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第二章
第八十九話 異常暴走
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往路とは異なるルートを移動したというのにモンスターと遭遇することはなかった。
おそらくだが、現在起こっている異常暴走が原因なのだろう。
現に、〈広域マップ〉で表示可能な地図上を確認した限りでは、異常暴走が発生しているエリア以外の場所にモンスターの光点は見当たらない。
まぁ、今世で俺が踏破した〈堕天の回廊〉の範囲はまだまだ狭いため、〈広域マップ〉で解放されている地図の範囲も狭く、断言までは出来ないんだが。
だが、低階層に出現する全てのモンスターがいるのではないかと思ってしまうほどの、夥しい数のモンスターの軍勢が集まっていた。
「……低層で起こってるからか、凄い数だな」
一般的には、ダンジョンの低階層であればあるほどモンスターは弱く、その出現数は多くなる傾向にある。
それは摩天楼ダンジョンである〈堕天の回廊〉も同様で、俺達が今いる高所の浮島から見える範囲だと、異常暴走を構成している無数のモンスターの殆どは下位の天使系モンスターだった。
獣系有翼モンスターは下位の天使系モンスターよりも更に弱いのだが、パッと見た感じではその姿は見当たらない。
異常暴走発生以前に駆逐されていたか、俺達が現場に到着するまでに他の探索者達に倒されたのだろう。
「他の探索者の人達がゲート近辺を守るために対処していますけど、多勢に無勢ですね……」
リリアが言うように、探索者とモンスターの戦力比は絶望的で、ダンジョンの外からの援軍が入って来れるように死守しているゲートがある浮島は、天使系モンスターに完全に包囲されていた。
こうして離れたところから見ている間にも、普段から〈堕天の回廊〉に挑んでいるような探索者達が、四方八方からの天使系モンスターの攻撃を受けて次々と倒れている。
もう少し状況の把握に努めたかったが、これ以上死傷者が出てしまうと唯一の出入り口であるゲートがモンスターで埋まってしまう。
そうなる前に、異常暴走の勢いを削いだ方がいいだろう。
「天使系モンスターで光属性だし、使うならやっぱり闇魔法か」
「魔法で一掃するんですか?」
「一掃できたらいいんだが、純魔法使い系じゃないから流石にそこまでは無理だろうな。それでも勢いは削げるだろうから、使った後の対応は任せたぞ、2人共」
「分かりました」
「了解です」
リリアとマリヤの返事を聞くと、ユニークスキル【狩猟ノ闇獣王】の【闇影ノ支配者】を意識する。
闇の力を支配するこのスキルによって使用可能になっている闇属性魔法の中から、俺でも発動可能かつ現状で最適な魔法を選ぶ。
「いくぞ、『災禍の闇宴』」
異常暴走を構成するモンスターの軍勢の中央付近の上空に巨大な魔法陣が展開される。
そこから黒い闇の粒子が溢れ出た次の瞬間、闇の暴風雨とでも表現すべき暴力が降り注いできた。
闇に射抜かれ、闇に斬り裂かれ、闇に擦り潰される。
あっという間に闇に呑まれていく天使系モンスターの群れの姿を最後まで見る余裕はなく、魔力枯渇によって気絶しそうになるのをグッと堪えながら、回復アイテムである〈天使の雫〉を使用する。
1粒取り出して口に含むと、すぐに口内で〈天使の雫〉が溶けた。
完全に溶けると枯渇していた魔力の半分以上が回復した。
これだけの量の魔力を一息に回復できるとは、予想した通りの有用な回復アイテムだ。
── スキル【魔喰ノ精霊王】が発動します。
──対象への能力行使に成功しました。
──反応値が8ポイント増大します。
──精神値が8ポイント増大します。
──体力値が9ポイント増大します。
── スキル【魔喰ノ精霊王】が発動します。
──対象への能力行使に成功しました。
──敏捷値が3ポイント増大します。
──反応値が7ポイント増大します。
──魔力値が6ポイント増大します。
── スキル【魔喰ノ精霊王】が発動します。
──対象への能力行使に成功しました。
──耐久値が7ポイント増大します。
──敏捷値が2ポイント増大します。
──精神値が4ポイント増大します。
──スキル【天使の威光】を獲得しました。
── スキル【魔喰ノ精霊王】が発動します。
──対象への能力行使に成功しました。
──精神値が7ポイント増大します。
──知能値が7ポイント増大します。
──魔力値が7ポイント増大します。
──スキル【天燐】を獲得しました。
100体近くの天使系モンスターを一掃したのだが、【魔喰ノ精霊王】の【魔喰ノ王権】が発動したのはたったの4回だけだった。
いや、その4回のうちの半分ではスキルを獲得できたのだからマシな方か。
「す、凄い威力ですね」
「リーダーって特殊系クラスだったよね?」
「ああ。まぁ、この威力はクラスではなくてユニークスキルのおかげだけどな。っと、予定通り異常暴走のモンスターの敵意がこっちに向いたな」
現在の異常暴走を構成するモンスターの4割ほどが俺達がいる高台へと方向転換してきた。
3人だけで挑むには多すぎる数だが、その大半は下位の天使系モンスターなので俺達の力ならば十分に対処が可能なはずだ。
こちらに向かってくる軍勢を見据えながら、リリアと共に攻撃魔法を放っていき、接敵までに出来るだけ数を減らしていった。
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