9 / 140
第一章
第九話 未来に向けての動き
しおりを挟む◆◇◆◇◆◇
通常の人間とは異なり、魔力という特殊なエネルギーと魔力により発動するスキルや異能といった力を扱える覚醒者は、人間社会における制約が幾つかある。
覚醒者へと覚醒した際に、最寄りの役所にて覚醒者として登録することもその一端だ。
役所で簡単に即日登録が可能なのは、下級覚醒者が覚醒者全体で最も数が多いのと、各地にある役所で対応した方が従来の住民IDと併せて管理しやすいという手続き上での利便性が理由だった。
そんな覚醒者達の等級は全員下級から始まるが、モンスターとの戦いを繰り返すことで下級から中級へと自然とランクアップする。
この中級覚醒者からは、明確に通常の人間よりも高い身体能力を持つようになり、その管理体制も役所から専門機関へと移されるようになる。
その専門機関というのが〈探索者協会〉であり、モンスターとの戦いに慣れた中級以上の覚醒者を纏めて管理している。
この〈探索者〉という呼称は、より本格的なダンジョン内の探索を行う者、という意味合いで付けられたらしい。
中級覚醒者になると探索者協会で探索者として登録する義務が発生し、いつまでも登録せずにいると法に従わない犯罪者として逮捕される可能性があった。
一般人を軽く超える力があるのだから、社会秩序を維持するためには当然の判断だと言える。
また、探索者は有事の際には国から助力が求められるが、これらには強制力はない。
具体的には、モンスターの侵攻に対する防衛や犯罪を犯した覚醒者の捕縛などが挙げられるが、探索者登録は義務でも有事に対してはあくまでも協力要請だ。
と言っても、対人間の争いになる犯罪系覚醒者の捕縛はまだしも、モンスターに対する防衛活動に関しては実質的には強制だと言える。
このまま縛り付けるだけでは覚醒者達の不満が積もるばかりだが、中級以上の覚醒者である探索者達には免税や減税などといった特別措置が取られており、このおかげで目に見える不満は起こっていない。
まぁ、逆を言えばこの特別措置がある所為で直接的にも間接的にもモンスターと戦う羽目になるため、全ての探索者達が納得しているわけではないのだが。
「はい。ありがとうございます。それでは本日の検査結果は後日メールにてお知らせさせていただきます。探索者としての登録につきましては、検査結果を以て追ってご連絡させていただきます。本日はありがとうございました」
「こちらこそ、ありがとうございました」
中級覚醒者かどうかの検査を担当してくれた探索者協会の職員に礼を言ってから建物を出る。
この時点での探索者協会の検査方法では、探索者登録に来た覚醒者の等級が中級であるかを確認するには時間が必要だ。
時間がかかる上に正確でもなかったため、前世で鑑定宝玉が製作された時に特に歓迎していたのは探索者協会だった。
鑑定系アーティファクト〈月神の賢眼〉の量産版である鑑定宝玉があれば、従来の検査方法よりも確実かつ即座に結果が出るのだから当然の反応だと言える。
そういった背景もあって、前世で〈月神の賢眼〉を手に入れたものが属するギルドと大企業は、鑑定宝玉を製作したことで多大な権力を握っていた。
鑑定宝玉の輸出によってその影響力は国外にまで広がり、国内で彼らに逆らえる者は殆どいなかったと言っても過言ではない。
その権力を持った者が善人だったら良かったのだが、実際には善の対局にいるような者であり、前世のディストピアな格差社会を生み出した元凶の1人でもあった。
まぁ、そんな彼の手にあったはずの未来の栄光への切符は、今では俺の手の中にあるので、全く同じ社会にはならないだろう。
「とはいえ、今のままでは一発でステータスが出るわけじゃないから時間が掛かるな」
前世の探索者協会には検査用に機能が絞られた各種検査用の鑑定宝玉があった。
その場で検査結果が出ていた鑑定宝玉と比べるのは間違っていると分かってはいるんだが、どうしても比べてしまう。
鑑定宝玉が世に出るのが遅れれば遅れるだけ、有能な覚醒者が才能を自覚することなく埋没していくことになりそうだ。
「やはり鑑定宝玉の開発と量産化は急務か。上級覚醒者になってからと思ったが、探索者になってからでもいいか」
上級覚醒者になれば高位覚醒者に分類され、今よりも強くなり身を守る術も増えているだろう。
少なくとも今の中級覚醒者の身よりは安全なはずなので、自分の身の安全を第一に考えるならば待った方がいい。
だが、我が身可愛さに動こうとしないようでは、回帰後の人生でも勝ち組にはなれないだろう。
「利権を得るには早い方が良いしな」
自由に使える金が増えれば出来ることも増える。
探索者として高みに昇るには、装備などでどうしても金がかかるしな。
全てをドロップアイテム──ダンジョン内の宝箱などで手に入る、アーティファクトを除いたマジックアイテムのこと──で賄えるなら良いのだが現実的ではない。
回帰してから回った2つのダンジョンの内、ダンジョン攻略に際して必ず手に入る2つのアーティファクトを除くと、手に入れたマジックアイテムは2つ。
その2つは共に同じ未発見ダンジョンで入手しており、ダンジョンのほぼ全域を探索してもその2つしかなかったことからも分かるように、ダンジョン内でドロップアイテムが手に入るのは非常に珍しい。
最初のダンジョンには既に多くの下級覚醒者や探索者達が挑んでおり、先日の未発見ダンジョンとは違い、全てのエリアを探索してもマジックアイテムは手に入らなかっただろう。
暫く時間が経てば、不定期ではあるが再び宝箱が出現しはするが、競争相手が多いためドロップアイテムのみで全身の装備を揃えるのはほぼ不可能だと言える。
そのため、大半の探索者達はモンスターを倒して得た素材を使って製作された装備を身に付けている。
そして、それらの装備はとても高価であり、購入するには必然的に大金が必要になるというわけだ。
これもまた格差社会化の一因ではあるが、こればかりはどうしようもないことだと考えている。
というか現状では解決策が思いつかないというべきか。
性能の良いマジックアイテムが安価で数を揃えられれば、モンスターとの戦いでも優位になるんだけどな……。
「ま、今はいいか。さっそく天城先輩に連絡を取ろう」
先日天城先輩と再会した後も、スマホのコミュニケーションアプリを使って交流を続けている。
スマホを通してではあるが現在の天城先輩の人となりは大体分かったし、天城先輩の親の会社の評判についてもネットで調べた。
ネット情報の全てを鵜呑みにするほど愚かではないが、それでも参考程度にはなる。
少なくともアーティファクトの簡易版の開発と量産化を託すビジネスパートナーとしては申し分なかった。
帰宅してから改めて調べた情報からそう結論づけると、天城先輩に『先輩のとこの会社って、アーティファクトの簡易版って作ったことありましたっけ?』と軽く探るようなら調子でトークを送信した。
31
あなたにおすすめの小説
日本国 召喚獣管理省 関東庁 召喚獣総合事案即応科。
wakaba1890
ファンタジー
召喚獣。
それは向こう側とされる所から、10歳を迎えた日本人の子供の下に召喚されるモンスターのことである。
初代天皇・神武天皇が日本を建国した際に書かれた絵画には彼は金鵄と呼ばれる金色に輝く鵄(とび)と契約したのが原初となっている。
そして、縄文、弥生、古墳、飛鳥、平安、戦国時代から近代から今に至るまで、時代を動かしてきた人物の側には確かに召喚獣は介在していた。
また、奇妙な事に、日本国に限り、齢10歳を迎えた日本在住の日本人にのみ体のどこかから多種多様な紋章が発現し、当人が念じると任意の場所から召喚陣が現れ、人ならざるモンスターを召喚される。
そして、彼らモンスターは主人である当人や心を許した者に対して忠実であった。
そのため、古来の日本から、彼ら召喚獣は農耕、治水、土木、科学技術、エネルギー、政治、経済、金融、戦争など国家の基盤となる柱から、ありとあらゆる分野において、今日に至るまで日本国とアジアの繁栄に寄与してきた。
そして、建国から今まで、国益の基盤たる彼ら数万種類以上をも及ぶ召喚獣を取り締まり管理し、2600年以上と脈々と受け継がれてきた名誉ある国家職がーーーーー国家召喚獣管理官である。
新世機生のアポストル 〜Restart with Lost Relic〜
黒城白爵
ファンタジー
異界から突如出現したモンスターによって、古き世界は終わりを告げた。
新たな世界の到来から長い年月が経ち、人類は世界各地に人類生存圏〈コロニー〉を築いて生き残っていた。
旧人類、新人類、コロニー企業、モンスター、魔力、旧文明遺跡、異文明遺跡……etc。
そんな様々な物が溢れ、廃れていく世界で生きていた若きベテランハンターのベリエルは、とある依頼で負った怪我の治療費によって一文無しになってしまう。
命あっての物種、だが金が無ければ何も始まらない。
泣く泣く知り合いから金を借りてマイナススタートを切ることになったベリエルは、依頼で危険なコロニーの外へと向かい、とある遺物を発見する……。
この世界にダンジョンが現れたようです ~チートな武器とスキルと魔法と従魔と仲間達と共に世界最強となる~
仮実谷 望
ファンタジー
主人公の増宮拓朗(ましみやたくろう)は20歳のニートである。
祖父母の家に居候している中、毎日の日課の自宅の蔵の確認を行う過程で謎の黒い穴を見つける。
試にその黒い穴に入ると謎の空間に到達する。
拓朗はその空間がダンジョンだと確信して興奮した。
さっそく蔵にある武器と防具で装備を整えてダンジョンに入ることになるのだが……
暫くするとこの世界には異変が起きていた。
謎の怪物が現れて人を襲っているなどの目撃例が出ているようだ。
謎の黒い穴に入った若者が行方不明になったなどの事例も出ている。
そのころ拓朗は知ってか知らずか着実にレベルを上げて世界最強の探索者になっていた。
その後モンスターが街に現れるようになったら、狐の仮面を被りモンスターを退治しないといけないと奮起する。
その過程で他にもダンジョンで女子高生と出会いダンジョンの攻略を進め成長していく。
様々な登場人物が織りなす群像劇です。
主人公以外の視点も書くのでそこをご了承ください。
その後、七星家の七星ナナナと虹咲家の虹咲ナナカとの出会いが拓朗を成長させるきっかけになる。
ユキトとの出会いの中、拓朗は成長する。
タクロウは立派なヒーローとして覚醒する。
その後どんな敵が来ようとも敵を押しのける。倒す。そんな無敵のヒーロー稲荷仮面が活躍するヒーロー路線物も描いていきたいです。
アポカリプスな時代はマイペースな俺に合っていたらしい
黒城白爵
ファンタジー
ーーある日、平穏な世界は終わった。
そうとしか表現できないほどに世界にモンスターという異物が溢れ返り、平穏かつ醜い世界は崩壊した。
そんな世界を自称凡人な男がマイペースに生きる、これはそんな話である。
シスターヴレイヴ!~上司に捨て駒にされ会社をクビになり無職ニートになった俺が妹と異世界に飛ばされ妹が勇者になったけど何とか生きてます~
尾山塩之進
ファンタジー
鳴鐘 慧河(なるがね けいが)25歳は上司に捨て駒にされ会社をクビになってしまい世の中に絶望し無職ニートの引き籠りになっていたが、二人の妹、優羽花(ゆうか)と静里菜(せりな)に元気づけられて再起を誓った。
だがその瞬間、妹たち共々『魔力満ちる世界エゾン・レイギス』に異世界召喚されてしまう。
全ての人間を滅ぼそうとうごめく魔族の長、大魔王を倒す星剣の勇者として、セカイを護る精霊に召喚されたのは妹だった。
勇者である妹を討つべく襲い来る魔族たち。
そして慧河より先に異世界召喚されていた慧河の元上司はこの異世界の覇権を狙い暗躍していた。
エゾン・レイギスの人間も一枚岩ではなく、様々な思惑で持って動いている。
これは戦乱渦巻く異世界で、妹たちを護ると一念発起した、勇者ではない只の一人の兄の戦いの物語である。
…その果てに妹ハーレムが作られることになろうとは当人には知るよしも無かった。
妹とは血の繋がりであろうか?
妹とは魂の繋がりである。
兄とは何か?
妹を護る存在である。
かけがいの無い大切な妹たちとのセカイを護る為に戦え!鳴鐘 慧河!戦わなければ護れない!
ダンジョン学園サブカル同好会の日常
くずもち
ファンタジー
ダンジョンを攻略する人材を育成する学校、竜桜学園に入学した主人公綿貫 鐘太郎(ワタヌキ カネタロウ)はサブカル同好会に所属し、気の合う仲間達とまったりと平和な日常を過ごしていた。しかしそんな心地のいい時間は長くは続かなかった。
まったく貢献度のない同好会が部室を持っているのはどうなのか?と生徒会から同好会解散を打診されたのだ。
しかしそれは困るワタヌキ達は部室と同好会を守るため、ある条件を持ちかけた。
一週間以内に学園のため、学園に貢献できる成果を提出することになったワタヌキは秘策として同好会のメンバーに彼の秘密を打ちあけることにした。
【もうダメだ!】貧乏大学生、絶望から一気に成り上がる〜もし、無属性でFランクの俺が異文明の魔道兵器を担いでダンジョンに潜ったら〜
KEINO
ファンタジー
貧乏大学生の探索者はダンジョンに潜り、全てを覆す。
~あらすじ~
世界に突如出現した異次元空間「ダンジョン」。
そこから産出される魔石は人類に無限のエネルギーをもたらし、アーティファクトは魔法の力を授けた。
しかし、その恩恵は平等ではなかった。
富と力はダンジョン利権を牛耳る企業と、「属性適性」という特別な才能を持つ「選ばれし者」たちに独占され、世界は新たな格差社会へと変貌していた。
そんな歪んだ現代日本で、及川翔は「無属性」という最底辺の烙印を押された青年だった。
彼には魔法の才能も、富も、未来への希望もない。
あるのは、両親を失った二年前のダンジョン氾濫で、原因不明の昏睡状態に陥った最愛の妹、美咲を救うという、ただ一つの願いだけだった。
妹を治すため、彼は最先端の「魔力生体学」を学ぶが、学費と治療費という冷酷な現実が彼の行く手を阻む。
希望と絶望の狭間で、翔に残された道はただ一つ――危険なダンジョンに潜り、泥臭く魔石を稼ぐこと。
英雄とも呼べるようなSランク探索者が脚光を浴びる華やかな世界とは裏腹に、翔は今日も一人、薄暗いダンジョンの奥へと足を踏み入れる。
これは、神に選ばれなかった「持たざる者」が、絶望的な現実にもがきながら、たった一つの希望を掴むために抗い、やがて世界の真実と向き合う、戦いの物語。
彼の「無属性」の力が、世界を揺るがす光となることを、彼はまだ知らない。
テンプレのダンジョン物を書いてみたくなり、手を出しました。
SF味が増してくるのは結構先の予定です。
スローペースですが、しっかりと世界観を楽しんでもらえる作品になってると思います。
良かったら読んでください!
現実世界にダンジョンが出現したのでフライングして最強に!
おとうふ
ファンタジー
2026年、突如として世界中にダンジョンが出現した。
ダンジョン内は無尽蔵にモンスターが湧き出し、それを倒すことでレベルが上がり、ステータスが上昇するという不思議空間だった。
過去の些細な事件のトラウマを克服できないまま、不登校の引きこもりになっていた中学2年生の橘冬夜は、好奇心から自宅近くに出現したダンジョンに真っ先に足を踏み入れた。
ダンジョンとは何なのか。なぜ出現したのか。その先に何があるのか。
世界が大混乱に陥る中、何もわからないままに、冬夜はこっそりとダンジョン探索にのめり込んでいく。
やがて来る厄災の日、そんな冬夜の好奇心が多くの人の命を救うことになるのだが、それはまだ誰も知らぬことだった。
至らぬところも多いと思いますが、よろしくお願いします!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる