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第二章
第八十八話 異常暴走に対する準備
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モンスターに遭遇しやすいルートを選んで帰路について間もなく。
久しぶりに〈システム〉によるクエストを示すウィンドウが目の前に出現した。
○クエスト『事態を収拾せよ』
現在いるダンジョンにてモンスターの異常暴走が発生しました。
モンスターを倒して事態収拾に協力してください。
異常暴走収拾に対する貢献度によって報酬は変化します。
⚫︎貢献度:E~S
→貢献度ランクによって獲得できる報酬のスキルとアイテムの内容と数は異なります。
・スキル【???】
・アイテム〈???〉
・各種能力値ポイント+10
久しぶりのクエストだ、と内心テンションが上がっていたのに、その内容はよりによって異常暴走の収拾か。
しかも高難易度である摩天楼ダンジョンで起きた異常暴走とは、はっきり言って最悪だな。
〈システム〉に付随した機能である〈広域マップ〉を開くと、予想通りクエスト対象のモンスター達は別色の光点で表示されていた。
赤い光点がクエスト対象のモンスターで、青い光点がクエスト対象外のモンスターらしい。
そして、緑色の光点がダンジョン内にいる覚醒者のようだ。
事態収拾の貢献度とあるから、普通に考えるならクエスト対象のモンスターを倒しまくればいいんだろうが、白い光点で表示されていた覚醒者が緑色の光点で表示されているということは、他の覚醒者の生死も関係していると考えた方がいいだろう。
「2人共、どうやらこのダンジョンで異常暴走が発生したみたいだ」
「えっ!?」
「どうして分かったんですか?」
「俺の異能からの情報」
「……リーダーの異能って便利ですね」
「俺自身そう思うよ」
回帰して以降は特にな。
〈システム〉の〈広域マップ〉から得たモンスターの分布に関する情報をリリアとマリヤに共有する。
それと同時にダンジョンの外と通信が繋がるようなので、俺達がいる〈堕天の回廊〉で異常暴走が起きていることを知っているかをネットやSNSで調べた。
異常暴走が起きている現場に向かいながら調べたところ、既に他の覚醒者によって情報が発信されていることが分かった。
地球上である現実世界に内部のモンスターが溢れてくる〈アビス〉のブレイクとは異なり、ダンジョン内モンスターの異常暴走はダンジョンの外には溢れ出ることはない。
だが、この異常暴走を放置してしまうと、ダンジョン内のモンスターは減少せず半永久的に増えていくため、以後そのダンジョンを利用することが困難、またはほぼ不可能になってしまう。
モンスター素材も含めたダンジョンで採取できる各種資源の価値を考慮すれば、異常暴走の沈静化は必須であることは言うまでもない。
「異常暴走は〈堕天の回廊〉の比較的浅いところで起きているみたいだから、俺達が今いる場所からゲートがある浮島までモンスターを倒していけば良さそうだな」
「でも、クロヤさん。ゲートまでの道中にいるモンスターの数は100を超えているのですよね? 私達3人の体力と魔力では……」
確かに、100体以上の摩天楼ダンジョンのモンスターとの連戦を考えると現状の体力と魔力では不安がある。
俺の場合は、異能【万物変換】の第2層能力【彼我変換】を使ってモンスターの体力と魔力を奪って回復することができるが、2人にそのような能力はない。
リリアとマリヤは、上級覚醒者としては上位の体力と魔力をそれぞれ持っているが、この状況下では心許ない。
だからと言って俺1人で戦うのは愚の骨頂なので、2人の力は絶対に必要だ。
となると……〈貪欲の聖杯〉を使うか。
確か、ちょうど良いアイテムがあったはずだ。
「モンスターの死体を取り出して何をしているんですか?」
「あ、もしかしてアイテム化でしょうか?」
仲間になって間もない上に、前もって話は聞いていても一度も見たことがないマリヤはピンと来なかったようだが、リリアはすぐに俺がやろうとしていることを察していた。
「ああ。マリヤに実際に見せるのは初めてだな。リリアが言ったように、今からモンスターの死体を使ってマジックアイテムを創造する」
〈宝納の指環〉から取り出した天使系モンスターに手を翳す。
〈貪欲の聖杯〉の死体アイテム化能力【貪欲の手】でマジックアイテムを創造するには、天使系モンスターから取れる高額アイテム〈天威の結晶〉も揃える必要がある。
〈天威の結晶〉の価値を考えれば非常に勿体無いが背に腹は代えられない。
それに、どうせ異常暴走の収拾の過程で大量の天使系モンスターを倒すのだから、最終的に採算は取れるはずだ。
──アーティファクト〈貪欲の聖杯〉の【貪欲の手】が発動しました。
──対象物を財宝へ変異させることが可能です。
──変異先の財宝を選択してください。
──財宝が選択されました。
──対象物はマジックアイテム〈天使の雫〉へと変異しました。
──アーティファクト〈貪欲の聖杯〉の【貪欲の手】が発動しました。
──対象物を財宝へ変異させることが可能です。
──変異先の財宝を選択してください。
──財宝が選択されました。
──対象物はマジックアイテム〈戦天使の護環〉へと変異しました。
〈宝納の指環〉の収納空間に納めてあるアイテム化可能な状態の天使系モンスターの死体を全て使い、2種類のマジックアイテムを創造した。
1つ目は消費型マジックアイテム〈天使の雫〉。
飴玉のような見た目のこのアイテムを服用すると、体力と魔力が大幅に回復し、更に一定時間全ステータス強化(小)状態が得られる効果を持つ。
2つ目は指環型マジックアイテム〈戦天使の護環〉。
装備している間、全ステータス強化(中)状態が得られ、一度だけ致死ダメージを防いでくれる効果を持つ。
致死ダメージを防いだら〈戦天使の護環〉は自壊してしまう上に、同時に1つまでしか装備できないという欠点があるが、今の状況には必要なアイテムだ。
どちらのマジックアイテムも破格の性能を持つが、天使系モンスターの死体から創造できるマジックアイテムには他にも有用なモノが多く、1つも創造していなかった。
特に〈戦天使の護環〉は〈射光の下位天使〉のような下位天使の死体からは創造できない。
そのため、現状では非常に貴重な下位天使よりも上の位階の天使系モンスターの死体を使わなければならなかった。
まぁ、無駄にはならないだけマシか。
〈天使の雫〉を14個、〈戦天使の護環〉を3個ずつ俺達3人で分配する。
致死ダメージを防いで〈戦天使の護環〉が自壊した時のために3個ずつ創造したが、戦闘中に新たな〈戦天使の護環〉を取り出し装着する隙があるかは怪しいので、あまりアテにしない方がいいだろう。
今できる最善の準備を済ませると、異常暴走が起こっている場所へと急いで移動した。
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