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第二章
第五十九話 初のアビス
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ガーベラギルドでの模擬戦から3日後。
今日はガーベラギルドによるアビス攻略が行われる日だ。
アビスへと通じる入り口である黒い亀裂から少し離れた場所で、ガーベラギルドの面々が集まって最終確認を行なっている。
その集まりの一角に俺とリリアもいた。
「……どうやら外野にはバレていないみたいだな」
「みたいですね。ちゃんとコレは効果を発揮しているみたいです」
俺達2人の顔には、顔の上半分を覆い隠すタイプの仮面が装着されている。
仮面は俺のは狼、リリアのは狐をそれぞれ模しており、デザインこそ異なるが共に正体を伏せる効果を持つ同じ名称のマジックアイテムだ。
○隠遁者の獣面
等級:遺物級。
とある職人が製作した仮面型マジックアイテム。
・【認識困難】……着用者を視認した他者が、着用者の正体を既知の人物と結び付けるのが困難になる。
・【鑑定妨害】……着用者を視認した他者が、着用者のステータスを〈鑑定〉することを妨害する。鑑定妨害成功率は彼我の覚醒等級とレベルによって変動する。
当たり前のことだが、今回のアビス攻略の主役はガーベラギルドだ。
そのため、先日のダンジョン攻略で有名になった俺達が協力していることが明らかになってしまうと、アビス攻略が為されてもガーベラギルドの力を疑われる結果になる可能性があった。
そういった理由もあって、アビスの外でガーベラギルドと共にいる間は〈隠遁者の獣面〉を着けるよう頼まれていた。
このマジックアイテム自体は昨日レイカ先輩からリリアの分も含めて受け取っていた。
互いの家が目と鼻の先だとこういう受け渡しの際に便利だ。
頼まれた通りに正体を隠すだけで、高価な遺物級の隠蔽系マジックアイテムが貰えるなら安いものだ。
それから少し経ってからガーベラギルドが黒い亀裂に向かって移動しだした。
「動くみたいだな。俺達も行こう」
「は、はい。行きましょう」
仮面越しでも分かるほどに緊張しているリリアの肩に触れながら声を掛ける。
俺は回帰前の未来で何度もアビスを経験しているが、リリアは今回が初めてだ。
そう考えると、初めてのアビス攻略が大型ギルド主導というのは気負い過ぎなくていいのでラッキーかもしれないな。
まぁ、それはそれとして、パーティーメンバーなのだからアビス攻略中はリリアのことも気にかけるとしよう。
◆◇◆◇◆◇
外側から見ると黒い亀裂に見えるアビスの入り口を潜っていく。
黒い亀裂を越えると、研究所や軍事施設のような雰囲気を漂わせた人工物の壁に囲まれた場所に出た。
事前情報の通り、このアビスは現代チックな世界観のアビスらしい。
アビスごとに内部に広がる世界は千差万別であり、この辺りの特徴がダンジョンの成り損ないとも言われている所以だ。
「〈混幻魔獣〉ではなく〈合成魔獣〉だったらお似合いの場所なんだがな」
黒い亀裂があったのは倉庫のような広い部屋だが、障害物がなく隅々まで見通せるため、モンスターがいないことが確認できた。
幸いにも、アビスに入ってすぐモンスターが出迎えるタイプのアビスではないようだ。
「クロヤさん、亀裂の魔力が……」
「ああ、強くなってるな」
50人以上の覚醒者が通過したことにより、背後の黒い亀裂が発する魔力が強まっていた。
この亀裂の魔力が規定値に達すると亀裂の色が黒から白へと変化し、アビス内のモンスター達が亀裂に引き寄せられるように殺到する。
白い亀裂へ殺到してきたモンスター達が、そのまま亀裂を越えて現実世界へと飛び出してくるのが所謂〈ブレイク〉と呼ばれる現象だ。
「人数が人数なだけあって一気に強くなったわね」
「先輩」
亀裂の白色化まで時間がどのくらいあるか考えていると、レイカ先輩がマキナと共に近くにやってきた。
「2人共、もう仮面は外していいわよ」
「分かりました」
「はい」
リリアの分の仮面も受け取り、2つの仮面を〈宝納の指環〉の収納空間へと収納した。
それを確認してから、レイカ先輩が全員に向けて指示を出す。
「協会の調査隊からの情報通りならば、正面の大扉の先の回廊を進むと道が二手に分かれているはずよ。すぐに動けるよう、今のうちにそれぞれの部隊に分かれておくように」
ガーベラギルドの面々が2つの部隊に分かれる。
第1部隊のリーダーはレイカ先輩、第2部隊はガーベラギルドのサブマスターである衣笠シュウが務める。
シュウは40歳ほどの渋い外見の男性で、アビス攻略の経験もある上級覚醒者だ。
今から約10年前、地球にダンジョンやモンスターが初めて出現した際に覚醒者となった最初期の覚醒者でもある大ベテランで、その経験を買われてガーベラギルドにスカウトされたらしい。
そんな彼にもう一方の部隊のリーダーを任せるのは、妥当な判断だと言えるだろう。
パッと見た感じだと、第2部隊には突破力に秀でた能力を持つ者や堅実な戦闘スタイルの者が割り振られているみたいだった。
一方の第1部隊だが、こちらはどのような状況にも対応できるような多様性に優れた覚醒者が主に配属されているように見えた。
「それぞれの力を存分に振るえるようにしたんですか?」
「それもあるけど、どちらかと言うと戦力のバランスを取ったのが1番の理由ね。マキナは私とセットだから」
「わたくしがレイカお嬢様と別の隊にいくことはありません」
「……とのことよ」
「なるほど」
確かに、一個人の戦力としてみると第1部隊の上級覚醒者の数が少ないな。
第2部隊の方にはあの長谷部クンをはじめとした上級覚醒者の殆どが配属されていた。
No.1とNo.3がセットなら、そういう割り振りになるのは当然か。
「だから俺達の配属は第1部隊なんですね。まぁ、先輩がいる方に配属された方が気楽で良いですけど」
「そうでしょう? 上級覚醒者が少ないから、いざという時は頼むわね」
「鑑定が主な仕事ですが、だからといって後ろの方でカカシになっているつもりはないので安心してください」
「期待しているわ。じゃあ、全員部隊ごとに分かれたみたいだから、さっそく進みましょうか」
室内の大扉に近付くと、大扉の上部にある赤い石が青へと変わり、扉が自動で左右にスライドして開いた。
自動で開くならモンスターも通行するのは楽だろうな。
そんなことを考えつつ、第2部隊、第1部隊の順に大扉を潜り、その先の回廊を進んでいった。
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