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第一章
第四話 先輩との再会
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「──お久しぶりです、天城先輩」
「久しぶりね、5年ぶりかしら?」
「それぐらいですね」
俺からすれば前世含めて20年ぶりぐらいだが、今の彼女からしたら学生時代以来だから確かに5年ぶりになるだろう。
対面のカフェの椅子に座っている長い黒髪に碧い瞳の怜悧な美貌をした女性の名前は、天城レイカ。
数年前の学生時代の1つ上の先輩で、大企業である天城コーポレーションのご令嬢であり、天城コーポレーションの下部組織とも言えるガーベラギルドのギルドマスターだ。
携帯端末に入っていた連絡先が入っていたので連絡を取ってみたのだが、まさか翌日にすぐ会えるとは思わなかったな。
「連絡先を交換したのに全く連絡をくれなかったクロヤ君が連絡をくれた時は驚いたけど、クロヤ君も覚醒したとはね」
「はい、つい先日覚醒したばかりです」
「つまり、覚醒しなかったら連絡を取る気はなかったということ?」
「学生時代は委員会の先輩後輩の関係とはいえ、卒業後はお互い大企業の令嬢兼ギルドマスターとその辺の一般人という身の上ですから。学生時代の先輩後輩の関係というだけでは連絡を取りづらいってものですよ」
よっぽど親密な関係だったらならまだしも、俺の記憶が確かなら普通の先輩後輩の関係だったからな。
俺が女に飢えているタイプの男なら違ったのかもしれないけど……いや、それにしたって社会的にも生物的にも上の美女をわざわざ狙うのは色んな意味で自殺行為だから、どのみち連絡は取ってない気がする。
「冷たいわ……クロヤ君とは何度も一緒にお出掛けした仲なのにッ」
「委員会の買い出しとかで出掛けた記憶がありますね」
「水着を買いにも行ったわよ」
「委員会の買い出しの後にそのまま連行された形でしたけどね」
「……よく覚えてるわね」
「今こうして話していて思い出しました」
まさに会話に刺激されて思い出したって感じだな。
ついでに思い出したが、天城先輩の連絡先はその買い出しの時に交換していたみたいだ。
「相変わらずクロヤ君は先輩を虐めるのが好きなのね」
天城先輩が目元に浮かんでいない涙を拭う嘘泣きの仕草をするが、コレを見るのも久しぶりだ。
正面から見れば嘘泣きだと分かるが、周りから見たら俺が泣かせているように見えそうだ。
待ち合わせに使った場所が、人目に触れないカフェの個室で良かった。
「虐めてはいませんが、先輩をイジるのは好きですね」
「……本当に先輩だと思ってるのかしら」
「勿論です」
「……まぁ、このやり取りも久しぶりね。テレビで私が出ているのを見て連絡したっていうけど、それならもっと早く連絡してくれてもよかったじゃない」
「先輩も忙しそうでしたからね。俺も日々の生活の糧を得るのに大変でしたし」
「仕事はどうしてるの?」
「バイトですよ。といっても、覚醒者になってすぐに辞めてきましたけど」
モンスターや覚醒者がいる今の時代は、高学歴でもない限りは一般人が定職に就くことは難しくなっている。
社会の機械化が進んだことによる人件費の削減の影響もあるが、やはり一番はモンスターの存在が大きい。
ダンジョン内にいるモンスターは外に出てくることはないが、時折空間を越えて異次元からモンスターが出現することがある。
それらのモンスターに襲われた場合の死亡率は、一般人と覚醒者では一般人の方が遥かに大きいため、多くの企業では生き残る確率が高い、つまりは人的損失が起き難い覚醒者を正社員として雇う傾向があった。
せっかく育てた社員が突然現れたモンスターに襲われて死んでしまったら、人材の損失に加えて遺族への見舞金まで支払わなければならないため、自然とそのようなカタチになってしまっていた。
覚醒者だからといって、誰もがダンジョンに潜ったりモンスターと戦うことを生業にしたいわけではないのも、この社会構造が出来上がった一因だと言えるだろう。
「じゃあ、今はフリーなの? それともどこかのギルドに入ったのかしら?」
「いえ、フリーですよ。今回天城先輩に連絡を取ったのも覚醒者業界やギルド関連の情報を聞きたくて連絡を取ったんです」
「そういうことだったのね。それなら私のギルドに入らない? クロヤ君なら入団試験無しで入れてあげるわよ」
「思いっきりコネじゃないですか。それで入団しても他の団員の方々が良い顔しないでしょうから遠慮しておきます」
「そう? じゃあ、普通に試験を受ける?」
「いえ、せっかくのお誘いですが、まだ覚醒者界隈について詳しくないので今は遠慮しておきます。天城先輩のギルドに入りたい時は連絡しますので、その時はよろしくお願いします」
「慎重派ね。クロヤ君らしいわ。残念だけど、そういうことなら今はこれ以上誘うのは止めておくわ」
「ありがとうございます」
今日の目的はひとえに情報収集だからな。
現在の天城先輩の人となりを確認して、彼女のところの会社に鑑定系アーティファクト〈月神の賢眼〉の模造品の開発・生産を任せられるかを見定めるのが主な目的だ。
相変わらず美人で可愛い人だというのは分かったが、まだ彼女の親が営む会社については分かっていない。
久しぶりに会って早々に会社について尋ねたら怪しまれそうなので、今日のところは雑談に興じるとしよう。
「あ、ちなみに自分は異能持ちです。どんな異能かは秘密です」
「……これ以上誘うのを止めるといったのに、そんな情報を出すのはどうかと思うわ」
「天城先輩にだけ特別に教えたんです。内緒ですよ」
情報を得る対価に天城先輩の興味を惹く情報を投げてから、ギルドを含めた現在の覚醒者界隈の情報を尋ねていった。
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