中だ。
用意されたサマーベッドの上で寝そべる俺の横には、同じようにサマーベッドに寝そべっているソフィアの姿がある。
俺もソフィアも水着姿なので、横に視線を向けると大変破壊力のある絶景がそこにはあった。
ソフィアに用意された水着が白のビキニだったせいで、彼女が水着姿を披露して以降、自分の中の理性という名の天使と本能という名の悪魔が戦い続けているのを感じる。なお、俺の水着はトランクスタイプだ。
「……今の世界でここまで夏を満喫しているのは貴方達ぐらいでしょうね」
「そんなことはないと思うけど、まぁ少数派だろうな」
「そうでしょう。はい、どうぞ。ペットボトルだけどね」
「ありがとう、シオン」
「ありがとうございマス、シオンさん」
「どういたしまして」
室内からドリンクを持ってきてくれた水着姿のシオンに礼を言う。
黒のビキニを着ているシオンがソフィアにドリンクを渡しているのを横目で眺めながら、ここ数日で起きたことを思い返す。
敵性超人であるグルメに勝利した後、救出した超人部隊の隊員達と共に先にテレビ局を脱出していたソフィア達と無事に合流できた。
合流後は、バイクに跨がったシオンの先導で彼女達の拠点である臨時政府がある場所へと移動した。
暫くして到着した場所は、世界変革前から開発が進んでいた国際的な超大規模イベント会場があるエリアだった。
完成目前だったこの場所に臨時政府が置かれているらしい。
今現在も改修・開発・増築が進んでおり、日中は常に工事の音がどこからか聞こえてくる。
拠点エリア内にある唯一の病院前で隊員達を下ろすと、そのまま此処のトップと面談することになった。
相手側は、俺達が疲れているだろうから後日にと言ってくれたが、面倒なのはさっさと済ませたかったので、時間の都合がつくならばとすぐに面談を希望した。
相手側のスケジュールに俺との交渉が元々入っていたのもあって、面談はすぐに行われた。
そのトップとの交渉の詳細はさておき、交渉結果は概ね此方の希望通りになった。
まぁ、概ねとあるように予定とは異なる点もあるのだが……。
とまぁ、そういった交渉の末に今に至る。
「そうそう。さっき上から連絡があったわよ」
「連絡?」
俺を挟んでソフィアの反対側にあるサマーベッドに座ったシオンがそんなことを告げてきた。
シオンの方に振り向くと、此方も絶景だった。
彼女の胸部はソフィアほどのサイズはないーーとは言っても十分にデカいーーが、こうして改めて見ると腰の細さや脚のエロさに関しては彼女の勝ちだな。
年齢が近いなどの理由から、互いに敬語無しで話すようになったのもあって色々と見方が変わった影響もあるんだろうけど。
「貴方のコードネームについてよ」
「……コードネームって、やっぱり気恥ずかしさがあるんだが」
「慣れれば使いやすいわよ」
「そりゃあ、シオンは本名の紫音のまんまじゃないか」
「能力に根差した良い名前がなかったんだから仕方ないじゃない」
コードネームというのは臨時政府の方で有力な超人達に付けられる、言わば個々人の情報を管理する上での仮の名前だ。
中には世界変革前の自分とは区別するためにコードネームを嬉々として名乗る者もいるらしい。
基本的には代表的な能力から付けられるが、そういった能力が無い者が殆どであるためコードネームがある者は少数派だ。
シオンには〈魔眼〉という発動時に本来紫色である両眼が紅く染まる代表的な能力があるが、仮に付けられたコードネームを本人が嫌がったのでそのまま〈シオン〉となっていた。
おそらく、他にシオンという名の超人がいないから通ったのだろう。
「で、なんて付けられたんだ?」
「貴方のコードネームは〈鉱山〉よ」
「マインねぇ。まぁ、そのまんまだな」
「どちらかというとお兄さんは〈地雷〉では、アイタッ!?」
口は災いの元というのをソフィアに教えるべく、指先から生成し伸ばした金属触手でソフィアにデコピンをしておく。
「そちらの意味もあるわよ。取り扱い注意という意味で」
「……ま、甘く見られるよりかは良いけどさ」
「シオンさん、私にはコードネームはないんデスカ?」
「ソフィアは〈風〉よ」
「し、シンプル過ぎマス。それならソフィアでいいデス」
「でしょうね。私と同じで他に同名がいないから要望は通ると思うわよ。〈ソフィア〉にしておく?」
「お願いしマス」
やっぱりそういう理由から本名でオーケーが出てるんだな。
俺の本名は……まぁ、普通だからな。確実に要望は通らないだろう。
二つの意味を持たせてある点からも、俺の名前は〈マイン〉で確定か。
「そういうわけだから、監視役兼特設探索部隊の一員として私も行動を共にすることになったからよろしくね」
「……接待役から監視役に昇進したな」
「あら、私じゃご不満?」
「そんなことはないさ。全く知らない相手が来るよりはいいし、どうせなら美女に来て欲しいぐらいには俺も男だしな」
臨時政府との交渉の末に、俺は俺用に特設された危険地域探索部隊の隊長の座に就任した。
政府の力の恩恵を最大限受けつつ、自由に行動できる外部委託的なポジションを得るべく交渉したのだが、流石にそう上手くはいかず色々と折り合いを付けた結果、正式に臨時政府に属することになった。
とはいえ、俺用に特設されたことからも分かるように、俺が希望していた自由行動権は緊急時を除けば保証されているし、恩恵も最大限受けられる。
この高級ホテルの最上階についても、恩恵の一つとして俺の此処での拠点にと与えられたものだ。
他にも色々恩恵はあるが、まぁそれについては追々だな。
「金属の身体に変化できても、そういう欲はちゃんとあるのね?」
「ああ。その点はちゃんと生物の枠組みらしい」
グルメを倒した影響によって、〈錬金鎧〉は〈錬金竜〉へと名称を変更するほどに金属鎧化の時のシルエットは変わった。
〈錬金竜〉となったのは、状況からして〈錬金鎧〉がグルメの異能である〈捕食〉を取り込んだ結果らしく、細々と能力が変化したことにより、俺の臨時政府での価値が戦闘面以外でも爆上がりしていた。
俺一人のために部隊が新設されるなんていう、超特別待遇になっているのもそういった理由からだろう。
危険地域ーー今いる政府エリアの外のことーーの探索という名の自由行動以外では、俺に生産・研究依頼が来ることがあると言っていた点からも間違いあるまい。
シオンを監視役兼部隊員として付けられたのも配慮の一つと思われる。ちなみにソフィアも部隊員だ。
「それは良かったわ。情勢が安定したら、マインにはコッチの方でも頑張って貰いたかったから」
「コッチ? ぶっ」
俺のサマーベッドの縁に座ってきたシオンが意味深な発言をしながら俺の身体に触れてきた。
その意味について考えようとしていたら、横から飛んできたソフィアが操る風に頭部が包み込まれ、思考を邪魔された。
風が吹く音に遮られて周りの音が全く聞こえないが、風の壁の向こう側に薄っすらと見える人影からシオンとソフィアが何かを話しているのが確認できた。
世界変革後、生き延びるために好きなように行動してきた結果、色々と騒がしくも安定した環境を手に入れた。
自宅から元自宅へと変わったマンションに置いてある物資を持ち込むなど、やらねばならないことは多くある。
それでも、今後も自分のペースを維持したまま、この危うくも刺激的な終末世界を生き抜いて行くとしよう。
☆これにて第一章終了です。
現代世界がファンタジーな変革を遂げた黎明期をイメージした章でしたが、如何だったでしょうか?
当初こそ世界変革への適応力が高すぎてサイコパス感のある主人公でしたが、庇護者兼仲間なソフィアが加わってからはマトモに見えるようになりましたネ。
なお、別作品での反省を活かして一章から女性キャラを前に出していった次第です。
一章の着地点は少し悩みましたが、現実的に悠々自適に過ごす環境を得られるラインはこの辺だと個人的に判断し決定しました。
この作品は不定期更新の予定だったのに、気付けば毎日更新していましたね……。
良くも悪くも二作品の更新が重なった時の経験が出来たのは、今後の更新の糧になりそうです。
二章については既にプロットはできていますが、脳を休めたいので日程は未定です。
更新再開した時はまたよろしくお願いします。
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