38 / 140
第一章
第三十八話 貪欲の聖杯
しおりを挟む◆◇◆◇◆◇
通常のダンジョンでは、ダンジョンボスを倒すことでダンジョンの核であるアーティファクトが出現する。
このアーティファクトはボスモンスターを倒した際に出現する宝箱とは別枠であるため、ダンジョンボスを倒した場合も同じように宝箱は現れる。
そうして現れた宝箱の中に入っていたのは、前世で金峰ゴウキが手に入れたモノとは別のアイテムだった。
○冥獄王の四死王具:葬死ノ円環
等級:叙事級。
とあるダンジョンで産出された腕環型マジックアイテム。
〈冥獄王〉となる者が手にすることになる4つのマジックアイテムの1つ。
4つ全てを集めると何かが起こる。
・【獄鎖顕現】……当アイテムを装着した場所から獄鎖を具現化させ、自由自在に操ることができる。獄鎖は強い拘束効果と退魔効果を持つ。
・【無限錬鎖】……魔力を消費することで、獄鎖を更に具現化させることができる。
宝箱の中に入っていたマジックアイテムの説明をリリアに行う。
見るからに魔法使い用のアイテムとは言えない代物だが、全く使えないわけではないので一応彼女に尋ねてみる。
「リリアはコレ欲しいか?」
「うーん。聞く限りだと扱いが難しそうですし、私は遠慮します」
「じゃあ、俺が貰うぞ」
「はい、どうぞ」
リリアに許可を得た上で〈葬死ノ円環〉を獲得する。
ダンジョンボスである〈冥獄騎死長〉の動きを制限するために千鞭無骨を使用したのだが、その拘束を振り解かれた際に千鞭無骨が破壊されていた。
完全に破壊されたわけではないので修理に出せばまた使えるが、その前に上位互換のようなアイテムが手に入った。
鞭と腕環という違いはあるが、発現できる現象だけをみればほぼ同じな上に、葬死ノ円環の方が使い勝手が良いとあれば装備を更新するのは当然だ。
葬死ノ円環を手首に嵌めると、テストがてらダンジョンボス討伐と同時に倒れた周囲の〈冥獄騎死兵〉達に向けて獄鎖を伸ばす。
掲げた手にある黒い腕環から具現化した幾多もの同色の鎖が、ヘルナイト達が持っていた剣や盾に絡み付いていく。
獄鎖が縮むと共にそれらの装備も手元に回収された。
「これらも回収するんですか?」
「ヘルナイト達が身に付けている装備は魔法金属製でな。この腕環みたいな特殊な能力はないが、一応はマジックアイテムに分類される。だから、そのまま使ってもいいし、溶かして素材にしてもいいから金になる。ヘルナイトの鎧に関しては剥がすのが面倒だから、やらないけどな」
「なるほど」
「この後、契約通り俺がアーティファクトを貰うことになると、リリアの取り分が少ないだろ? 契約通りとはいえ色々助かったから、その分はこれらを売って得た金で補填するよ」
「そんな、助けられたのは私の方ですし、契約通りですから大丈夫ですよ」
そう言ってリリアは遠慮するが、ダンジョンボスとの戦いで邪魔が入らなかったことや、新たな特殊属性魔力を識り手札を増やせて助かったのは事実だ。
それに、彼女みたいな非凡な能力を持つフリーの覚醒者との付き合いを今回限りにするのは勿体ない。
ダンジョン攻略に際して起こるであろう騒動が終息してからのことも考えて印象は良くしておきたい。
「まぁまぁ、気にせず受け取っておいてくれ。それじゃあ、アーティファクトのところに行こうか」
ヘルナイトの剣と盾だけでなく、ヘルナイトロードの騎死剣も〈宝納の指環〉に収納すると、ヘルナイトロードが守っていた霊廟の中へと移動する。
ダンジョンボスであるヘルナイトロードの討伐と同時に出現した魔力反応の元へと向かうと、そこには前世でも見たのと同じアーティファクトがあった。
複合系アーティファクト〈貪欲の聖杯〉。
前世で金峰ゴウキを覚醒者達の支配者の1人に押し上げた重要アイテムを手に取り魔力を流す。
手の中にある派手な装飾の金色の杯との繋がりが出来たのが分かる。
これで〈貪欲の聖杯〉との契約は完了だ。
「ダンジョンが……!」
「消滅するな」
「早く脱出しましょう!」
「そうだな。だが、その前に」
〈貪欲の聖杯〉に更に魔力を注ぎ込み、その能力の1つを発動させる。
聖杯の中に光る液体が満ちたのを確認すると、その液体の中に〈魔喰の精霊剣バアル〉を入れていく。
2つのアイテムのサイズ差を考えれば、精霊剣バアルが聖杯の中に入るわけがない。
だが、聖杯の中に満ちた液体に触れた瞬間、精霊剣バアルは光の粒子となって液体へ吸収された。
そして、その聖杯を満たす液体を一息に飲み干した。
──アーティファクト〈貪欲の聖杯〉が発動されました。
──スキル【魔喰ノ精霊王】を獲得しました。
お、クエスト産のマジックアイテムでもちゃんと獲得できたな。
複合系アーティファクト〈貪欲の聖杯〉には、他のマジックアイテムが持つ能力をスキル化して契約者に与える能力がある。
前世の金峰ゴウキが造物吸収能力と呼んでいた月に1度しか使えないこの力によって、〈魔喰の精霊剣バアル〉が持っていた能力をスキルとして獲得した。
精霊剣バアルの【魔を喰らう刃】を発動させるには、最後の一撃は精霊剣バアルで倒さなければならなくて面倒だったが、今後は気にする必要がなくなった。
通常はそのマジックアイテムの能力が1つ1つスキル化された上で獲得することになるらしいが、稀に全ての能力が1つに纏められてから獲得することがあると前世で聞いたことがある。
その場合は総じて効果が強化されるようなので、【魔喰ノ精霊王】にも期待できるな。
「えっと?」
「あ、悪い。待たせたな。さぁ、ゲートの近くまで転移で移動しよう。脱出が早ければ、もしかすると俺達が攻略者だと気付かれないかもしれないぞ」
まぁ、〈不浄墓地〉の利用者の少なさを考えたら可能性は低いけどな。
転移する前に、同化能力を持つ〈貪欲の聖杯〉を身体に同化させる。
これで外見的に俺が持つアーティファクトは〈支配の王環〉だけだ。
対外的にはこの〈支配の王環〉が、ダンジョン〈不浄墓地〉で獲得したアーティファクトということにするつもりだ。
〈貪欲の聖杯〉の価値は〈支配の王環〉より上なので、共に攻略したリリア以外には明かすつもりはない。
彼女は〈支配の王環〉の契約能力で縛っているため問題はない。
そんなリリアを連れて【座標変換】を発動させ、ダンジョンを脱出した。
31
あなたにおすすめの小説
日本国 召喚獣管理省 関東庁 召喚獣総合事案即応科。
wakaba1890
ファンタジー
召喚獣。
それは向こう側とされる所から、10歳を迎えた日本人の子供の下に召喚されるモンスターのことである。
初代天皇・神武天皇が日本を建国した際に書かれた絵画には彼は金鵄と呼ばれる金色に輝く鵄(とび)と契約したのが原初となっている。
そして、縄文、弥生、古墳、飛鳥、平安、戦国時代から近代から今に至るまで、時代を動かしてきた人物の側には確かに召喚獣は介在していた。
また、奇妙な事に、日本国に限り、齢10歳を迎えた日本在住の日本人にのみ体のどこかから多種多様な紋章が発現し、当人が念じると任意の場所から召喚陣が現れ、人ならざるモンスターを召喚される。
そして、彼らモンスターは主人である当人や心を許した者に対して忠実であった。
そのため、古来の日本から、彼ら召喚獣は農耕、治水、土木、科学技術、エネルギー、政治、経済、金融、戦争など国家の基盤となる柱から、ありとあらゆる分野において、今日に至るまで日本国とアジアの繁栄に寄与してきた。
そして、建国から今まで、国益の基盤たる彼ら数万種類以上をも及ぶ召喚獣を取り締まり管理し、2600年以上と脈々と受け継がれてきた名誉ある国家職がーーーーー国家召喚獣管理官である。
新世機生のアポストル 〜Restart with Lost Relic〜
黒城白爵
ファンタジー
異界から突如出現したモンスターによって、古き世界は終わりを告げた。
新たな世界の到来から長い年月が経ち、人類は世界各地に人類生存圏〈コロニー〉を築いて生き残っていた。
旧人類、新人類、コロニー企業、モンスター、魔力、旧文明遺跡、異文明遺跡……etc。
そんな様々な物が溢れ、廃れていく世界で生きていた若きベテランハンターのベリエルは、とある依頼で負った怪我の治療費によって一文無しになってしまう。
命あっての物種、だが金が無ければ何も始まらない。
泣く泣く知り合いから金を借りてマイナススタートを切ることになったベリエルは、依頼で危険なコロニーの外へと向かい、とある遺物を発見する……。
この世界にダンジョンが現れたようです ~チートな武器とスキルと魔法と従魔と仲間達と共に世界最強となる~
仮実谷 望
ファンタジー
主人公の増宮拓朗(ましみやたくろう)は20歳のニートである。
祖父母の家に居候している中、毎日の日課の自宅の蔵の確認を行う過程で謎の黒い穴を見つける。
試にその黒い穴に入ると謎の空間に到達する。
拓朗はその空間がダンジョンだと確信して興奮した。
さっそく蔵にある武器と防具で装備を整えてダンジョンに入ることになるのだが……
暫くするとこの世界には異変が起きていた。
謎の怪物が現れて人を襲っているなどの目撃例が出ているようだ。
謎の黒い穴に入った若者が行方不明になったなどの事例も出ている。
そのころ拓朗は知ってか知らずか着実にレベルを上げて世界最強の探索者になっていた。
その後モンスターが街に現れるようになったら、狐の仮面を被りモンスターを退治しないといけないと奮起する。
その過程で他にもダンジョンで女子高生と出会いダンジョンの攻略を進め成長していく。
様々な登場人物が織りなす群像劇です。
主人公以外の視点も書くのでそこをご了承ください。
その後、七星家の七星ナナナと虹咲家の虹咲ナナカとの出会いが拓朗を成長させるきっかけになる。
ユキトとの出会いの中、拓朗は成長する。
タクロウは立派なヒーローとして覚醒する。
その後どんな敵が来ようとも敵を押しのける。倒す。そんな無敵のヒーロー稲荷仮面が活躍するヒーロー路線物も描いていきたいです。
アポカリプスな時代はマイペースな俺に合っていたらしい
黒城白爵
ファンタジー
ーーある日、平穏な世界は終わった。
そうとしか表現できないほどに世界にモンスターという異物が溢れ返り、平穏かつ醜い世界は崩壊した。
そんな世界を自称凡人な男がマイペースに生きる、これはそんな話である。
シスターヴレイヴ!~上司に捨て駒にされ会社をクビになり無職ニートになった俺が妹と異世界に飛ばされ妹が勇者になったけど何とか生きてます~
尾山塩之進
ファンタジー
鳴鐘 慧河(なるがね けいが)25歳は上司に捨て駒にされ会社をクビになってしまい世の中に絶望し無職ニートの引き籠りになっていたが、二人の妹、優羽花(ゆうか)と静里菜(せりな)に元気づけられて再起を誓った。
だがその瞬間、妹たち共々『魔力満ちる世界エゾン・レイギス』に異世界召喚されてしまう。
全ての人間を滅ぼそうとうごめく魔族の長、大魔王を倒す星剣の勇者として、セカイを護る精霊に召喚されたのは妹だった。
勇者である妹を討つべく襲い来る魔族たち。
そして慧河より先に異世界召喚されていた慧河の元上司はこの異世界の覇権を狙い暗躍していた。
エゾン・レイギスの人間も一枚岩ではなく、様々な思惑で持って動いている。
これは戦乱渦巻く異世界で、妹たちを護ると一念発起した、勇者ではない只の一人の兄の戦いの物語である。
…その果てに妹ハーレムが作られることになろうとは当人には知るよしも無かった。
妹とは血の繋がりであろうか?
妹とは魂の繋がりである。
兄とは何か?
妹を護る存在である。
かけがいの無い大切な妹たちとのセカイを護る為に戦え!鳴鐘 慧河!戦わなければ護れない!
ダンジョン学園サブカル同好会の日常
くずもち
ファンタジー
ダンジョンを攻略する人材を育成する学校、竜桜学園に入学した主人公綿貫 鐘太郎(ワタヌキ カネタロウ)はサブカル同好会に所属し、気の合う仲間達とまったりと平和な日常を過ごしていた。しかしそんな心地のいい時間は長くは続かなかった。
まったく貢献度のない同好会が部室を持っているのはどうなのか?と生徒会から同好会解散を打診されたのだ。
しかしそれは困るワタヌキ達は部室と同好会を守るため、ある条件を持ちかけた。
一週間以内に学園のため、学園に貢献できる成果を提出することになったワタヌキは秘策として同好会のメンバーに彼の秘密を打ちあけることにした。
【もうダメだ!】貧乏大学生、絶望から一気に成り上がる〜もし、無属性でFランクの俺が異文明の魔道兵器を担いでダンジョンに潜ったら〜
KEINO
ファンタジー
貧乏大学生の探索者はダンジョンに潜り、全てを覆す。
~あらすじ~
世界に突如出現した異次元空間「ダンジョン」。
そこから産出される魔石は人類に無限のエネルギーをもたらし、アーティファクトは魔法の力を授けた。
しかし、その恩恵は平等ではなかった。
富と力はダンジョン利権を牛耳る企業と、「属性適性」という特別な才能を持つ「選ばれし者」たちに独占され、世界は新たな格差社会へと変貌していた。
そんな歪んだ現代日本で、及川翔は「無属性」という最底辺の烙印を押された青年だった。
彼には魔法の才能も、富も、未来への希望もない。
あるのは、両親を失った二年前のダンジョン氾濫で、原因不明の昏睡状態に陥った最愛の妹、美咲を救うという、ただ一つの願いだけだった。
妹を治すため、彼は最先端の「魔力生体学」を学ぶが、学費と治療費という冷酷な現実が彼の行く手を阻む。
希望と絶望の狭間で、翔に残された道はただ一つ――危険なダンジョンに潜り、泥臭く魔石を稼ぐこと。
英雄とも呼べるようなSランク探索者が脚光を浴びる華やかな世界とは裏腹に、翔は今日も一人、薄暗いダンジョンの奥へと足を踏み入れる。
これは、神に選ばれなかった「持たざる者」が、絶望的な現実にもがきながら、たった一つの希望を掴むために抗い、やがて世界の真実と向き合う、戦いの物語。
彼の「無属性」の力が、世界を揺るがす光となることを、彼はまだ知らない。
テンプレのダンジョン物を書いてみたくなり、手を出しました。
SF味が増してくるのは結構先の予定です。
スローペースですが、しっかりと世界観を楽しんでもらえる作品になってると思います。
良かったら読んでください!
現実世界にダンジョンが出現したのでフライングして最強に!
おとうふ
ファンタジー
2026年、突如として世界中にダンジョンが出現した。
ダンジョン内は無尽蔵にモンスターが湧き出し、それを倒すことでレベルが上がり、ステータスが上昇するという不思議空間だった。
過去の些細な事件のトラウマを克服できないまま、不登校の引きこもりになっていた中学2年生の橘冬夜は、好奇心から自宅近くに出現したダンジョンに真っ先に足を踏み入れた。
ダンジョンとは何なのか。なぜ出現したのか。その先に何があるのか。
世界が大混乱に陥る中、何もわからないままに、冬夜はこっそりとダンジョン探索にのめり込んでいく。
やがて来る厄災の日、そんな冬夜の好奇心が多くの人の命を救うことになるのだが、それはまだ誰も知らぬことだった。
至らぬところも多いと思いますが、よろしくお願いします!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる