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第二章
第五十四話 ガーベラギルド
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「──コイツが姐さんのスカウトを断った野郎ですかい?」
近っ。
顔面ドアップな至近距離で眼を付けてきたのは、ガーベラギルド所属の上級覚醒者の男だった。
年齢はおそらく今の俺と同じぐらいだろうが、この時代遅れ感のある口調の所為でもう少し若く見えてしまう。
「先輩、この迷惑なアピールをしてくるのを警察に通報していいですか?」
「は?」
「悪いんだけど、俺異性愛者だから君からの求愛は受け入れられないんだ。だから普通にセクハラで通報しておくよ」
「んなッ!? ち、ちげーよッ! 俺だってノーマルだし、姐さん一筋、ってそうじゃなくてッ! これはガンを付けてただけだ!」
「うん、知ってる」
「……ッ!!」
顔を真っ赤にしてワナワナと身体を震わせてる目の前の青年から視線を外して、近くで一連のやり取りを眺めていたレイカ先輩へと顔を向ける。
「なんで呆れてるんです?」
「……学生時代のクロヤ君を思い出していたのよ」
「どういう意味です?」
「……彼は長谷部タイシ。ガーベラギルド所属の上級覚醒者よ。これでも突撃部隊の隊長なの。通報は止めてちょうだい」
あ、質問をスルーされた。まぁ、別にいいんだけど。
それにしても、突撃部隊の隊長ね。
これでも、というのが突撃部隊と隊長のどちらに掛かっているかは聞くまでもないだろう。
「長谷部。ギルドマスターである私が直々に案内している客人に対してどういうつもり?」
「いえ、その、挨拶をしただけです」
「へえ、初対面の相手に睨みを効かせるのがアナタにとっては挨拶だったのね。今度からは私もアナタのことを睨み付けてあげましょうか?」
「うっ……」
レイカ先輩から放たれる濃密な魔力に長谷部タイシがたじろいでいる。
文字通り芯まで凍えそうな特殊属性魔力だな……理解度が低いから、まだ俺は使えないな。
今回のアビス攻略で変換できるようになるといいんだが。
「早くクロヤ君に謝りなさい」
「……申し訳ありませんでした」
誰が見ても長谷部タイシが仕方なく謝っているのが態度から分かるが、ここは俺が大人の対応をしてやろうじゃないか。
「構いませんよ。多少、いえ、結構暑苦しかったのですが、その最悪な気分も先輩の涼やかな魔力で癒されましたので」
「はぁ、冗談でも私の魔力をそう評するほど余裕があるなら大丈夫そうね……長谷部」
「はいッ!」
「次から気を付けなさい。いいわね?」
「分かりましたッ!」
「私はオフィスの案内を続けます。アナタもこんなところを彷徨いていないで、アビス攻略に向けてやることをやりなさい」
「了解しましたッ!」
返事だけはいい長谷部タイシを置いて、その場から移動する。
背後から俺へと視線が突き刺さっているのを感じるが、迷惑をかけられた彼に配慮する理由はないので、いつもの軽い調子でレイカ先輩に話しかける。
お、視線の圧が強まったな。
「んで、姐さんって何です?」
「知らないわよ。彼に聞きなさい」
「まぁ、大して興味はないので別にいいんですけど。それで姐さん」
「クロヤ君?」
揶揄ったらニッコリと凍えそうな笑みが返ってきた。
「怖いですね」
「ホントだな」
小声でリリアと話した後、一度わざとらしく肩を竦めて見せてから訂正する。
「失礼しました。それで、先輩が貸してくれるっていうギルドの装備って、どの程度のランクまでなんですか?」
「……はぁ。クロヤ君達に貸し出す予定の装備は叙事級までよ。ガーベラギルドで管理している分の装備のランクも叙事級までだから実質ランク制限無しよ」
「おー、それは太っ腹ですね。ちなみに伝説級のマジックアイテムはないんですか?」
「伝説級のマジックアイテムはギルド倉庫には無いわね……仮にあっても流石に外部の者に伝説級のマジックアイテムは貸し出さないわよ?」
「残念ですね……」
回帰してからは一度も伝説級マジックアイテムに触れたことがなかったから、せっかくの機会だと思ったんだがな。
「ギルド倉庫には、ってことは先輩自身は持ってるんですか?」
「まぁね。これでも大型ギルドの長だもの。伝説級の装備ぐらいは持ってるわよ」
「ふむ……」
レイカ先輩の全身を確認する。
今日はできる女感のあるスーツ姿だからか装備はしていないみたいだな。
「クロヤさん、どこを見てるんですか?」
「ん? 伝説級装備はどこかなー、って思ってな」
「本当ですか?」
「ホントホント」
レイカ先輩の身体も見てたけど、主な目的が装備なのは嘘ではない。
魔力を含まないアイテムである一般級から始まり、魔力を含むだけか最下位の性能しかないマジックアイテムである希少級、そこから宝物級、遺物級、叙事級、伝説級、神話級とアイテムランクは上がっていく。
回帰前の未来の世界でも非常に少なかった最高位の神話級マジックアイテムほどではないが、伝説級のマジックアイテムの数も非常に少ない。
その数は当然ながら未来よりも現在の方が少ないのに、現時点で伝説級マジックアイテムを保有しているとは、流石は大型ギルドのマスターと言うべきか。
「ここがマジックアイテムを保管しているギルド倉庫よ」
レイカ先輩がギルド倉庫の入り口横にある機械端末を操作すると、入り口のロックが解除された。
さてさて、大型ギルドのマジックアイテム倉庫には一体どんな装備があるかな?
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