万物争覇のコンバート 〜回帰後の人生をシステムでやり直す〜

黒城白爵

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第二章

第六十話 キマイラ

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 ◆◇◆◇◆◇


 〈混幻魔獣キマイラ〉と〈合成魔獣キメラ〉の違いを一言で言うならば、天然物か人造物かになる。
 では、この2つをどうやって見分けるかだが、拙い技術で生み出されたキメラならば、異なる生物同士を無理矢理接合したことによる人工的な痕跡が残っているため、簡単に識別が可能だ。
 だが、優れた技術によって生み出されたキメラだと、そのような違和感のある痕跡が無い──存在自体が違和感の塊ではあるが──ため、外見上でキマイラかキメラかを見分けることは難しいだろう。

 だが、実際に戦ってみれば簡単に見分けることができる。
 何故ならば、キマイラは魔法やスキルなどの特殊な力を使ってくるが、キメラは肉体を活かした原始的な攻防しか行わないからだ。
 技術レベル次第では、キメラでも火を吐いたり毒を分泌したりすることぐらいならできるが、それらも結局は素体になった生物の生態の再現でしかなく、やってることは手足を動かすのと変わらない。
 つまり、キマイラは見た目から予想される以外の力も使用してくる、非常に厄介な部類のモンスターというわけだ。


「右のキマイラは炎と風の魔法が使えます。左のキマイラの一角獣の頭部は雷系のスキルを使ってきますから気を付けてください!」


 鑑定系アーティファクト〈月神の賢眼〉の鑑定能力と先読み能力を駆使して、ガーベラギルド第1部隊の面々へと目の前にいる2体のキマイラの情報を発信する。
 その情報を受けてリーダーのレイカ先輩がそれぞれに指示を出していく。


「魔法部隊は左のキマイラと戦う前衛に『対雷光障壁アンチライトニング・バリア』の魔法を付与。前衛は後衛に雷を飛ばさないようにヘイト管理しながら、最優先で一角獣の頭を排除しなさい! 右のキマイラは私が動きを止めたわ。動き出す前に倒し切るのよ!」

「「「了解!」」」


 レイカ先輩の指示に従って各々が動き出す。
 左のキマイラに対する指示を出しながら発動させたレイカ先輩の異能による攻撃が右のキマイラを襲っていた。


「足だけでなく、全身が凍ったか」


 異能【凍獄界域ニブルヘイム】。
 その能力の一つ【凍獄の吐息】による指向性の冷気を浴びたキマイラが瞬時に凍り付いていた。
 キマイラを凍死させるほどの出力はないみたいだが、魔法を使う前に一瞬で動きを封じれるぐらいには出が速い能力のようだ。


「凍結が解けても動きが鈍いな。あれなら中級覚醒者達でも倒せそうだな」


 凍っていたキマイラが動き出すと、攻撃していた前衛が一度退がり、入れ替わりに大量の攻撃魔法が降り注いでいった。
 動きの鈍っているキマイラでは回避することは出来ず、それらの魔法攻撃をマトモに喰らっていた。
 魔法攻撃にはリリアも参加しており、運命属性魔力を使用しての魔法攻撃であるため、彼女の魔法攻撃は特に大きなダメージを与えていた。
 あの様子なら右のキマイラは直に倒せるだろう。


「左は……一角獣の頭を潰したところか」


 左のキマイラに攻撃を仕掛けた前衛は上級が3人と中級が5人。
 この誰もが魔法使い系クラスの〈無属性魔法〉と戦士系クラスの〈オーラ〉という、2つの特殊技能を使用していた。
 彼らのクラスは、魔法使いであり戦士でもある魔法戦士系クラスであり、そのクラスを持っているだけで無属性魔法が使えるし、練習すればオーラも使えるようになる。
 探索者界隈では非常に人気のあるクラスだが、取得するだけで使えるようになる無属性魔法はまだしも、要練習のオーラまで使える者は少ない。
 だが、あの8人は誰もが無属性魔法とオーラを高い技量レベルで同時に使いこなしていた。
 ヘイトを稼ぎつつ有効打を与える人員としては、最適な者達だと言えるだろう。


「流石は大型ギルド。レベルが高いな。あちらもそろそろ倒せそうだ……新手か」


 2体のキマイラを相手するには十分な人数がいるので、戦闘には参加せず後方で観戦していると、現在戦場になっている大部屋に1体のキマイラが入室してきた。


「先輩、俺が行きますよ」
 
「任せるわ。支援は?」

「1人で大丈夫です。【煌獣人化ルプスルキス】」


 【勇猛戦煌の英雄クーフーリン】の力で白銀色の狼人と化すると、床を数度蹴るだけで新手のキマイラの懐へと入り込んだ。
 高速移動してきた勢いに乗せて、叙事エピック級の刀型マジックアイテムである〈狐幻魔刀サイラ〉を鞘から抜刀する。
 サイラの能力【魔煌気刃】を使って炎属性のオーラを刀身に宿せ、中央の獅子頭を斬り裂く。
 実体の刀身による一撃と共に放たれ斬撃波が、そのままキマイラの身体の体表に一筋の傷を刻んでいった。
 その傷痕に付着した炎属性のオーラから発火した炎がキマイラを焼いていく。


「この程度の火力じゃ焼け死なないよな」


 横合いから伸びてきた蛇の頭部の噛みつき攻撃を跳んで躱わし、その頭部へと【五煌刃尾】で具現化させた5つの幻刀を思考操作で振り抜いた。
 蛇の頭部を幻刀で輪切りにした直後、鹿の頭部が足元から雷を宿した角を突き上げてきた。


「せいッ!」

「ギュガッ!?」


 白いオーラを纏う足で雷角を蹴り砕くと、威力があり過ぎたようで鹿の頭部まで粉砕されていた。


「これは殴った方が早いか?」


 サイラを上空に放り投げて手放すと、フリーになった手を握りしめ、眼下のまだ生きている獅子頭の頭頂部へと拳による全力の一撃を叩き込んだ。
 直後、ズドンッという轟音が室内に鳴り響き渡る。
 【煌獣人化ルプスルキス】の白きオーラを纏った拳撃の威力は凄まじく、直撃した獅子頭が木っ端微塵になっただけでなく、頑丈そうな床が大きく陥没してしまった。


「……獣人化している時は肉弾戦の方が身体能力を活かせるかもな」


 まぁ、相手次第では武器を使った方が良いだろうけど。
 頭上から落下してきたサイラをキャッチしてから後ろを振り返ると、ちょうど先の2体のキマイラも倒されたところだった。
 キマイラに対する【煌獣人化ルプスルキス】の有用性は確認できたから、次にキマイラと戦う時は【煌獣人化ルプスルキス】を使わずに倒してみるとするか。


 
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