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第一章
第十一話 資源ダンジョン
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国家によって対応に多少の差はあるが、ダンジョンは基本的に一般にも開放されている。
この場合の一般とは探索者ではない覚醒者、つまりは下級覚醒者のことを指しており、彼らの多くは覚醒者になったからといってダンジョンに潜ることはない。
モンスターやダンジョンの罠、果ては同じ覚醒者の手によってダンジョン内で命を落とす危険性があることを考えれば、覚醒者に覚醒しても一般社会で働く道を選ぶのは当然のことだと言える。
回帰前の俺も当初はそんな道を選んだ1人だった。
だが、ドロップアイテムやモンスターの素材といったダンジョン内産出物の金銭的価値が世間に知れ渡るに従い、ダンジョンに潜る一般覚醒者の数は年々上昇傾向にあった。
一言で言えば、一攫千金を狙う覚醒者の数が増えていた。
「スゲー人集り。流石は資源ダンジョンと言うべきか」
探索者協会で探索者IDを発行してもらってから初めてダンジョンに来てみると、多くの覚醒者がダンジョン前に屯っていた。
空気中には放出された大量の魔力が漂っており、それだけ魔力制御力の拙い一般覚醒者が多数集まっていることが分かる。
前世でもそうだったが、やはり国が管理している資源ダンジョンは人気があるな。
ダンジョンは現実空間への顕現後、一度探索者協会に接収され、探索者協会による簡単な調査の後に初探索権のオークションがなされる。
その初探索権を落札したギルドによる独占期間を経た後は、他の覚醒者と探索者達にも開放されるというのが通常の流れだ。
しかし、この流れにも例外があり、探索者協会による調査の段階でダンジョン内にて有用な資源が確認された場合は、国によってそのダンジョンが管理されるようになる。
そういったダンジョンは〈国営ダンジョン〉に分類されるが、一般的にはその成り立ちと目的から〈資源ダンジョン〉という俗称で呼ばれている。
今日やって来た目の前のダンジョンは、そんな資源ダンジョンの一つだった。
この国営たる資源ダンジョンは、国の大事な資産であり、勝手に攻略した場合は問答無用で重罪になる。
ダンジョン内の資源には、ダンジョン外にモンスター素材だけでなく草花や鉱物などを持ち出しても時間経過で復活するという特徴がある。
そんな尽きることのない資源の宝庫を失った場合の経済的損失は計り知れず、攻略厳禁となるのは当然のことだろう。
大半のダンジョンは、回帰後に挑戦し攻略した2つのダンジョンのような迷宮タイプのダンジョンであり、こういったダンジョンには資源的な価値はないため攻略を推奨されている。
一方で、資源ダンジョンは環境タイプと呼ばれる山や森林などといった自然豊かなフィールドがダンジョン内に広がっていた。
そのフィールドに沿った資源が産出されるのが殆どであり、資源によってはこれまでのように外国からの輸入に頼らずに済むようになるため、新たな資源ダンジョンが見つかる度に貿易問題が起こっていたりする。
「みんな凄い荷物だな」
無限とも言える資源が得られるとはいえ、ダンジョンであることには変わりないので、魔力の使えない一般人ではダンジョンに潜ることはできない。
そのため、資源ダンジョンの資源採集に多くの一般覚醒者が駆り出されることになった。
彼らは基本的にその身一つでダンジョン内の資源を回収して売却するため、頑張り次第ではあるがかなりの収入を得ている。
探索者ではない一般覚醒者であっても魔力やステータスを有しているので、非覚醒者の一般人以上の膂力と体力を持っており、これが高収入の理由の一つでもあった。
そんな常人を超えた身体能力を持つ一般覚醒者であっても、採取道具や収納道具、作業中に現れるモンスターから身を守るための武器や防具が必要であることに変わりなく、自然と大荷物になっていた。
「身軽な格好で浮くかと思ったけど、そうでもないな」
先日の未発見ダンジョンで収納系マジックアイテム〈宝納の指環〉を手に入れており、手荷物や戦利品を収納用の異空間に収納することができる。
収納系マジックアイテムは非常に高価なので、偽装用にリュックサックを背負っていた。
ただ、収納道具以外はその辺の店にでも出掛けるつもりなのかというぐらいの軽装の格好をしている。
これは、単純にモンスターと戦うための防具を持っていないからなのだが、一目で防御力の高い鎧などの防具を身に付けている者は珍しいのと、専業探索者ではない一般覚醒者が多いのもあって目立っていなかった。
「資源ダンジョン〈紅果の森〉か。懐かしいな」
ダンジョンの外観である黒い塔を見上げながら前世の記憶を振り返る。
資源ダンジョンは他の攻略可のダンジョンとは異なり固有の名称が国から付けられている。
その名称に法則はないことから、適当に付けられているとか、ネーミング担当が複数人いるとか、AIが付けているとか言われているが、真実は不明だ。
どんなダンジョンか分からない名称の資源ダンジョンもある中、この〈紅果の森〉は非常に分かりやすい。
このダンジョンのフィールドは〈森林〉で、ダンジョン内で最も価値のある資源は特殊な効果を持つ〈紅色の果実〉であるため、まさにダンジョンの特徴を簡潔に表したネーミングセンスだと言えるだろう。
「そのまま過ぎる気もするけど、分からないよりは良いもんな」
前世にあった〈飛び出せ魔境戦線〉とかいう名称の資源ダンジョンよりはマシだしな。
ちなみにこれは多種多様なモンスターの素材が手に入ることを示していると言われていた。
今の時期にはまだ出現していないが、回帰後もやはり同じ名称になるんだろうな……。
「次の人どうぞ」
「あ、はい。お願いしまーす」
トラブル防止用に一般覚醒者と探索者とで分けられた受付の列の、探索者用の列に並んでいると順番が回ってきたので探索者協会の職員にIDを渡した。
今回、俺がこのダンジョンに来た目的は紅色の果実ではないが、普通に買うと高いので、いずれ自分用に手に入れてみても良いかもしれない。
ま、それももう少し強くなって安全マージンを確保してからだな。
そんなことを考えつつ入場受付を済ませると、資源ダンジョン〈紅果の森〉へと足を踏み入れた。
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