万物争覇のコンバート 〜回帰後の人生をシステムでやり直す〜

黒城白爵

文字の大きさ
102 / 176
第三章

第百一話 再び紅果の森へ



 ◆◇◆◇◆◇


 退院した翌日。
 実利を兼ねたリハビリのため、以前にも潜った資源ダンジョン〈紅果の森〉にやってきた。
 回帰後間もない頃にソロで挑んだのとは違い、今回はパーティーメンバーであるリリアとマリヤも同行している。


「すごく鬱蒼としたダンジョンですね」

「モンスターが隠れられる遮蔽物が多いから奇襲には気を付ける必要がありますね」


 この資源ダンジョンに挑戦するのは2人共初めてらしく、ダンジョンエリアに入場して早々に周囲に広がっている草木を見渡していた。
 そんな美女2人を含めた俺達3人を見ている他の覚醒者達からの視線は気にも留めていない。
 ダンジョンに入る前からこんな状況だったが、俺が入院している間に慣れてしまったらしい。

 病院という物理的な壁のおかげで守られていた俺とは異なり、2人は多くの人々に付き纏われていたそうだ。
 その理由についてだが、摩天楼ダンジョンの異常暴走スタンピードの解決に尽力したのも理由の一つだが、それ以上にこの異常暴走スタンピードを経て、パーティーのリーダーである俺が王級覚醒者にランクアップしたのが1番の理由らしい。
 入院中で面会謝絶の俺からは話が聞けないから、パーティーメンバーの2人に人が殺到したんだとか。
 どれだけの人に根掘り葉掘り尋ねられたかは知らないが、この好奇の視線に対するスルースキルの高さから何となく察せられた。


「……そろそろ行こうか」

「分かりました」

「了解です」


 森林フィールドを見渡していた2人を促してダンジョンの奥へと進む。
 今回のダンジョンアタックは、10日に及ぶ入院生活で鈍った身体のリハビリではあるが、実際のところ言うほど鈍ってはいない。
 個人差はあるものの、王級に至った覚醒者の肉体や戦闘感覚は、10日程度の休養で鈍ったりはしない。
 まぁ、それでも王級に至ったのは回帰後が初めてなのと、休養中ダンジョンに挑んでいない彼女達の慣らしも兼ねてこのダンジョンを選んだ。


「ん、えいッ! このあたりのモンスターは弱いですね」

「まだ浅い場所だからな。奥に進むに連れて強くなっていくはずだから油断はするなよ」

「はーい」


 襲い掛かってきたアリ系モンスターの攻撃を盾で軽く受け止め、反撃の一撃で倒したマリヤが肩透かしを食ったかのような反応をしていた。
 〈紅果の森〉に出るアリ系モンスターは、純戦士系の上級覚醒者であるマリヤにとっては張り合いのない相手だろう。
 ただの一撃で倒せるほどに体力も低いので、俺やリリアが追撃を仕掛けるまでもなく終わってしまう。
 これなら敢えて盾で受け止めるまでもないかもしれないな。


「盾の損耗もタダじゃないし、暫くは弱いモンスターが続くから、開幕一番でリリアの魔法で倒していくか?」

「そうですね。ダンジョンに入ってから使った支援魔法で消費した分の魔力も回復して余ってますし、そうさせてもらっていいでしょうか?」

「ああ、任せた」

「分かりました。もし撃ち漏らした時はよろしくね、マリヤ」

「うん、その時は任せて」


 道中の戦闘方針が決まると、リリアが無属性攻撃魔法『魔法の矢マジックアロー』を行使する。
 魔法の発動地点である魔法陣から魔力構造体の矢は射出せず、魔法陣の展開を維持したまま引き連れていく。


「発動待機もできるようになったんだな」

「休養期間中にそういう魔法技術があると知りまして、試しにやってみたら出来ました」

「……ん? もしかして今初めてやったのか?」

「はい、そうですけど、何かおかしかったですか?」

「いや、流石だなぁ、と思っただけだよ」

「ありがとうございます!」


 魔法の発動待機技術って高等技術だった気がするんだけどな……流石はクラス〈魔女〉と言うべきか。
 俺と出会った頃は、次のランクアップで魔法使いの道に進まないようメイスをブンブン振り回して戦士を目指していたとは、今となっては想像できないな。

 それからアリ系モンスターが姿を現す度に、発動待機状態の魔法陣から『魔法の矢マジックアロー』が放たれ、モンスターを駆逐していった。
 魔力が全回復する度にリリアの周囲に発動待機状態の魔法陣が増えていく。
 1つだけならまだしも、複数個の魔法陣の発動待機状態の維持とか、回帰前の未来の世界においても普通ではないレベルの超高等技術だ。

 涼しげな表情で多数の魔法陣を展開し維持し続けているリリアに、俺は軽く引いていた。
 無自覚のリリア本人は勿論、マリヤも純戦士系であるためリリアがやっていることが分かっていない。


「魔法陣がいっぱい浮かんで綺麗だね」

「魔法陣の中身は物騒だけどね」

「確かに!」


 モンスターが支配する森の中で呑気な会話を交わす2人だが、モンスターが出現すると即座に盾を構え、攻撃魔法を放って倒していた。
 緊張し過ぎるよりはいいか、と考え、リリアが使用している魔法技術の高さについては何も言わないことにした。


「……いやぁ、頼もしいね」

「頑張って私達も王級を目指します!」

「目指すはメンバー全員の王級へのランクアップですよ、リーダー!」

「それは、物凄く贅沢なパーティーになりそうだな。まぁ、そう意味では今回の標的は狙いどころか」


 資源ダンジョン〈紅果の森〉。
 その名を示す紅色の果実の確保を目指して、歩みを止めることなくダンジョンの奥へと進んでいった。



 
感想 0

あなたにおすすめの小説

ダンジョン発生から20年。いきなり玄関の前でゴブリンに遭遇してフリーズ中←今ココ

高遠まもる
ファンタジー
カクヨム、なろうにも掲載中。 タイトルまんまの状況から始まる現代ファンタジーです。 ダンジョンが有る状況に慣れてしまった現代社会にある日、異変が……。 本編完結済み。 外伝、後日譚はカクヨムに載せていく予定です。

アラフォーおっさんの週末ダンジョン探検記

ぽっちゃりおっさん
ファンタジー
 ある日、全世界の至る所にダンジョンと呼ばれる異空間が出現した。  そこには人外異形の生命体【魔物】が存在していた。  【魔物】を倒すと魔石を落とす。  魔石には膨大なエネルギーが秘められており、第五次産業革命が起こるほどの衝撃であった。  世は埋蔵金ならぬ、魔石を求めて日々各地のダンジョンを開発していった。

ダンジョンをある日見つけた結果→世界最強になってしまった

仮実谷 望
ファンタジー
いつも遊び場にしていた山である日ダンジョンを見つけた。とりあえず入ってみるがそこは未知の場所で……モンスターや宝箱などお宝やワクワクが溢れている場所だった。 そんなところで過ごしているといつの間にかステータスが伸びて伸びていつの間にか世界最強になっていた!?

最弱無双は【スキルを創るスキル】だった⁈~レベルを犠牲に【スキルクリエイター】起動!!レベルが低くて使えないってどういうこと⁈~

華音 楓
ファンタジー
『ハロ~~~~~~~~!!地球の諸君!!僕は~~~~~~~~~~!!神…………デス!!』 たったこの一言から、すべてが始まった。 ある日突然、自称神の手によって世界に配られたスキルという名の才能。 そして自称神は、さらにダンジョンという名の迷宮を世界各地に出現させた。 それを期に、世界各国で作物は不作が発生し、地下資源などが枯渇。 ついにはダンジョンから齎される資源に依存せざるを得ない状況となってしまったのだった。 スキルとは祝福か、呪いか…… ダンジョン探索に命を懸ける人々の物語が今始まる!! 主人公【中村 剣斗】はそんな大災害に巻き込まれた一人であった。 ダンジョンはケントが勤めていた会社を飲み込み、その日のうちに無職となってしまう。 ケントは就職を諦め、【探索者】と呼ばれるダンジョンの資源回収を生業とする職業に就くことを決心する。 しかしケントに授けられたスキルは、【スキルクリエイター】という謎のスキル。 一応戦えはするものの、戦闘では役に立たづ、ついには訓練の際に組んだパーティーからも追い出されてしまう。 途方に暮れるケントは一人でも【探索者】としてやっていくことにした。 その後明かされる【スキルクリエイター】の秘密。 そして、世界存亡の危機。 全てがケントへと帰結するとき、物語が動き出した…… ※登場する人物・団体・名称はすべて現実世界とは全く関係がありません。この物語はフィクションでありファンタジーです。

この世界にダンジョンが現れたようです ~チートな武器とスキルと魔法と従魔と仲間達と共に世界最強となる~

仮実谷 望
ファンタジー
主人公の増宮拓朗(ましみやたくろう)は20歳のニートである。 祖父母の家に居候している中、毎日の日課の自宅の蔵の確認を行う過程で謎の黒い穴を見つける。 試にその黒い穴に入ると謎の空間に到達する。 拓朗はその空間がダンジョンだと確信して興奮した。 さっそく蔵にある武器と防具で装備を整えてダンジョンに入ることになるのだが…… 暫くするとこの世界には異変が起きていた。 謎の怪物が現れて人を襲っているなどの目撃例が出ているようだ。 謎の黒い穴に入った若者が行方不明になったなどの事例も出ている。 そのころ拓朗は知ってか知らずか着実にレベルを上げて世界最強の探索者になっていた。 その後モンスターが街に現れるようになったら、狐の仮面を被りモンスターを退治しないといけないと奮起する。 その過程で他にもダンジョンで女子高生と出会いダンジョンの攻略を進め成長していく。 様々な登場人物が織りなす群像劇です。 主人公以外の視点も書くのでそこをご了承ください。 その後、七星家の七星ナナナと虹咲家の虹咲ナナカとの出会いが拓朗を成長させるきっかけになる。 ユキトとの出会いの中、拓朗は成長する。 タクロウは立派なヒーローとして覚醒する。 その後どんな敵が来ようとも敵を押しのける。倒す。そんな無敵のヒーロー稲荷仮面が活躍するヒーロー路線物も描いていきたいです。

アポカリプスな時代はマイペースな俺に合っていたらしい

黒城白爵
ファンタジー
 ーーある日、平穏な世界は終わった。  そうとしか表現できないほどに世界にモンスターという異物が溢れ返り、平穏かつ醜い世界は崩壊した。  そんな世界を自称凡人な男がマイペースに生きる、これはそんな話である。

異世界に召喚されたおっさん、実は最強の癒しキャラでした

鈴木竜一
ファンタジー
 健康マニアのサラリーマン宮原優志は行きつけの健康ランドにあるサウナで汗を流している最中、勇者召喚の儀に巻き込まれて異世界へと飛ばされてしまう。飛ばされた先の世界で勇者になるのかと思いきや、スキルなしの上に最底辺のステータスだったという理由で、優志は自身を召喚したポンコツ女性神官リウィルと共に城を追い出されてしまった。  しかし、実はこっそり持っていた《癒しの極意》というスキルが真の力を発揮する時、世界は大きな変革の炎に包まれる……はず。  魔王? ドラゴン? そんなことよりサウナ入ってフルーツ牛乳飲んで健康になろうぜ! 【「おっさん、異世界でドラゴンを育てる。」1巻発売中です! こちらもよろしく!】  ※作者の他作品ですが、「おっさん、異世界でドラゴンを育てる。」がこのたび書籍化いたします。発売は3月下旬予定。そちらもよろしくお願いします。

俺の家に異世界ファンタジーガチャが来た結果→現実世界で最強に ~極大に増えていくスキルの数が膨大になったので現実世界で無双します~

仮実谷 望
ファンタジー
ガチャを廻したいからそんな理由で謎の異世界ガチャを買った主人公はガチャを廻して自分を鍛えて、最強に至る。現実世界で最強になった主人公は難事件やトラブルを解決する。敵の襲来から世界を守るたった一人の最強が誕生した。そしてガチャの真の仕組みに気付く主人公はさらに仲間と共に最強へと至る物語。ダンジョンに挑戦して仲間たちと共に最強へと至る道。 ガチャを廻しまくり次第に世界最強の人物になっていた。 ガチャ好きすぎて書いてしまった。