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第三章
第百話 真化の天種
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「──ただいま、っと。10日も家を空けたからか、何となく埃っぽいな」
10日にも及ぶ入院生活だったため、自宅のマンションに帰ってくるのも久しぶりだ。
やりたいことはあるが、その前に掃除をする必要があるな。
「掃除以外の家事もだな……やるか」
入院中、この覚醒者向けマンションのオーナーであるレイカ先輩がハウスキーパーを派遣してくれようとしたが、遠慮して断っていた。
今さらだが、断らずに頼んでおけば良かったかもしれないな。
そんなことを考えつつも身体を動かして、家の隅々まで掃除をしていく。
王級へと至った覚醒者の高い身体能力とスタミナもあって、あっという間に掃除は終わった。
このマンションが新築なのもあって大した汚れもなく、数少ない汚れも簡単に落ちたのは幸いだった。
「ふぅ。洗濯物も洗って干し終わったし、漸く暇になったな」
マモルの工房からの帰りに寄ったスーパーで買った弁当を食いながら【堕天の蔵】を開く。
リビングのテーブルでは広さが足りないため、床に上に収納空間内のマジックアイテムを取り出していった。
まぁ、正確にはマジックアイテムの残骸だが。
「どれもこれもボロボロだな。スキルで修復出来るのは2つだけか」
徘徊主であるフロータルナイトの最終フェーズの一撃に耐えられず破砕された武器は4つ。
この〈白霊剣オルトレール〉〈狐幻魔刀サイラ〉〈混幻黒銃ドライド〉〈混幻銀銃レフーラ〉のうち、サイラとレフーラそれぞれの残骸は半分以上が回収不可能なほど粉砕されていた。
○スキル【状態回帰】
任意発動型特殊スキル。
対象の状態を正常な状態へとノーコストで戻すことができる。
ただし、正常な状態の対象の質量の半分以上が存在している必要がある。
1日に3回まで使用可能。
入院中にレイカ先輩が返却しに来てくれた鑑定系アーティファクト〈月神の賢眼〉の力で改めてスキルの詳細を確認する。
王級クラス〈終末の再世者〉のクラススキル【状態回帰】のランクは〈A++〉。
一般的にはSランク以上のスキルのことをユニークスキルと呼んでいるが、このユニークスキルには等級以外にも複数のスキルを内包しているという特徴がある。
一方で、【状態回帰】のようなA++ランクスキルだが、この等級のスキルはそれ単体でユニークスキルに匹敵する力を有している。
一つのスキルで複数のスキルに匹敵するとだけあって、その効果は非常に強力だ。
【状態回帰】の説明にある〈対象〉とやらの範囲は人体に限らず、マジックアイテムも含まれている。
そのため、このクラススキルを使えば、半分以上の破片さえ手元に残っていれば、マジックアイテムですらも完全な状態に回帰させることができるのだ。
しかもノーコストというオマケ付きで。
「1日3回のみとはいえ、破格の能力だよな。〈回帰〉」
回帰可能なオルトレールとドライドに手を翳す。
すると、虹色の光が瞬くと2つのマジックアイテムが元の状態へと一瞬で復元されていた。
「サイラとレフーラの破片はどうするか……今度マモルのところにでも持っていくかな」
復元の終わったマジックアイテムも残骸も全て【堕天の蔵】へと収納する。
弁当の中身を食べ終えてから、再び【堕天の蔵】を開いて1つのアイテムを取り出した。
○真化の天種
等級:伝説級。
とあるダンジョンで産出された消費型マジックアイテム。
魔力を有するアイテムに使用可能で、その性能を永続的に強化する。
指先サイズの黄金の種である〈真化の天種〉は、フロータルナイトを倒した際に出現したボス宝箱からドロップしたアイテムだ。
現在は勿論、回帰前の未来においても非常に高い価値を持つ消費型マジックアイテムであり、場合によっては同ランクの堕天剣バラキエルよりも上かもしれない。
存在が露見した際の影響力という点では、既に同名アイテムが他のダンジョンでドロップし、世間に公開されたことのある〈真化の天種〉の方が上だろう。
「まさかコレが手に入るとは思わなかったな」
このアイテムの使い道は既に決めてある。
身体に同化していたアーティファクト〈貪欲の聖杯〉を分離させると、その黄金の聖杯へと同色の種を強く押し付けた。
ズブズブと沼地に沈み込むかのような緩慢な動きで〈真化の天種〉が〈貪欲の聖杯〉へと同化していく。
程なくして、黄金の聖杯が虹色の輝きを纏わせ、その存在感を増大させた。
「ふむ……アイテム吸収能力【貪欲の器】の使用制限が1ヶ月に1度から、半月に1度に変化。死体アイテム化能力【貪欲の手】の死体損壊制限が緩和。手で触れた他の覚醒者が持つ能力を2つまでコピーする【貪欲なる写し手】は、3つまでコピー可能になったか……素晴らしい! やはり、聖杯に使用したのは正解だったな!」
〈真化の天種〉が使用可能な対象は、魔力を有するアイテムだ。
つまりこれは、ただのマジックアイテムだけでなくアーティファクトすらも適用範囲であることを意味している。
回帰前にこのアイテムを見たことはあっても、手に入れたことも、実際に使用されているところを見たことも無かったため今までは予想でしかなかった。
だが、実際に手に入れ、その詳細を自分の目で確認できたことによって確信し、アーティファクトである〈貪欲の聖杯〉への使用へと踏み切った。
「無事に真化できたし、やっと【貪欲の器】を使うことができるな」
〈真化の天種〉を使う前に〈貪欲の聖杯〉の能力の使用回数に変化があった場合に何かしらの影響が起こる可能性を考え、【貪欲の器】の使用は控えていた。
杞憂だった気もするが、超々希少なアイテムを使用するのだから、臆病なぐらいに慎重な方が良いはずだ。
真化した〈貪欲の聖杯〉を手に持つと、【堕天の蔵】から取り出した〈隠遁者の獣面〉を吸収させ、その杯を満たす液体を一気に飲み干した。
──アーティファクト〈貪欲の聖杯〉が発動されました。
──スキル【認識困難】を獲得しました。
──スキル【鑑定妨害】を獲得しました。
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