万物争覇のコンバート 〜回帰後の人生をシステムでやり直す〜

黒城白爵

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第一章

第三十九話 スカウトと対応

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 ◆◇◆◇◆◇


「──お食事中に失礼します。外神とがみクロヤ様と白宮リリア様ですね? わたくし、金峰ギルドにて探索者の方々のスカウトを担当しております、金光マサオと申します。少しお時間をよろしいでしょうか?」


 ダンジョン〈不浄墓地〉の攻略から2日後。
 たった2人で不人気ダンジョンを攻略した俺達は、予想通り他の覚醒者達やギルド、業界企業などの注目を大いに集めた。
 事前に話し合っていた通りにそれらに対処したが、事態が収束するにはまだまだ時間がかかるだろう。
 そんな俺達は、ダンジョン攻略の打ち上げがてらちょっと高級なレストランで食事をしていたのが、そこにコイツが現れた。

 金光マサオは本人が言ったようなら肩書きを持つアラサー男なのだが、俺にとっては前世での因縁の相手である金峰ゴウキの小間使いの認識だ。
 虎の威を借る狐や、太鼓持ちという言葉がよく似合う男だが、前世では金峰ギルドでスカウト実績を重ねた末に、金峰ゴウキの側近にまで登り詰めていた。
 現時点では他に何人もいるスカウト担当の1人でしかないが、前世を知る俺からすれば有象無象の1人に数えられる奴ではない。


「ご自分で仰った通り私達は食事中なのですが? どうやら金光さんは相手の都合を考慮するおつもりはないらしいですね」
 

 相変わらず主人に似て傲慢な奴だな。
 前世では金峰ゴウキの側近になった途端に隠さなくなったが、今の時期でもこういうところにコイツの本性が現れてるよな。
 俺の気分を害したかのような言葉に流石に慌てたのか、金光マサオが本気の焦りの表情を浮かべていた。


「申し訳ありません。私も事前にご連絡をさせていただいた上でお会いしたかったのですが、お二人と連絡が付かず直接伺わせていただきました」

「ダンジョンを攻略して以降、多くの方々が連絡をくれましてね。しかも、大半が長年に渡り連絡も取り合っていなかったような人達ばかりなんです。宝くじで高額当選した人の気持ちが少し分かった気がしますよ」


 手にした大金に他人が群がってくる気持ちがね、と告げてから店員を呼んで追加注文を行う。
 言外にお前もその1人だと伝えたのだが、ちゃんと伝わっただろうか?


「ゴホン。それだけお二人の為されたことが素晴らしい偉業ということでしょう。私ども金峰ギルドもそのように認識しており、お二人をギルドにスカウトさせていただきたく参りました。とはいえ、お二人の時間を邪魔してしまったのは事実ですので、お詫びにここの会計は私がお支払い致します。その代わりというわけではありませんが、私の話を聞いていただけないでしょうか?」

「どうする?」

「私は構いませんよ」

「そうか。なら、詳しい話は俺の方で聞いておく」

「お願いします」


 ギルドから勧誘があった場合の対応も予め話し合っていたため、予定通り俺の方で詳しい話を聞くことにした。
 店員に言って別の席を用意してもらうと同時に、会計の件についても伝えておいた。


「お時間をいただきありがとうございます」

「取引ですからね。食事の邪魔をした分と相殺して、僅かに上回った分ぐらいの時間は作りますよ」


 俺の上から目線の物言いに金光マサオの目元がヒクついている。
 前世での俺達の関係性を思えば優しい物言いなんだがな。


「こちらが当ギルドがお二人に対して提示できる待遇や今後のサポート内容が記載された契約書になります。内容をご確認した上で気になる点がございましたら、お聞かせください」


 どことなく自信満々に差し出された契約書に目を通していく。
 いきなり多額の契約金の数字が飛び込んできたが、俺が今後手に入れるであろう鑑定宝玉のロイヤリティからしたら大した金額ではない。
 これで懐が寂しかったら少しは揺れたかもしれないが、今の俺達には今回の〈不浄墓地〉のダンジョンボス〈冥獄騎死長ヘルナイトロード〉の取り巻きである〈冥獄騎死兵ヘルナイト〉達が使っていた武具を売って得た大金がある。
 今日の食事会はそのヘルナイトの武具が予想以上に高く売れたお祝いでもあった。

 〈不浄墓地〉のダンジョンボスと取り巻きについての情報は特に隠すつもりはなく、メディアの取材でも普通に話したため、この売った武具がヘルナイトの装備であることは明らかだった。
 だからか、探索者協会公認の〈マーケット〉で売却したところ、飛ぶように売れた。
 ヘルナイトの装備に使われている魔法金属が希少なのもあるが、一番の理由は験担ぎらしい。
 ダンジョンを攻略した覚醒者が売った武具は、一定の需要があるとマーケットの店員が教えてくれた。
 ダンジョン絡みでも験担ぎに拘るとは、何ともこの国らしいな。

 ちなみにだが、ヘルナイトロードが使っていた騎死剣は売らずに持っている。
 オーラ能力が使えるマジックアイテムは、貴重かつ強力であるため売るのが惜しかったからだ。

 オーラというのは、身体能力を強化し、身体を守る鎧にもなり、剣などの武器の攻撃力を向上させてくれるという、戦士系クラス専用の〈特殊技能〉にあたる。
 特殊技能とは、スキルのようでスキルではない力のことであり、魔法使い系クラスの無属性魔法もコレに該当する。
 ただし、無属性魔法とは違い、オーラは戦士系クラスだからといって誰でも使える力ではない。
 才能があれば簡単にオーラが使えるようになるが、オーラを強くするには努力が必要だし、才能が無くてオーラが一向に使える気配がなくても、努力を続けていればいつかは使えるようになる……そんな力だ。

 前世の俺はオーラが使えたので、回帰後の今でも問題なくオーラは使える。
 前世とは取得クラスは異なるが、魔法使い系クラスの無属性魔法とは違って、戦士系クラスのオーラが使えるクラスは非常に幅広く、これまでに俺が取得してきたような特殊系クラスも含まれているため、前世と同じようにオーラは使用可能だ。
 ただ、このオーラ技能は俺にとって大した価値はない。
 オーラによる各種強化と同じことは魔力だけでもできるが、その出力や強度はオーラの方が上であり、これだけならオーラ強化は魔力強化の上位互換になる。
 だが、オーラを使用するには魔力だけでなく体力まで消費する必要があるため、一概に上位互換と言うことは出来ない。
 加えて、わざわざオーラを使わずとも俺には強力な異能があるのと、その異能を使って様々な特殊属性魔力を使用した方が強いというのが、大した価値がないと言う理由だ。

 一方で、ヘルナイトロードが使っていた騎死剣のような、それ自体にオーラを発する能力があるマジックアイテムは、他のマジックアイテムの能力と同様に魔力を消費するだけで能力が使えるため、体力を消費せずにオーラを発現できる。
 しかも、ただのオーラではなく、死のオーラという属性付きオーラなので、似たようなマジックアイテムである白霊剣オルトレールと同様に非常に強力で価値が高い。
 
 【属性変換】で俺の自前のオーラを属性付きオーラに変換出来たならばオーラ技能にも価値が生まれたんだが、残念ながら変換できるのは魔力属性のみだったため、このような評価になっていた。


「如何でしょうか。ご覧のように、当ギルドは外神とがみ様の活動を全力でサポートさせていただきたいと考えておりますが…」


 渡された紙面に視線を落としたまま、騎死剣やオーラとか全く別のことを考えていると、金光マサオが返答を催促してきた。
 雇用契約書の内容は殆ど読んでいないが、元より返事は決まっているので問題はない。


「なるほど。流石は噂に名高い金峰ギルドですね。ですが、現状でも困っていることはありませんので、申し訳ありませんがお断りさせていただきます」

「っ、どこかご不満な点がございましたか?」


 ございましたとも。お前らという存在がな、とは流石に口には出せないので、不満な点は述べずに首を横に振るだけにした。


「今も申しました通り、金銭面も含めて特に困っていないので。私だけでなく彼女もね。他のギルドの方にも同じことを言っていますので、ご安心ください。それでは」


 唖然としている金光マサオを置いて、リリアが待つ席へと戻っていった。
 


 
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