万物争覇のコンバート 〜回帰後の人生をシステムでやり直す〜

黒城白爵

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第三章

第百二話 目的の果実

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 ◆◇◆◇◆◇


 資源ダンジョン〈紅果の森〉の名の由来になっている紅色の果実は、正式な名称を〈珠玉の迷果〉と言う。
 〈紅果の森〉の奥地にしか自生していない魔法的な力を持つ果実であり、色合いは名前の通り赤色で、サイズはリンゴより一回りほど小さい。
 リンゴに似た甘くて瑞々しい味だけでなく、食べた後の体力と魔力の回復力の一時的な強化を齎らしてくれる。
 これだけでも珠玉というアイテム名に恥じない効果を持つ希少な果実ではあるが、同じく果というアイテム名に相応しい副次的な効果も有していた。


「これは微弱な毒状態になる迷果だな。そしてこっちは酩酊状態になる迷果だ」

「マイナス効果ばかりですねー」

「プラス効果の迷果は中々見当たりませんね」

「プラス効果付きの迷果は全体の1割と言われてるからな。確率的にもこんなものだろう」


 紅果こと〈珠玉の迷果〉は、主要効果である体力魔力の一時的な回復力強化以外にも、個体ごとに異なるランダム効果を有している。
 実質的にはこのランダム効果こそが、迷果がその価値を高めるに至った理由だ。
 マイナス効果の迷果を食べると毒などといった様々な状態異常効果が齎され、プラス効果の迷果だと筋力や防御力などプラスになるような各種効果が付与される。
 どちらであっても効果は一時的なものだが、その効力は丸一日続く。
 また、迷果には果実の状態から加工すると主要効果もランダム効果も失われるという特徴があり、マイナス効果の迷果であってもジュースなどにすれば問題ないため、プラスもマイナスも共に需要があり、今も未来も高値で売買されていた。


「とはいえ、本命はコレじゃないんだけど」


 木に実っている全ての迷果を採取し、そのどれもがマイナス効果付きであることを確認すると、【堕天の蔵】の収納空間へと次々と放り込んでいく。
 俺と同じように【堕天の蔵】の出入り口である黄金の渦へと迷果を投げ入れていたリリアとマリヤが、この俺の呟きに反応してきた。


「本当にあるんですか? 迷果以外の紅果なんて聞いたことないんですけど」

「私もありません。ネットで検索しても紅色の果実は迷果しか出てきませんでしたよ」

「そりゃあ、存在を知っている極少数の奴らが隠してるからな。競争相手が増えるからネットで情報を拡散したりしないさ」

「リーダーはよく知ってましたね」

「異能のおかげだ」

「……クロヤさん。なんでも異能の力だと言っておけばいいと思っていませんか?」

「気のせいだ」


 リリアからの鋭い指摘を躱しつつ回収作業を続ける。
 今回のダンジョンアタックの真の目的とも言える迷果以外の紅果という存在が表舞台に出たのは、回帰前の世界だと今から約3年後。
 とある探索者が運良く入手し、深く考えずにSNSにあげたのがきっかけだった。
 それまでは大企業のトップや大型ギルドのギルドマスターなど極一部の者達しか存在を知らなかったが、この一件を境に情報が拡散した。
 今の時期ならば世間には知られていないので競争相手も限られている。
 だから、リハビリも兼ねてじっくりと探してみるには良い機会だと考えた。
 仮にその限られた競争相手がタイミングよく此処に来ていても、迷果の方が狙いだと思うはずなので大して気にすることはないだろう。


「む。プラスの迷果か」


 両眼に同化中の鑑定系アーティファクト〈月神の賢眼〉が、進行方向先の木に実っている迷果がプラス効果付きであることを教えてくれた。
 残念ながら目的の果実ではなかった。

 迷果の効果を調べるにはアイテム鑑定系のスキルが必須だ。
 アーティファクトである〈月神の賢眼〉の簡易版の〈鑑定宝玉〉が開発されるまでは、人やアイテムを鑑定するには鑑定スキルを持つ覚醒者に頼るしかなかった。
 そのため、資源ダンジョン〈紅果の森〉の深部で直接迷果の良し悪しを調べるには、鑑定スキル持ちを現場に連れてくる必要があるが、貴重かつ高給取りの鑑定持ちが危険なダンジョン内に出てくることは殆どない。
 なので、現状では鑑定スキルがなければ目に付いた迷果を適当に採取し、効果がプラスかマイナスかを確認せずに売却するしかなかった。
 売却の前に鑑定費用を支払って効果を調べるかどうか、その探索者次第だ。

 そういった事情と元々の数の少なさも相まって、プラス効果付きの迷果はマイナス効果付きの迷果の数十倍以上の価格で取引されている。
 アイテム鑑定用の鑑定宝玉が普及すれば、ダンジョン内で直接鑑定する者も増え、市場に流れるプラスの迷果の数も増えるに違いない。
 プラス効果付きの迷果で稼ぐならば今しかないが、目的の果実ではないので他の迷果と同様に収納していった。

 その後も時折プラス効果付きの迷果を見つけていったが、真の目的である迷果以外の紅色の果実は一向に見つからなかった。


「うーん。財宝王の装備があっても見つからないな……」


 身に付けている〈財宝王の四宝具:財を漁る魔宝環〉と〈財宝王の四宝具:命運握る首飾り〉には、それぞれ【財宝探知】と【財運招福】という能力がある。
 名前の通り、希少かつ高価なモノを探すのに役立つ能力なのだが、見つかるのはプラスの迷果だけだった。

 共に〈財宝王の四宝具シリーズ〉のマジックアイテムであり、全部で4種あるこのアイテムを全て揃えた先着1名は、ユニーククラス〈財宝王〉を獲得できる。
 回帰前の未来における〈財宝王〉の力を知っている身としては、そのユニーククラスの力の一端である2つの能力には期待していた。
 だが、たった2つだけでは、目的の果実を探し出すには力不足のようだった。
 

「……仕方ない。先にユニーククラス獲得を目指すか。2人共、今週は時間はあるか?」

「大丈夫ですよ」

「私も時間はありますよ」

「それなら良かった。明日……は準備があるだろうから、明後日からF県にあるダンジョンに行くぞ」


 回帰前の記憶が確かならば、財宝王シリーズのアイテムの1つはそこで手に入ったはずだ。
 残る1つに関しては時期的にまだ手に入らないから、一先ずこのアイテムを手に入れるとしよう。



 
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