12 / 165
第一章
第十二話 紅果の森
◆◇◆◇◆◇
資源ダンジョン〈紅果の森〉は他のダンジョンがそうであるように、出入り口であるゲートから離れるほどにその危険度が上がっていく。
それはモンスターの強さという意味だけでなく、周囲の森に自生する植物の致死性という意味でも危険度が上がっていくため、強いモンスターと戦うのに慣れた覚醒者であっても油断は出来ない。
その一方でゲート周辺の危険度は低く、下級覚醒者である一般覚醒者であっても安全に活動することができる。
だが、治外法権であるダンジョンの中で危険なのはモンスターやフィールドの環境だけではない。
人目に触れない死角が多いダンジョン内では、人間同士の諍いや犯罪が起こることは珍しくなかった。
まさに真に恐ろしいのは同じ人間というやつだ。
そのため、探索者として登録義務のある中級以上の覚醒者達が国家公認の互助組織である〈ギルド〉を結成するのに倣い、一般覚醒者達も〈コミュニティ〉と呼ばれる共同体を結成して人数を揃えて、人間同士のトラブルや急なモンスターの襲撃から身を守っていた。
そういった経緯から、ゲートの周りには複数のコミュニティの姿が見受けられた。
この資源ダンジョンではコミュニティごとに縄張りがあるようで、自生している草花などを採取するにあたって互いに離れて採取しているように見えた。
コミュニティとは、一般覚醒者達がダンジョン内で安全に金を稼ぐにあたり、互いに助け合うのを目的として結成されている。
それ故に、コミュニティは中級覚醒者にランクアップするのを諦めたり、ダンジョンは利用したいけど探索者にはなりたくない下級覚醒者達の集まりであることが多い。
そういったコミュニティはゲートの近くから活動範囲を広げようとしないため、何度か同じ資源ダンジョンに通っていれば自然と同じ顔触れをゲート近くで見るようになる。
実際、そんな彼らの縄張りの隙間にある植物系資源を採取ながら奥へと進んでいると、ゲート近くで採取しているコミュニティに軽蔑の視線を向けている探索者をチラホラと見かけた。
コミュニティの者達も、奥に向かう探索者と視線を合わせないように顔を伏せており、どこかギスギスとした雰囲気がゲートの辺りに漂っていた。
「いつの時代も、どこの資源ダンジョンも変わらないな」
まぁそれでも、こうして見た限りではコミュニティに難癖をつける探索者は見かけないし、ここの資源ダンジョンの治安はまだマシな方だ。
前世で回った資源ダンジョンの中でも酷いところは、人影を見かけたらすぐに武器を構えて警戒する必要があるレベルで秩序が崩壊していたからな……。
やはり、まだ今の時期は覚醒者業界がそこまで切羽詰まっていないからだろう。
一部の高位覚醒者によって覚醒者業界が支配されていないため、人や物やダンジョンといった各種資源に余裕があるからだ。
前世のような悪質な独占状態が起こってしまうと、僅かな浮いた資源を巡って争いが頻発するようになるだろう。
そうならないようにするためにも、力を付けないといけないな。
「そのためにも、モンスターを倒さないとな」
木陰から姿を現したアリ系モンスター〈兵隊魔蟻〉に対して、二振りの〈八咫烏の三翅刀〉を構える。
ここの資源ダンジョンには、アリ系、カマキリ系、ハチ系の3種の蟲タイプのモンスターが出現する。
ダンジョンの奥地にはハチ系モンスターが、ゲートの浅いところにはアリ系モンスターがそれぞれ出現し、残るカマキリ系モンスターはその中間あたりに出現する傾向にある。
3種のモンスターの中で最も危険度が高いのがハチ系モンスターで、最も低いのがアリ系モンスターであり、目の前のインファントリーアントはそのアリ系モンスターの中でも下位に位置していた。
そのため、特に苦労することなくインファントリーアントを倒すことができた。
「とはいえ、【属性変換】とコレがなかったら多少面倒だったかもしれないけど」
コレこと、右手首に装着した紫色の謎の紋様が刻まれた金色の腕環に視線を向ける。
複合系アーティファクト〈支配の王環〉。
先日の限定出現段階のダンジョンの核だったアーティファクトであり、このアーティファクトが有する属性強化能力によって短刀が宿す属性魔力が強化されたおかげで、簡単にインファントリーアントを討伐できた。
インファントリーアントは種の中では下位ではあるが、アリ系モンスターの特徴でもある全身を覆う甲殻は硬く、丸みも帯びているため防御力は同ランクのモンスターの中でも高めだ。
中級覚醒者になったばかりの探索者にとっては少し厄介なモンスターなのだが、〈陽光〉から〈破壊〉へと属性を変えた上に、その属性魔力をアーティファクトで強化した短刀の一撃を防げるほどではなかった。
「これならもう少し上のアリともやれそうだな」
そんな風に現在の力量を確認していると、数日ぶりに〈システム〉のウィンドウが目の前に出現した。
○クエスト『モンスターを討伐せよ』
ダンジョンに出現しているアリ系モンスターの数が多いようだ。
ダンジョンを出るまでに出来るだけ多くのアリ系モンスターを倒し、自らの成長の糧にしよう。
ダンジョンのどこかにアリ系モンスター達の巣があるかもしれない。
⚫︎成功報酬
→モンスター討伐の経験が異能所持者に変換されます。報酬アイテムは討伐数によって変化します。
・スキル【蟲殺し】
・アイテム〈???〉
どうやらただアリ系モンスターを倒すだけで、クエスト報酬でスキルだけでなくアイテムまで貰えるようだ。
「討伐数の上限が分からないから目安をつけられないが……まぁ、限界までやってみるか」
幸いにも異能と武器の能力のおかげで俺の継戦能力は高い。
ただ、食料や飲料は軽食レベルでしか持ち込んでいないので限界はある。
それに、視界の悪い夜の森でも変わらず戦い続けられる自信はないから、夕暮れ時には討伐を止めることになるだろう。
取り敢えず、効率的に倒すためにも、アリ系モンスターの巣を探すところから始めるとするか。
あなたにおすすめの小説
この世界にダンジョンが現れたようです ~チートな武器とスキルと魔法と従魔と仲間達と共に世界最強となる~
仮実谷 望
ファンタジー
主人公の増宮拓朗(ましみやたくろう)は20歳のニートである。
祖父母の家に居候している中、毎日の日課の自宅の蔵の確認を行う過程で謎の黒い穴を見つける。
試にその黒い穴に入ると謎の空間に到達する。
拓朗はその空間がダンジョンだと確信して興奮した。
さっそく蔵にある武器と防具で装備を整えてダンジョンに入ることになるのだが……
暫くするとこの世界には異変が起きていた。
謎の怪物が現れて人を襲っているなどの目撃例が出ているようだ。
謎の黒い穴に入った若者が行方不明になったなどの事例も出ている。
そのころ拓朗は知ってか知らずか着実にレベルを上げて世界最強の探索者になっていた。
その後モンスターが街に現れるようになったら、狐の仮面を被りモンスターを退治しないといけないと奮起する。
その過程で他にもダンジョンで女子高生と出会いダンジョンの攻略を進め成長していく。
様々な登場人物が織りなす群像劇です。
主人公以外の視点も書くのでそこをご了承ください。
その後、七星家の七星ナナナと虹咲家の虹咲ナナカとの出会いが拓朗を成長させるきっかけになる。
ユキトとの出会いの中、拓朗は成長する。
タクロウは立派なヒーローとして覚醒する。
その後どんな敵が来ようとも敵を押しのける。倒す。そんな無敵のヒーロー稲荷仮面が活躍するヒーロー路線物も描いていきたいです。
私のスキルが、クエストってどういうこと?
地蔵
ファンタジー
スキルが全ての世界。
十歳になると、成人の儀を受けて、神から『スキル』を授かる。
スキルによって、今後の人生が決まる。
当然、素晴らしい『当たりスキル』もあれば『外れスキル』と呼ばれるものもある。
聞いた事の無いスキル『クエスト』を授かったリゼは、親からも見捨てられて一人で生きていく事に……。
少し人間不信気味の女の子が、スキルに振り回されながら生きて行く物語。
一話辺りは約三千文字前後にしております。
更新は、毎週日曜日の十六時予定です。
『小説家になろう』『カクヨム』でも掲載しております。
俺の家に異世界ファンタジーガチャが来た結果→現実世界で最強に ~極大に増えていくスキルの数が膨大になったので現実世界で無双します~
仮実谷 望
ファンタジー
ガチャを廻したいからそんな理由で謎の異世界ガチャを買った主人公はガチャを廻して自分を鍛えて、最強に至る。現実世界で最強になった主人公は難事件やトラブルを解決する。敵の襲来から世界を守るたった一人の最強が誕生した。そしてガチャの真の仕組みに気付く主人公はさらに仲間と共に最強へと至る物語。ダンジョンに挑戦して仲間たちと共に最強へと至る道。
ガチャを廻しまくり次第に世界最強の人物になっていた。
ガチャ好きすぎて書いてしまった。
ダンジョン学園サブカル同好会の日常
くずもち
ファンタジー
ダンジョンを攻略する人材を育成する学校、竜桜学園に入学した主人公綿貫 鐘太郎(ワタヌキ カネタロウ)はサブカル同好会に所属し、気の合う仲間達とまったりと平和な日常を過ごしていた。しかしそんな心地のいい時間は長くは続かなかった。
まったく貢献度のない同好会が部室を持っているのはどうなのか?と生徒会から同好会解散を打診されたのだ。
しかしそれは困るワタヌキ達は部室と同好会を守るため、ある条件を持ちかけた。
一週間以内に学園のため、学園に貢献できる成果を提出することになったワタヌキは秘策として同好会のメンバーに彼の秘密を打ちあけることにした。
オッサン齢50過ぎにしてダンジョンデビューする【なろう100万PV、カクヨム20万PV突破】
山親爺大将
ファンタジー
剣崎鉄也、4年前にダンジョンが現れた現代日本で暮らす53歳のおっさんだ。
失われた20年世代で職を転々とし今は介護職に就いている。
そんな彼が交通事故にあった。
ファンタジーの世界ならここで転生出来るのだろうが、現実はそんなに甘く無い。
「どうしたものかな」
入院先の個室のベッドの上で、俺は途方に暮れていた。
今回の事故で腕に怪我をしてしまい、元の仕事には戻れなかった。
たまたま保険で個室代も出るというので個室にしてもらったけど、たいして蓄えもなく、退院したらすぐにでも働かないとならない。
そんな俺は交通事故で死を覚悟した時にひとつ強烈に後悔をした事があった。
『こんな事ならダンジョンに潜っておけばよかった』
である。
50過ぎのオッサンが何を言ってると思うかもしれないが、その年代はちょうど中学生くらいにファンタジーが流行り、高校生くらいにRPGやライトノベルが流行った世代である。
ファンタジー系ヲタクの先駆者のような年代だ。
俺もそちら側の人間だった。
年齢で完全に諦めていたが、今回のことで自分がどれくらい未練があったか理解した。
「冒険者、いや、探索者っていうんだっけ、やってみるか」
これは体力も衰え、知力も怪しくなってきて、ついでに運にも見放されたオッサンが無い知恵絞ってなんとか探索者としてやっていく物語である。
注意事項
50過ぎのオッサンが子供ほどに歳の離れた女の子に惚れたり、悶々としたりするシーンが出てきます。
あらかじめご了承の上読み進めてください。
注意事項2 作者はメンタル豆腐なので、耐えられないと思った感想の場合はブロック、削除等をして見ないという行動を起こします。お気を悪くする方もおるかと思います。予め謝罪しておきます。
注意事項3 お話と表紙はなんの関係もありません。
どうしてこうなった道中記-サブスキルで面倒ごとだらけ-
すずめさん
ファンタジー
ある日、友達に誘われ始めたMMORPG…[アルバスクロニクルオンライン]
何の変哲も無くゲームを始めたつもりがしかし!?…
たった一つのスキルのせい?…で起きる波乱万丈な冒険物語。
※本作品はPCで編集・改行がされて居る為、スマホ・タブレットにおける
縦読みでの読書は読み難い点が出て来ると思います…それでも良いと言う方は……
ゆっくりしていってね!!!
※ 現在書き直し慣行中!!!
さびれたレンタル道具屋の転生おっさん、道具の使い方を教えまくる。~客のS級冒険者が俺を歴戦の英雄と勘違いして弟子入りを求めてくるんだが~
遥風 かずら
ファンタジー
前世で過労死した久世織人が目を覚ますとそこは異世界の王都、しかも古道具屋の跡取り息子として転生していた。アクセル・リオットとして成長した彼は荷物持ちとして冒険者パーティーに同行、その道中に【無限収納】スキルを開花させる。
パーティー活動から離脱後、四十歳となったアクセルは前世の記憶を思い出し、儲かりそうという考えで道具レンタル屋を始めていた。客足もなく店がさびれる中、道具の使い方が出来てない冒険者によって治安の乱れや魔物討伐の失敗が続いているという話を常連客から聞かされる。あらゆる道具に精通するアクセルは客の冒険者に使い方を教えに行くことを思い立つ。
アクセルの教えにより、やがてS級冒険者や聖女、王女までも勘違いして彼の元には次々と弟子入りを求める者が現れていくのだった。