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第一章
第五話 ダンジョンについて
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「──はぁ。今月分の家賃を抜いたら残り10万切ったな。ギルドの勧誘を受けておくべきだったか?」
天城先輩との再会から3日が経った。
前世の様々なダンジョンを毎日のように走り回っていた日常から解放されたのもあって、この3日間は買い出し以外では自宅でダラダラとしていた。
近場にダンジョンもないし、一番近いところにあるダンジョンもどこかのギルドの独占期間なので入ることはできない。
通常入場可能なダンジョンで一番近いのは隣の県なので、移動時間も含めると少し面倒くさかった。
「何かやる気が出る情報でもないと動く気は出ないなぁ……ん?」
ベッドの上で寝転がっていると目の前に半透明の板が出現した。
〈システム〉のウィンドウが現れるのは回帰してすぐのチンピラ三人衆戦以来……いや、正確には装備品の情報を確認した時以来だが、一体今度は何だろうと思い画面を確認する。
○クエスト『ダンジョンを発見せよ』
市内に未発見ダンジョンがあるようだ。現実世界に実体化する前に見つけ出せ。
自然豊かな場所に異変があるかもしれない。
⚫︎成功報酬
→ダンジョン発見の経験が異能所持者に変換されます。
・追加システム〈ダンジョン探知〉
・追加システム〈広域マップ〉
なんか凄いことが書かれてるんだが?
「ダンジョン探知って、実体化前のダンジョンも発見できるってことだよな? だとしたら凄い追加機能だな」
ダンジョンは黒い塔として現実世界に存在しているが、そのように存在するまでには全部で3つの段階を経る必要がある。
1段階目は、座標固定段階。
何処にダンジョンが出現するかが確定した段階であり、目の前で見ても分かるか分からないかぐらいの空間の揺らぎがある。
この予兆の段階では、ダンジョン出現予定地点に元々あった建物は普通に存在したままで、その場所を人や車などが行き来することも可能だ。
2段階目は、限定出現段階。
限定とあるように、限定的にダンジョンが出現している状態で、ダンジョンに入場した人数が一定数を超えるか、一定期間が経たない限りは現実世界に実体化しない。
実体化までの入場人数に関しては、ダンジョンによってバラバラだが、大体は10人前後だ。
期間に関してもダンジョンによって異なっている。
視覚的には以前のままの光景だが、この段階からその場所を人や車などが行き来できなくなる。
イメージとしては透明な壁が出現していると考えればいいだろう。
完全な実体化前である限定出現段階のダンジョンには、通常時のダンジョンのように塔の下部に〈ゲート〉という魔力の渦型の出入り口は存在していない。
ダンジョンが実体化していないことからゲートも実体化しておらず、代わりに限定出現段階のダンジョンの出入り口は、その出現場所に元々あった物の何かとゲート部分がリンクしている。
そのため、この段階のダンジョンに入るには、まずゲートとリンクしている何かを探す必要がある。
最後の3段階目は、現実空間への実体化段階であり、先日攻略したダンジョンもこの段階であり、これが一般的なダンジョンの状態だ。
この段階になると、ダンジョンと覚醒者に関する様々なことを取り仕切る〈探索者協会〉がダンジョンを一時封鎖し、協会による簡単な調査が行われてからギルドによる初探索権の入札が行われる。
初探索権の有効期間中は、その初探索権を購入したギルドのみがダンジョンを独占して探索することができる。
独占期間が設けられるのは、ダンジョンごとに発見してすぐの一度限りであるため、多くのギルドがこの権利の獲得のために入札争いに参加する。
なお、この独占期間の落札時に支払われた代金は、探索者協会の活動資金に充てられている。
「クエスト内容からして第2段階のダンジョンがあるわけか。市内で自然豊かな場所って何処があったっけ?」
スマホを取り出すと、ネット情報と地図アプリを使って条件に合う場所をピックアップする。
調べてみたところ、市内には条件に合う場所が幾つかあるようだった。
殆どの場所が自分の足で探すには時間の掛かる険しい環境みたいだが、その点に関しては方法があるのでそこまで気にしていない。
善は急げと言うし、さっそく向かうことにした。
「4箇所目で漸く見つけられたか。結構交通費がかかったな……」
もう少し動線を気にして順番を考えるんだったか。
まぁ、余計に金がかかっていた可能性もあるので、気にしないでおこう。
視界に映る透明の塔型のシルエットを見据えた後、周囲に広がる草木を見渡す。
先日手に入れた手のひらサイズの宝玉型アーティファクト〈月神の賢眼〉は、そのまま手に持ったまま使う方法以外にも、一時的に肉眼に同化させて名前の通り〈眼〉として使うことができる。
〈月神の賢眼〉との同化状態では、非同化状態でも使える鑑定能力に加えて様々な能力を使用することができ、その一つが空間認識能力だ。
この力を使って限定出現段階のダンジョンによる空間の揺らぎを認識し、こうして発見することができた。
「はぁ。結構魔力を喰うな。常時使用できるのはまだ先のことになりそうだ」
〈月神の賢眼〉と同化している間は常に魔力を消費し続ける。
現在の魔力の自然回復力よりも、同化状態の〈月神の賢眼〉による魔力消費の方が上回っているため、不使用時は同化を解除しておく必要があった。
今も早く外したいぐらいには魔力消費がキツいが、ダンジョンの入り口とリンクしているモノを見つけるまではやっておきたい。
程なくして視界内で強く魔力を発している木を見つけたので触れてみると、ゲートに触れた時と同じように木の幹へと手が沈んでいった。
そのまま身体も通過させた先には、ダンジョン内の空間が広がっていた。
「一般的な迷宮タイプのダンジョンか。ダンジョンのある場所といい、俺の記憶にはないダンジョンだな」
〈月神の賢眼〉を手に入れたダンジョンは、アーティファクト自体が有名だったのでダンジョンの場所についても記憶にあった。
というよりも、昔住んでた家の近くだったから強く記憶に残ってたと言うべきか。
それに比べると、ここには場所もダンジョンにも特徴がないため情報が全くなかった。
── クエスト『ダンジョンを発見せよ』が達成されました。
──達成報酬としてシステム機能に〈ダンジョン探知〉と〈広域マップ〉が追加されました。
──迅速にクエストが達成されました。
──特別報酬:各種能力値+10
システムの特別報酬で各種能力値が10ずつ増えたとはいえ、下級覚醒者の身でダンジョンに挑むのは厳しいな。
「うーむ。クエスト報酬は手に入れたけど、せっかく見つけたのに一度も挑戦しないのは損だよな」
レベルも上げたいし金も稼ぎたいから試しに挑戦してみるか……明日から。
今は魔力を消耗しているから、家に帰って一晩休んでから挑むとしよう。
そう決めると、踵を返してダンジョンを後にした。
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