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第一章
第六話 シリーズ系アイテム
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限定出現段階のダンジョンを発見した翌日。
一夜明けたことでアーティファクト〈月神の賢眼〉との同化で消耗した魔力は、完全に回復した。
危険度の分からないダンジョンに挑むための準備は整ったので、さっそくゲートとリンクしている木の幹を潜り抜けてダンジョン内へと入場する。
「さて、昨日の今日だが、また頼らせてもらおうか。〈同化〉」
懐に入っていた〈月神の賢眼〉が消え、次の瞬間にはアーティファクトが肉眼と同化した。
今の俺にはダンジョンに隠された罠を看破できるスキルがない。
スキルが無くとも前世の経験を頼りに進むことも可能だろうが、このアーティファクトがあるならばこちらの力を使った方が間違いなく安全だ。
「……スタートしてすぐ罠か。しかもこれは、毒ガスの罠みたいだな。危ない危ない」
〈月神の賢眼〉による空間認識能力で回廊の至るところに毒ガスの罠が仕掛けられているのが分かった。
前世ではある程度の状態異常に関する耐性スキルがあったが、覚醒して間もない俺は耐性スキルを所持していない。
未知のダンジョンに挑むにあたって、専門店で解毒ポーションを買ってあるが、等級が低いのでこのダンジョンの毒ガスにも有効かは不明だ。
実際に使ってみれば分かるが、そんな博打ができる余裕はないからな……。
毒ガスの罠を避けて進むと、次は落とし穴の罠だった。
その次は矢雨、火攻め、迫る壁、と様々な罠が仕掛けられており、それら全ての罠の起動スイッチを押さないように気をつけながら進んでいく。
「モンスターが1体も出てこないな。こういうダンジョンの攻略方法は、ボスモンスターの討伐ではなくギミック解除であることが殆どだ。となると、どこかにヒントがあるはず……」
罠を看破しながらダンジョンを進みつつ、迷宮タイプであるダンジョンの壁や床の装飾や紋様などを確認していく。
重要そうなモノはその都度スマホで撮影してから進んでいると、通路の端に宝箱が置かれていた。
ここに至るまで罠しかないダンジョンなので、どう考えても罠付きの宝箱にしか見えないのだが、同化しているアーティファクトによれば驚くことに罠は仕掛けられてないらしい。
「いや、そこは罠を仕掛けておくべきなのでは?」
なんとなく釈然としない気持ちを抱えたまま宝箱を開ける。
過去に回帰してからは初めてになるダンジョンの宝箱の中には、一対の黒い薄地の革手袋が入っていた。
○盗賊王の七つ秘具:盗賊王の技装手
等級:叙事級。
とあるダンジョンで産出された手袋型マジックアイテム。
〈盗賊王〉となる者が手にすることになる7つのマジックアイテムの1つ。
7つ全てを集めると何かが起こる。
・【盗賊王の技巧】……装備している間、芸術や武術などの技巧が強化される。
・【盗賊王の万能錠】……手で触れた同ランク以下の対象物にかけられている凡ゆるロックを解除する。
革手袋を注視すると〈システム〉がこのアイテムの詳細をウィンドウに表示してくれた。
中々使える能力を持っている上に、まさかのシリーズ物のマジックアイテムだった。
前世での定義通りに考えるならば、アイテム名の前に冠している名から取って〈盗賊王の七つ秘具シリーズ〉と呼ぶべきだろう。
このアイテムのような〈○○王の●●●〉という名称のアイテムの中には、稀にシリーズ物のアイテムが存在する。
これらのシリーズ系アイテムを全て揃えた際に起こることだが、それは〈○○王〉という名称の〈ユニーククラス〉の獲得だ。
ユニーククラスは世界で最初にそのシリーズ系アイテムを揃えた者しか獲得できない特別なクラスであり、そのユニーククラスに由来する強力なスキルまで同時に獲得することができる。
また、肝心のアイテムは唯一無二のアーティファクトというわけではないので、同名マジックアイテムが複数個出現する可能性があるため、誰にでもチャンスがあるのもまた特徴だと言える。
だが、なんと言ってもユニーククラス最大の特徴は、ユニーククラスは基本のクラスとは別枠の扱いであり、1つしか所持できない基本クラスと違って幾つでも獲得が可能であることだろう。
クラスが多い分だけ各種能力値へのボーナスが増える上に、ユニーククラスを獲得する度に強力なスキルが増えるため、前世ではこれらのシリーズ系アイテムの競争率はアーティファクトに迫るレベルだったと言っても過言ではない。
そんな人気アイテムがこのダンジョンで手に入るとは、前世と違って運が良いな。
「同名アイテムは同じダンジョンで再び手に入る可能性が高い。〈盗賊王〉のクラスの競争相手を減らすなら、早くこのダンジョンを攻略して消滅させた方がいいよな」
前世で〈盗賊王〉を有していた者がいたか知らないので、取得できるスキルについても分からない。
ユニーククラスの中にはハズレもあるため〈盗賊王〉の評価はし難いが、ユニーククラスを抜きにしても使えるアイテムなので有り難く使わせてもらうとしよう。
「フゥ。この辺りに罠はないみたいだし、少し休憩するか」
ずっと罠の起動スイッチの位置を避けることに集中していたので、精神的な疲れが出ていた。
前世ではこの程度は軽く耐えられたが、流石に覚醒したばかりの今の俺には厳しいようだ。
アーティファクト〈月神の賢眼〉の同化を解くと、暫く身体と精神を休ませた。
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